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JSME/IIP 15周年記念座談会エッセンス要旨

開催日/場所: 平成19年1月27日 13:00-16:00 東京電機大学(神田校舎)特別会議室において
参加者(敬称略):

大輪武司(芝浦工業大学),小野右京(日立製作所),多川則男(関西大学),長南征二(秋田県立大学),寺山孝男(東京工業大学),三矢保永(名古屋大学),山田一郎(東京大学),福井茂寿(鳥取大学),三枝省三(広島大学),松岡 薫(松下電器),佐藤太一(東京電機大学),岡田亮二(日立金属),高橋宏(湘南工科大学)

司 会: 三枝省三

松岡) 諸先輩方のご苦労のもと15年目を迎えましたIIP部門は,とりわけハードディスク産業に大きく依存してきました.しかし,1980年代には80数社あったハードディスクメーカーは,現在は6社しかありません.IIP部門の講演発表件数は年々増えていますが,産業界からIIP部門への参画は少なくなっている傾向にあります.ただ,産学というのは常に呼吸しているものだと思います.現在はIIPを支えてきた産業が谷であり,過渡期であると思います.今後はバイオや医療,知能などの分野で,新しい芽を作ることができればと考えております.今日は忌憚なく諸先輩方のご意見をお聞きかせいただき,この部門をさらに活性化したいと思いますので,どうぞ宜しくお願いいたします.
 
部門発足の経緯
小野) 1990年情報機器委員会の委員長を仰せつかり,1991年から新部門を発足させる雰囲気でした.活動の状況ですが,2年間に11回の研究会を開き,会員42名で現在の分科会と比べると結構活発であったと思います.以前は「情報機器のメカトロニクス分科会」だけでしたが,活発に研究分科会をやっていこうということで,三矢先生の,「ヘッド媒体インタフェースのマイクロメカトロニクスに関する分科会」,小島さんの「精密小形アクチュエータに関する分科会」,そして大久保先生の「情報精密機器のCAEに関する分科会」の三つを91年から発足させました.講習会も結構盛況で,参加者は平均して60から80名くらい集まっていました.部門登録者は,91年8月末で第1から第3までの合計が3457で,20部門のうち14番目でした.94年4月末は3627と増え機素潤滑,FA等を抜いていました.
⇒分科会活動強化
大輪) 知能OR情報OR精密,と範囲を広げてゆくという考え方が,機械学会の中では強かった.
山田) 発足時,機力と一緒に部門を作るという話もあったが,全体的には,IIPの独自路線が進められた.
多川) 情報機器は,機械力学,トライボロジーなどを含んでいるが,全体システムとして発表する場がない.この領域のコミュニティを作る雰囲気が盛り上がった.
小野) メーカーからもIIP部門が発足の要望が強かった.
三矢) ハードディスクの研究開発が興隆時期であったにもかかわらず,発表の場がなかったので,発表の場や情報交換の場がほしいということを強く感じていました.
小野) 当時はまだ三菱電機もHDDをやっていて,山本さんなど部門活動に協力的でした
多川) キーパーソンの役割は大きかったと思います.
寺山) 日立がキー企業になってくれて,40件の発表のうち機械研究所から30件くらい発表があった.
⇒キーパーソン訪問活動へ
 
これからのIIP部門に向けての提言
三枝) 部門講演会の参加者について,’92年には240名くらいでしたが,バブルの崩壊と共に一旦減りました.最近は大学人のがんばりもあり,200名くらいとなり,講演数も約100件です.100の突破も夢ではありません.講習会では,当初は70名を越えるものが随分たくさんありました.また,私が記憶しているのでは「植物にならう力学」とかいった,先端的な講習会を企画していました.しかし最近,受講者数がどんどん減ってきております.ところが,川本先生の画像形成のシミュレーション技術に関して講習会を開きましたが,随分参加者が多く盛況でした.これをもう一度見ますと社会のニーズに合ったものを掘り起こすという努力は今後とも必要ではないかなと感じております.講演会における発表者数の産学比率を見てみますと,1999年ではおよそ半々でしたが,2005年では20%と80%と企業人の発表が激減しております.この理由は,2001年でネットバブルの崩壊,あと極端に景気が悪くなり,景気動向に強く左右されているためと思われます.研究会ですが,当初4研究会が増減を繰り返し,現在も4つでありますので,この数を維持増強する必要があろうかと思います.こうした,IIPの現状を踏まえ今後に向けての提言をお願いします.
山田) IIP講演会などの発表件数伸び悩みについては,オーガナイザーを多数集めて,とにかく100件を死守する.それを3年間頑張って続けると,後は人が自然に集まってくる.企業だとか大学だとかが,そういう活発な講演会に出そうということになって,それから4,5年経つと自己増殖する.今80件ぐらいだとすれば,オーガナイザーにノルマを課して,頑張ってもらえば,もう少しでそれが達成できるかもしれない.
長南)多数のセッションに具体的な名前をつけて,部門のキーワードを外にアピールする必要がある.とにかくたくさんの具体的なキーワードで部門の顔をはっきりと提示しなければいけない.集まる件数が少なかったら,後でまとめればよい.
⇒オーガナイザ・キーワード増強,講習会テーマの発掘
小野) 柔軟媒体搬送技術の方はまだ曖昧なところが残っていて,まだメーカーとしてはお互いに発表して情報を得ようという雰囲気が残っている感がします.今後医療とかバイオの分野でナノテクやMEMSが関係してくると思うし,企業でもこの分野は力を入れているように思います.そこで大学にこの分野ができる人がいて学会発表でリーダーシップをとれば,各企業さんから成果発表が出てくるのではないかと思います.
三矢) 急速に進化しているバーチャルな空間と,実際に我々人間が存在している空間との間の橋渡しをするような,そういう役割を表すようなことばがあれば,それは部門として,一つの重要な視点です.バーチャルとアクチュアルを結びつけるような機器の総称があるでしょうか.人間サイズとコンピュータのバーチャルなサイズとは違いますから,このような機器は,将来もずっと必要とされ,また機械的な変換要素も必要とされると思います.
三矢) 部門名称の精密機器は,ナノ機器と言ったほうがいいかもしれない.
多川) ナノテクノロジーの基盤技術は何もない.古典的な機械の分類ではなく横断的な技術がある.情報・医療は,ロボメカではなく,ナノテクノロジー,マイクロテクノロジーがベース.ここをうまくアピールしてゆくべきです.
寺山) 医療機器とMEMSについては,分析分野多い.MEMS半導体は,電気学会主導.しかし,実用化時期になり機械工学の出番.
三矢) MEMS関連バイオ研究分野では,企業で製造.大学で実験・シミュレーション.シミュレーション価値重要.マイクロ・ナノ理工学.機械でも,物理化学に近い基礎的な分野,例えばphysics,あるいはchemistryの領域まで含めると,大学の機械屋でも,企業とコミュニケーションできるかなという気がします.同じマイクロ・ナノ理工学でも,電気屋さんと機械屋さんでは,思考方法が大きく違うと思います.電気屋さんの弱点は,実用化に弱いという点ではないでしょうか.人間の役に立つような技術として完成させるためには,はやり機械屋さんの知識や経験,すなわち,機械屋さんとしての思考方法が必要になると思います.
⇒マイクロナノ専門会議,医療関係などへの強化
 
そのほかのご意見
大輪) 知能機械の知能というと人間の非常に高いレベルの活動をイメージする.むしろ,私はComputerized equipment,つまり,コンピュータを使った機器っていう風な身近な捉え方をした方が,部門としてのカバー範囲が広がってよいのではないかと考えます.
福井) メカトロニクスのもう少し上をいく定義づけっていうか,そんな造語があってもいいのではないでしょうか.
三枝) 学生に接して,脳は重要なキーワードだと思います.また,発表の形式は,問題提起的な発表がもっともっとあっても良いのではないでしょうか.
佐藤) 3月19日の市民フォーラムでは,脳をキーワードに講演会をやります.
三枝) 最後に次期部門長の佐藤さん閉会の挨拶をお願いいたします.
佐藤) 今日はお忙しいところ座談会にお集まり頂きまして,誠にありがとうございました.今日のお話を集約すると「増やす」というキーワードになるのかなと思います.部門発足時はキーパーソンを見つける,つまり,キーパーソンを「増やす」ということですね.これが一つ目.二つ目は,オーガナイザーを「増やし」て,部門講演会の活性化を図るということです.そして,最後の一つは部門がカバーする分野の話です.分野を「増やす」.この件は部門名にも係わる重要なことです.分野のリニューアルといったことも考えなくてはならない.本当によいご指摘を頂きました.部門活動の基本は研究分科会活動にあると考えています.研究分科会を増やしながら,部門がカバーする領域を広げていって,それらの専門の人と色々議論しながら,次にどんなことをやっていったらよいか,どういう方向で進めていったらよいか,ということを考えつつ進めていきたいと思っております.今日,議論が出なかったことで考えていることがひとつあります.IIPの主査会議メンバーや運営委員を見てみますと,企業から大学に移った方がだいぶ多くなったと思います.大学教員ができることの一つは,学生に対するサービスです.講演会で学生に発表させるのも「発表の機会・訓練を与える」というサービスですが,さらに別のサービスの形態も考えようかと思っています.学生は,次期のIIP関連企業人候補ですから.また,色々ご助言を頂けたらと思います.今日は誠にありがとうございました.
   

 

Last Modified at 2008/6/2