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第23回設計工学・システム部門講演会 オーガナイズド・セッション報告

2013年度の設計工学・システム部門講演会では,オーガナイズド・セッションと一般セッション,D&Sコンテストが実施されました.本ページでは,各セッションの座長の方に当日のセッションの様子を報告いただき,紹介します.

OS1-1 製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント

  • オーガナイザー: 野間口大 (阪大),青山和浩(東大)
  • 座長: 森永英二(阪大)
OS1-1 製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント

本セッション「製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント」では、システムモデリングに関するもの2件と、プロジェクト計画に関するもの2件の、計4件の講演が行われた。物理モデリング手法のシステムアーキテクティングへの適用、V&Vプロセスと物理モデリングとの関連の明確化、プロジェクト計画における組織構造の最適化、タスクオプションを考慮した設計プロジェクト計画に関する研究成果が報告された。いずれも、モデルベース設計やリスクマネジメント等のホット・トピックスに関するものであり、会場は立ち見が出る程の盛況ぶりで、活発な議論が交わされた。

森永英二(大阪大学)

OS1-2:製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント

  • オーガナイザー: 野間口大 (阪大),青山和浩(東大)
  • 座長: 高本仁志(産総研)
OS1-2:製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメント

本セッションでは、5名(内4件は大学、1件は産業界)の講演者の方々に、製品設計開発の様々な段階に注目した設計方法論・モデリング手法に関する話題を提供いただいた。この中で、設計者が意図した製品の使用方法とユーザによる使用実験から製品のユーザビリティを向上する手法、従来のパラメータ形状最適化手法に位相構造の違いに着目した形状評価を取り入れる手法、ペトリネットを用いた挙動モデリングに機能概念を付加し機能的不具合を検出する手法、設計事例の評価とアナロジーに基づき機能要求の展開を支援する手法、耐熱・耐振動設計を様々な数理モデルや有限要素モデルを用いて、段階的に検証する手法が発表された。これらの手法の有効性や適用範囲に関して、会場の参加者の方々を交えた幅広い議論が展開されたことから、本セッションの注目の高さが伺えた。

高本仁志(産業技術総合研究所)

OS3-1 デジタルエンジニアリング

  • オーガナイザー: 前川卓(横国大),鈴木宏正(東大)
  • 座長: 前川 卓(横国大)
OS3-1 デジタルエンジニアリング(解析)

本セッションでは、デジタルエンジニアリングの解析に関連する発表が4件行われた。相変化を利用した電子機器用冷却装置を1次元解析に基づき設計するシステムを構築した研究報告、そしてこの装置の性能を予測する手法の研究が発表された。また、有限要素法による電磁場解析の結果を熱流体解析のボクセル要素にマッピングして連成解析を行い、電流による発熱と冷却性能を同時に評価する研究報告、並びにこの連成解析モデルの自動生成技術、および入力パラメータの自動チェック技術の開発の研究発表が行われ活発な質疑・応答が交わされた。

前川卓(横浜国立大学)

OS3-2 デジタルエンジニアリング

  • オーガナイザー: 前川卓(横国大),鈴木宏正(東大)
  • 座長: 三谷純(筑波大)
OS3-2 デジタルエンジニアリング

本セッションでは4件の発表があった。最初の発表は計測機器から得られる大規模な点群にプリミティブ幾何形状のフィッティング行い、他物体との衝突判定などを効率的に行うことで生産ラインの改修を支援しようとするものである。続いて、CTデータから再構築した形状データに対して、ノイズによる微小な凹凸を除去する手法に関する発表があった。また、複数のカメラで撮影された画像群から2.5Dの物体形状を高精度に復元する手法の発表、および車両に付けられたGPS機器と形状計測機器から得られるデータで3D-GEO Mapを生成するシステムに関する発表があった。いずれも規模の大きなデータを効率的に扱うことが求められる研究であり、その精度と計算速度に関しての質疑が主に行われた。

三谷純(筑波大学)

OS5-4 設計と最適化

  • オーガナイザー: 山崎光悦(金沢大),西脇眞二(京大),下田昌利(豊田工)
  • 座長: 千葉一永(道工大)
OS5-4 設計と最適化

最適化を用いた実問題への応用事例に関する研究発表が4件御座いました.一昔前に比べ,応用研究発表が充実してきた印象を受けます.聞きにいらっしゃる方も多く,2,30人前後が常に御参加され,一時は立ち見の方もいらっしゃる程でした.議論も活発で,4件の御発表に対して4件共質疑時間が足りなくなりました.完成された内容ではなく途中報告であっても,学会発表としては有意義になる好例と感じます.4件中2件は学生さんの発表でしたが,今後も,敷居を高くせず,外部の風に当たる良い機会とすべく,本講演会が学生さんはじめ多くの皆様にとって有意義なものであり続けるよう祈念致します.

千葉一永(北海道工業大)

OS5-6 設計と最適化

  • オーガナイザー: 山崎光悦(金沢大),西脇眞二(京大),下田昌利(豊田工)
  • 座長: 酒井忍(金沢大)
OS5-6 設計と最適化

本セッションでは,最適化手法やその応用に関する3件の研究発表が行われた.ベジェ曲線を用いた翼型表現手法の研究では,段階的に設計変数を増加しつつ詳細な最適設計を効率的に行えていた.文法進化(GE)に確率的スキーマ貧欲法を利用して,GEの処理速度を改善する手法では,関数同定問題と日経平均株価予測関数決定問題への適用を試みており,大変興味深い内容であった.ロボットセル生産システムのレイアウト設計問題に対し,GAの最適化結果を用いた多目的SLPによる2段階最適化手法の研究については,効率的で精度の高いパレート解集合が得られていた.レイアウト設計に有益であり,今後の研究成果が期待される.

酒井忍(金沢大学)

OS8-3 ライフサイクル設計とサービス工学

  • オーガナイザー: 下村芳樹(首都大),梅田 靖(阪大)
  • 座長: 木見田康治(東京理科大)
OS8-3 Design for Sustainability

本セッションでは、環境調和型設計に関する講演が計4件行われた。具体的には、製品ライフサイクルを考慮したプロダクトファミリの設計手法や、易解体性設計、部品間接続の最適化、地域電力需要のシナリオプランニングに関する発表が行われた。これらの研究は、いずれも、循環型社会の構築に資する極めて実践的な手法であり、今後は、これらの手法を実ビジネスに適用した研究が行われることが期待される。また、これらの講演に関して、会場の参加者による活発な質疑応答が行われ、本テーマに対する関心の高さが伺えた。

木見田康治(首都大学東京)

OS8-4 ライフサイクル設計とサービス工学

  • オーガナイザー: 下村芳樹(首都大),梅田 靖(阪大)
  • 座長: 木下裕介(阪大)
OS8-4 メンテナンスと加工

セッション「OS8-4 ライフサイクル設計とサービス工学: メンテナンスと加工」では合計4件の講演があった。それらの研究トピックをまとめると、製品ライフサイクル設計のための部品エージェントを用いたモデリング手法、サービス設計のためのサービス故障要因の分析手法、画像情報を用いた溶接加工支援システムであった。昼食後の午後最初の時間帯であったものの、多くの参加者が集まり活発な議論がなされた。本セッションは、概念設計支援のためのモデリング手法から現場の作業者が利用するためのシステム開発まで多様な構成となったが、これはD&S部門の守備範囲の広さを表すものと言えるだろう。本セッションの研究トピックはいずれも産業界への適用が期待されるものであり、今後のさらなる発展が期待される。

木下裕介(大阪大学 )

OS8-5 ライフサイクル設計とサービス工学

  • オーガナイザー: 下村芳樹(首都大),梅田 靖(阪大)
  • 座長: 渡辺健太郎(産総研)
OS8-5 提供プロセス・リソース・アセット

本セッションでは、ITサービス、飲食業、観光業等、多様なサービス業種におけるリソース(人材、開発物、観光資源等)の管理・活用手法、並びにサービスの提供プロセスの設計支援に関する研究発表が行われた。実際のサービス事例の課題認識に基づく提案が多くなされ、現場での有効性や今後の発展についての質疑が活発に行われた。今後、事例の実課題に基づく研究と理論主導の研究が相補的に発展し、サービス工学研究が更に進展することを期待したい。

渡辺健太郎(産業技術総合研究所)

OS-9 創発性と多様性の設計

  • オーガナイザー: 宮田悟志(ダッソー・システムズ),佐藤浩一郎(慶應大),長坂一郎(神戸大)
  • 座長: 長谷川浩志(芝浦工大)
OS-9 創発性と多様性の設計

OS「創発性と多様性の設計」では,4名の講演者から構造物の形態創出,創発デザインのための双創発手法,機能創出のための方法論,イノベーション創出のための仕組みに関する話題のご提供を頂いた.まず,構造物の形態創出では,要素増減法を導入することで,力学的評価基準を満足した多様な構造形態を創出できることが示され,双創発手法では,L-systemと力学挙動を計算するセルラーオートマタからなる双創発システムの提案が話題提供された.また,機能創出のための方法論では,QCD(Quality, Cost, Delivery)を評価したうえで,新たな機能を創出する方法について提案がなされ,イノベーション創出のための仕組みでは,引用ネットワーク分析を用いたS字カーブ創出方法,さらに消費者の口コミュニケーション(口コミ)が技術システムの進化にどのように影響を及ぼすのかを分析した結果が報告された.以上,豊富な話題が提供され,これらの話題に対して設計のための創発性と多様性という視点から活発な議論がなされた.

長谷川浩志(芝浦工業大学)

OS11 感情と設計

  • オーガナイザー: 福田収一(スタンフォード大)
  • 座長: 上田一貴(東大)
OS11 感情と設計

本セッションでは5件の講演があり,ユーザの感情や意思決定に関わる理論的枠組み,実験的研究に関する論文が発表された.ユーザの要求,期待,満足をどのような枠組みで捉え,またどのようにそれらを取得し,設計へ適用していくかといった製品設計にとって重要なテーマについての活発な議論がなされた.理論的枠組みの話題では,設計,生産システムのClosed loop化に伴う顧客感情のリアルタイムフィードバック,プロセス価値の重要性に関する貴重な示唆が得られた.また,製品に対する感情反応に関わる脳活動を脳波,光トポグラフィで測定した実験的研究においては,ユーザの感情の評価手法および製品設計への適用手法についての議論がなされた.

上田一貴(東京大学)

OS12-2 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティ

  • オーガナイザー: 村上 存(東大),小木哲朗(慶應大),渡辺富夫(岡山県大)
  • 座長: 渡辺富夫(岡山県大)
OS12-2 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティ2

慶応大学大学院の伊藤研一郎氏らによる「ヘッドアップディスプレイによる自動二輪運転手への情報提示の評価」と東京大学大学院の大森有貴氏らによる「色の数や組み合わせを制限しない明度差ディザ近似を用いたカラー・ユニバーサルデザイン」の2件の発表があった。前者は、没入型ディスプレイ環境下のドライビングシミュレータを用いてヘッドアップディスプレイ付きの自動二輪シミュレータを開発し、自動二輪車の運転手に対してナビゲーションシステムとしてヘッドアップディスプレイを用いた情報提供方法を示す興味深いものであった。後者は、画像処理におけるディザリング処理を応用し、デザイナーが使用したい色の数や組み合わせを制限せずに、色覚異常者にも色の表現や情報伝達が可能な新たなカラー・ユニバーサルデザインのアプローチを提案するもので、是非とも実用化を期待したい。

渡辺富夫(岡山県立大学)