ニューズレター

このページでは,設計工学・システム部門 Newsletter No.47増刊号の内容をお届けします (2017年12月発行) .

発行:発行:2017/12/11
ページ製作・編集 D&S広報委員会

Newsletter No.47増刊号

1. 第27回設計工学・システム部門講演会 開催報告

第27回設計工学・システム部門講演会でのオーガナイズドセッションやイベントの報告です.

GS1 一般セッション 1
座長:佐藤 浩一郎(千葉大)
 本セッションでは,微小部での波動伝播と全系の周波数応答の関係,船内騒音に関係する振動モードを表現できる有限要素に関する研究,視線計測からの動作分析を利用した竹とんぼの発射装置に対する設計情報の抽出の3件の講演が行われた.質疑応答では,部分と全体の関係性から動特性を設計する方法,計算コストを大幅に減少させられる新たな振動解析モデル,および視線計測を用いた手の複雑な動きの注目点を提示する手法が話題の中心となり,活発な議論がなされた.

OS1-1 製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント 1
座長:髙本 仁志(産総研)
 本セッションでは合計4件の発表があった.朝一番のセッションにもかかわらず,30名以上の方に参加いただいた.1件目の発表では,航空宇宙分野のシステム設計に関して,設計解空間を体系的に構築し,その解の評価をCAEで効率的に支援するツールが紹介された.近年,設計対象となるシステムが複雑化する中,本提案のような体系的手法を基礎とするツールの重要性は高まっている.次の2件の発表は,製品モデル上の機能要求と設計変数との関係を扱う研究であった.前者では,機能要求と設計変数とを1対1対応させられないがゆえに生じる設計上のトレードオフを特定し,TRIZの知見でそのトレードオフを解消する技術を発見する方法,後者は,このように記述された製品モデルの俯瞰のしやすさを定量的に評価する方法が提案された.最後に,4件目の発表では,設計対象を特徴づける抽象概念を,それに属する元の見つけやすさなどで評価する方法が提案された.これまでの設計理論の成果を踏まえた上で,今後,このような研究が私たちの設計へ理解を進めてくれることに期待したい.

OS1-2 製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント 2
座長:森永 英二(大阪大)
 本セッションでは4件の発表が行われた.講演2205では,モノのインターネットの進展を考慮して,接続される人工物の設計に必要なインターフェース仕様を,パラメーターネットワークモデルに基づいて設計する手順が報告された.2206では,宇宙システムのモデルベース開発に向けた,Modelicaによる複数の物理領域をまたいだシステムモデリング&シミュレーションに基づくシステム視点でのリスク識別手法とその試行結果が報告された.2207では,Actor Component Dynamicsモデリングに基づいたシステムシミュレーションモデルを,設計要求に対して適切な粒度で生成するための手法が報告された.2208では,不確実性によりシステム全体の挙動の質が大きく変わるという性質を有するSystem of Systemsの設計を対象とし,その性質をロバスト最適性の概念に基づいて定量的に評価する手法と,分散型エネルギーシステム導入計画問題における検証結果が報告された.いずれも大変興味深い内容であり,活発な議論が行われた.

OS2 デジタルエンジニアリング
座長:前川 卓(横国大)
 本セッションでは,デジタルエンジニアリングに関連する発表が4件行われた.再利用型メッシュ自動生成のための高精度類似部分形状検索技術の開発に関する提案,ならびに,4次B-spline曲線による無人車両の対面通行経路の自動生成に関する手法が提案された.また,SegMo:X線CTによる組立品のボリュームデータのセグメンテーションシステムの開発,反復幾何処理手法を取り入れた曲率線展開システムの開発に関する研究発表が行われ,活発な質疑・応答が交わされた.

OS3-2 設計と最適化 2
座長:山田 崇恭(京都大)
 本セッションでは,4件ともトポロジー最適化の講演であり,「OS3 設計と最適化」の中においてもトポロジー最適化の占める割合が多く,注目度が高くなってきている.本セッションでは,電磁場問題,音構造連成問題,流体問題など多岐に渡る領域への展開が報告された.また信頼性を考慮した方法論の発表もあり,今後さらなる広がりがある領域であると期待される.

OS3-3 設計と最適化 3
座長:山崎 慎太郎(大阪大)
 本セッションでは,トポロジー最適化に関する講演3件,グランドストラクチャーの構造最適化に関する講演1件,計4件の発表があった.うち3件は複数材料からなる構造物を対象とした最適設計に関する発表であり,いずれも素晴らしい研究成果を得ている一方,複数材料を設計対象とすると局所最適性が強くなるという,共通の課題も見て取れ,如何に設計空間の数学的性質を改善するかが,この分野の今後の課題になると思われた.いずれも,新進気鋭の若手研究者らによる学術的に高度な内容を含む発表であり,この分野の今後のますますの発展が期待される.

OS3-5 設計と最適化 5
座長:寒野 善博(東工大)
 本セッションは,不確実性の下での最適設計に関する報告が2件,連続体のトポロジー最適化による多様な設計解の生成に関する報告が1件,最適化をもちいた計測器のキャリブレーション法に関する報告が1件あった.このうち,講演3105では,信頼性設計における確率変数の統計量(モーメント)が不確実性であると想定した場合の新たな取り扱い方について,また講演3106ではRSSLとよばれる比較的新しい信頼性設計の手法の数値実験による検証について,それぞれ述べられた.講演3107では,連続体のトポロジー最適化で多様かつ大量の設計解を生成することで,新たな設計コンセプトを見出すことの可能性について展望が述べられた.講演3108では,3次元測距において大きな誤差が生じる根本的な原因が論じられた後,そこで用いられる計測器の簡便であるが有用なキャリブレーション法が紹介された.

OS3-7 設計と最適化 7
座長:小木曽 望(大阪府大)
 本セッションでは,最適設計法の実際の設計問題への応用に関する研究事例として,製造に関する最適設計2件,構造最適設計1件の計3件の発表が行われた.いずれの発表も現段階では途中段階であるが,最適設計法を実設計問題に適用する上での困難な問題を克服するための工夫がみられ,今後の展開が期待できる.

OS6 創発デザインの理論と実践
座長:佐藤 浩一郎(千葉大)
 「創発デザインの理論と実践」では,創発現象が有するボトムアップとトップダウンの2つの特性を生かした形態形成に関する3件の講演がなされた.1件目の講演ではセルラ・オートマタ力学モデルによる状態伝搬の加速,2件目の講演ではAdditive Manufacturing を導入した多様解導出システムのための形状変換方法,3件目の講演では意匠面と力学面を考慮した多様解の導出に関する話題をご提供いただいた.また,質疑では階層性を有する形態形成のモデリングに関する議論や,提案されたデザインシステムにおけるパラメータと形状の多様性に関する議論がなされた.今後の様々な領域への創発デザインの応用と発展に期待したい.

OS7-1 感性と設計 1
座長:長谷川 浩志(芝浦工大)
 セッション「OS7-1 感性と設計1」では,感性指標化のための高効率的な実験計画の方法と感性設計の国際化のための多言語マネジメント技術について2件の研究報告があった.感性指標は,高次の交互作用が存在することが予想され,かつ実施可能な評価実験回数が限られている.このことから,二元表を応用した事前の定性知識の活用,カーネル密度推定を応用した指標信頼度に基づく実験点の推薦,ベイズ回帰に基づく指標の定式化とモデル選択の三つの手法の提案と統合した方法が発表された.また,多言語に対する意味的互換性と言語の曖昧性をマネジメントするために,多言語意味ネットワークの枠組み提案と英語,日本語,フランス語のWordNetを用いたグラフ型データベースとして実装,感性設計の国際化のための多言語マネジメント方法と多言語推薦システムについて発表された.発表件数は少ないものの大変興味深い発表であったことから,活発な質疑・応答があった.

OS13-1, 14-1 タイムアクシスデザイン/デザイン科学 1
座長:下村 芳樹(首都大)
 本セッションでは2件の発表が行われた. 講演2305では,工学設計領域とデザイン領域,それぞれの研究領域における研究動向を,多空間デザインモデルの観点で分析し,それぞれの研究領域の特徴と,今後の横断を加速するための提案内容が報告された. 講演2306では,多空間デザインモデルに基づく,Mメソッドと呼ばれる共創型デザインの支援手法と,本手法の具現化ツールであるソフトウェアの実装結果とその効果に関する報告がなされた.いずれも大変興味深い内容であり,分野横断性の高い活発な議論が行われた.

OS15-1 情報・知能・システムデザイン
座長:細野 繁(日本電気)
 IoT機器の爆発的な増加と,機器から集めた情報の高度な分析・変化の予測により,業界の垣根を越えた新たなビジネスや社会システムを創る時代が来ている.ここでは,様々な事象をデータ化し,データを集約し,効率良くデータを処理し,正しく分析・判断する「情報工学」と,現状のシステム構造を分析し,より効用の高い構造を造る「設計工学・システム工学」の融合が重要と考える.この課題意識の下,本セッション「情報・知能・システムデザイン」を新規に開設した.今回,日本機械学会,情報処理学会,電子情報通信学会など,異なる活動背景を持つ研究者と実務者が集い,4件の発表と活発な意見交換を行った.機械系と情報系の異なる思考や問題の解き方を交差させ,気付きを得て,より広い視点で設計を行えるように,今後も発表の場を設けていく.

WS1 下関,公園と建築のタイムアクシスデザインを考える
座長:松岡 由幸(慶應大)
 本ワークショップは,市民公開講座であることから,地元下関在住の設計者である講師2名をお招きし,合計3名の講師により,下関の公園と建築のタイムアクシスデザインについて,市民の皆様とともに考えた.まず,座長である松岡から,タイムアクシスデザインの概念を紹介した.地元の萩焼などの工芸品を含め,使えば使うほど価値が成長する事例の紹介をまじえて,タイムアクシスデザインについて解説した.あわせて,「下関,”日本一夕陽の美しい街“構想」を説明し,市民の皆様とともに,下関の新たな価値創生について考えた.次に,造園家である森和義氏より,「下関とイスタンブールをつなぐ公園と交流」と題し,下関の姉妹都市であるイスタンブールに設置した日本庭園と,それをイスタンブール市民とともに徐々に価値創生を行う共創としてのタイムアクシスデザインの事例が紹介された.さらに,建築家である田尾繁氏より,「イスタンブールの茶室,下関の公共建築のこれからに想う」と題し,先のイスタンブールの日本庭園に建てた茶室,ならびに下関市内に建造した建築のタイムアクシスデザイン事例について紹介があった.最後に,下関の公園や建築の今後のタイムアクシスデザインについて,観光デザインや地上創生の観点も交え,フロアの下関市民とともに考える場となった.

WS2 プラスチックの逆襲~プラスチック独自の 魅力構築に向けて~
座長:松岡 由幸(慶應大)
 本ワークショップは,プラスチック独自の魅力とは何か,それをいかに創生するかについて,4名の講師の講義をもとに議論した.まず,松岡から「そして,プラスチックの逆襲が始まった」と題し,人工素材であるプラスチックの使われ方の現況の課題について説明がされた.次に,慶應義塾大学の加藤健郎氏より「今,輝いているプラスチックたち」と題し,現存する10類型のプラスチックの魅力について解説がなされた.続いて,南条装備工業の長尾誠氏より「自動車内装加飾とプラスチック」と題し,自動車用内装部品におけるプラスチック開発の事例と在り方について説明があった.さらに,OPTIS JAPANの下村将基氏より「プラスチック開発の未来を支えるシミュレーション技術」と題して,インダストリー4.0への対応策でもある光学シミュレーション技術を用いた未来のプラスチック開発の在り方の紹介があった.最後に,フロアの皆様とともに,プラスチック独自の魅力とその開発について議論した.

2. 部門関係表彰

本部門では設計工学,システム工学など分野の発展を奨励するために,部門賞(功績賞と業績賞)と部門表彰(フロンティア業績表彰,奨励業績表彰と部門貢献表彰)を設置しております.

部門関係受賞者ページに2017年度の表彰者の方々のリストを掲載しました.

3. 設計工学・システム部門主催 講習会 開催案内

近日開催予定の講習会をご案内します.奮ってご参加下さい.

 No. 17-113 「第十弾記念講習会『1DCAE概念に基づくものづくり設計教育(第十弾):基礎から学ぶ1DCAE』」(開催日:2017年12月14日(木),15日(金))
会場:富士ソフトアキバプラザ セミナーホール1(東京都千代田区神田練塀町3)

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