優秀講演奨励賞受賞

飯田 浩平
              東京工業大学大学院
              理工学研究科機械工学専攻

  このたび,情報・知能・精密機器部門の優秀講演奨励賞というすばらしい賞を頂き,大変嬉しく思っております.部門の皆様には心より御礼申し上げます.

  受賞の対象となりましたのは,IIP'98情報・知能・精密機器部門講演会にて発表致しました「一自由度コンタクトスライダの完全接触追従条件に関する理論的研究」で,磁気ディスクにおける接触ヘッドスライダの完全接触追従条件を理論的に導いたものです.

  磁気ディスク記憶装置の記録密度向上のためにはヘッドとディスクとのすきまを小さくすることが重要です.現在約20Gbit/sq.in. の記録密度で約15nmのすきまとなっており,将来50Gbit/sq.in. を越えるような記録密度ではコンタクト記録が必要になってくる可能性が考えられます.論文では,スライダをディスク面に対し垂直方向の並進運動のみに自由度を有する一自由度系にモデル化し,ディスク面を単一の周波数成分からなる調和うねり表面でモデル化しました.スライダの振動系は接触・非接触時の剛性が大きく異なる非線形系ですが,スライダが常にディスク面に接触していると仮定し系を線形化すると(接触剛性・減衰も線形で近似)スライダの応答が理論的に求まります.それを基にして全周波数領域にわたりスライダの応答振幅が静的押し込み量よりも小さくなる完全接触追従条件式を導き,その妥当性を数値シミュレーションにより確認しました.またコンタクトスライダには接触追従性の他に摩耗耐久性という大きな課題があります.この論文では摩耗耐久性に関して,許容接触力(=許容接触面圧×接触パッド面積)を用いて動的接触力が許容接触力を越えないという条件を摩耗耐久性条件とし,スライダの応答から最大接触力を求め,摩耗耐久性条件式を導きました.そして完全接触追従条件式と摩耗耐久性条件式をあわせて,両者を満足するスライダ・ディスク漫!wk設計条件を示しました.その結果,一様面圧条件下では,追従性のみを考慮した場合にはパッド面積は小さい方が望ましいですが,摩耗耐久性も考慮にいれた場合にはパッド面積は大きい方がディスク面の設計条件が緩く望ましいことがわかりました.

  今回は最もシンプルなモデルでの解析でしたが,今後はこれを基により実際に近い状態(ランダム表面,多自由度,摩耗条件など)での設計条件を明らかにしていきたいと思っております.今後ともご指導・ご鞭撻のほど賜わりますようよろしくお願い申し上げます.

Last Modified at 2000/6/13