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フランス国立工芸学校滞在記

東北大学 田中 真美

 文部科学省の在外研究員として2003年11月1日から2004年8月31日までパリのConservatoire National des Arts et Metiers (CNAM) のChair of Mechanics,Structural Mechanics and Coupled Systems Laboratoryに滞在している。滞在先のCNAMは地下鉄3番線と11番線のArts et Metiersの駅のすぐそばにある。(大学の名に倣って駅名もついたのであろう。)近くにサンドニ門、ポンビドゥーセンターがあり、パリの実に中心部にあたる。
  パリの国際大学都市に住んでおり、私の人生で初めての地下鉄通いをしている。住居は日本館で歴史も古く綺麗な館である。今回のような長期滞在は私にとって初めての体験であり全てが驚きの連続であった。フランスには実は学会等があって何度も来る機会があったので、大丈夫だろうと最初思っていたのだが、正直慣れるまでに半年はかかったと思う。


CNAM正門を横から撮った写真。
初日にここで今いる研究室の場所を尋ねたがフランス語で答えられ、
分からずに初日にしてすでに暗雲立ち込めると言った雰囲気であった。

最初の3ヶ月は滞在許可証というものに正直右往左往させられた。またフランスならば当然なのかもしれないが、研究室内では英語が通じるので、結局今も、簡単なフランス語交じりの英語になっているが、あまりの英語が通じなさに驚いた。街では当然ながらほとんど通じない。観光客でないのが分かるのか、あるいは、多分居住区と観光地は又別ものであるからであろうか、話せることを期待され、相手側からのフランス語話せないの?話さないの?といったプレッシャーを感じ、フランス語が話せないための厳しさも体験したと思う。さらに、パリは発音が早いのもあり、それも悪いことに理解を難しくしていると感じる。最近は下手な言葉でも話すと周囲は聞いてくれるということが良く分かってきて、下手な英語とフランス語を駆使して話す毎日である・・・。


大学のすぐそばのカフェ。
教授にランチに何度か招待してもらった。
写真は午前中取ったもので、オープンカフェには誰もいないが、
夕方になるとビールやワインを飲む人達でごった返す。

ヨーロッパに長く滞在したことのある人には分かるであろうが、気候の違いは如実に感じる。日本が湿度の高い国であると言うことを改めて痛感したが、来た当初はこのドライな空気に喉を痛め、喉飴やうがい薬が手放せなかった。さらに、サマータイムについては、こちらは11月に来たときには朝も夜も真っ暗であったが、最近は朝も夜も晴れていて、夜の10時くらいになってやっと暗くなると言う日々である。下手に昼寝をすると夜の9時か朝の9時かと分からずあせったりもした。

 以上のように、四方山話はつきないのだが、大学に話をうつす。受け入れ先の研究室のRoger OHAYON教授は機械力学を基とする圧電素子などのスマート材料の応用問題に精通しており,これらを用いた振動問題や構造解析について取り組んでいる.これまで,私自身は圧電素子の曲げモードをアクチュエータとして利用する応用問題について,実験および解析を通し取り組んできたが,シェアモードに着目したセンサ・アクチュエータとして使用する応用問題については取り組んでいなかった.このため,OHAYON教授のもとで圧電素子の曲げモードとシェアモードの両モードをセンサ・アクチュエータとして利用する問題について動作原理や基礎方程式,およびその解析法について学び、現在は柔軟体を圧電体で擦ると言う触運動の一つの動作をさせた場合の時間応答について機械力学とトライボロジーの観点から運動方程式を導き、圧電体のセンサからの出力と生体組織の特性との関係について調査している。
  研究室の雰囲気はかなり日本とは異なり、学生と指導教官との共同での作業時間はかなり長い。学生も気楽に指導教官に質問等をしており、随分日本とは違うものだと感じる。また、かなり集中して仕事に取り組んでいる。フランスはバカンスが非常に多いので、要領良く集中して仕事をこなすことが要求されるからかもしれない。またこの大学はパリの中心にあるためであろうか、ロックアウトが行われ、通常でも朝7時半〜夜10時半までしか入れず、現在のようなバカンスシーズンになると閉鎖時間は夜7時半になる。
ENSAM(Ecole Nationale Superiure d’Arts et Metiers)のバイオメカニクス研究室の見学にも行った。その研究室は義足や車の乗り心地向上のためのに生体計測法や計算システムや解析についての研究を行っおり,世界中から集まる人体の骨の計測等については歴史のある研究室で、長いスパンでの研究の重要さも痛感した次第であった。さらにINSA Lyon とEcole Centrale de Lyonの関連研究室を訪問し,調査研究および研究打ち合わせを行ったりもした。
  これまでの滞在期間中に招待講演などの機会もあり、良い勉強になったと思っている。残り1ヶ月であるが、充実した日々を送り日本に帰国したいと思っている。      


大学にある、工芸技術博物館。
いつか行こう行こうと思っているうちに今日まで来ている。
日本に帰る日までには見学するであろう・・・。

Last Modified at 2004/7/31