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パソコンメカのミクロの決死圏
福井 茂寿
鳥取大学工学部応用数理工学科
シミュレーション力学研究室
鳥取大学工学部は,鳥取県東部の鳥取市に位置し,機械工学科をはじめ8学科からなる(学生数470名,全学で1000名弱/学年).すぐ近くには鳥取砂丘や山陰海岸国立公園などの風光明媚な景勝地が多くあり,また秋には二十世紀梨,冬にはかに料理とうまい物には事欠かない.
その工学部に応用数理工学科が平成7年に新設され,前勤務地のNTT研究所から移り,シミュレーション力学講座(Computational Mechanics and Micro-tribology)を担当している.情報・知能・精密機器部門との関連では,情報機器,とりわけ磁気ディスク装置のヘッド媒体インターフェース(HDI)における浮動形磁気ヘッドの「超微小すきま浮上特性解析」を中心にこれまで研究を進めてきたが,今年4月に出光興産より松岡広成講師を迎え,「分子オーダの流体潤滑の研究」へも展開を図っている.博士課程山根清美君をはじめ,院生,学生を含め総勢13名の研究室である.
研究室のあらまし(コンセプトと応用展開)研究室のコンセプトは,研究の進展に伴い改編しているが,概ね以下の様である.
「マイクロあるいはナノメータの超微小領域で顕著となる”分子気体効果”あるいは”分子液体効果”による力学作用を,連続体力学,統計力学等に基づいて究明する.具体的には,それらの力学作用の支配方程式を対象とした理論解析・計算機シミュレーションあるいは実験的手法を駆使することによって,マイクロ/ナノメータ領域の特性解析を行う.」
ひとことで言えば,ナノメータ領域の分子流体作用の研究,あるいは分子流体潤滑作用の研究といえよう.
具体的な応用展開には,上述の
- コンピュータ用浮動形磁気ヘッド,
のほか,
- マイクロマシン要素,
- 精密メカニズム要素,
があり,特性解析と設計指針の抽出を精力的に行っている.
「パソコンメカのミクロの決死圏」のこと非専門家あるいは素人の方に,より具体的なイメージを印象づけるために時々利用しているのが,本稿の表題でもあるこのコピーである.これは,往年の名SF映画「ミクロの決死圏」(人間が超小形になって人体に入り病巣を治療するSFファンタジー)をもじったものであるが,最近はその映画自体を知らない方も多く,アピール効果は疑問.
主な研究テーマ- 分子気体潤滑の研究
- 分子気体潤滑(MGL)方程式によるダイナミクス解析
(浮動ヘッドスライダの特性解析,ニアコンタクト 動特性解析,数値計算手法,自由分子流) - モンテカルロ直接シミュレーション法(DSMC法)による分子気体潤滑解析
(浮動ヘッドスライダ特性解析,平均流量計算,粒子挙動の解析,自由分子流) - 分子気体効果のマイクロメカ/精密メカへの応用
(熱ほふく流応用マイクロメカニズム,マイクロモータ)
- 分子気体潤滑(MGL)方程式によるダイナミクス解析
- 液体を介した固体表面間相互作用の解明とその応用
- 液体超薄膜とそのトライボロジー特性
- 固体表面間の液体架橋のダイナミクス
- コンタクトスライダの追従特性解析
これまで,理論解析・計算機シミュレーションを中心に研究を進めてきたが,実験的アプローチへの展開も進めつつある.
あとがき 本部門に関連する研究者・開発担当者は,関東圏や近畿圏などが多いと思われるが,今や情報化の時代,距離と時間を克服して良い研究を成し遂げるべく,鳥取で日夜頑張っている.なお,当研究室の内容に関心のある方は,下記までご連絡下さい.
fukui@damp.tottori-u.ac.jp, Tel: 0857-31-5324,
http://www.damp.tottori-u.ac.jp/~lab2/index_j.html