ニューズレター

このページでは,設計工学・システム部門 Newsletter No.36の内容をお届けします (2012年 4月発行) .

発行:2012/4/12
ページ製作・編集 D&S広報委員会

第21回設計工学・システム部門講演会 オーガナイズド・セッション報告

2011年度の設計工学・システム部門講演会では,12のオーガナイズド・セッションと一般セッション,D&Sコンテストが実施されました.本ページでは,各セッションの座長の方に当日のセッションの様子を報告いただき,紹介します.

OS 3 デジタルエンジニアリング

  • オーガナイザー: 前川 卓(横国大), 鈴木宏正(東大)
  • 座長: OS 3-1 橋間 正芳(富士通研), OS 3-2 鈴木 宏正(東大), OS 3-3 前川 卓(横国大)

OS 3-3 デジタルエンジニアリング III

本セッションでは,デジタルエンジニアリングに関連する発表が3件行われた.

解析の前処理を効率化するシミュレーション・ハブシステム構築の一環としてのサーバ用の騒音解析モデルの自動生成技術の開発, そして市場情報からの設計知識獲得と設計知識活用の事例を通して,CADデータ有効活用による機械設計効率化に関する研究報告があった.また,大域的な情報を元にボクセルモデルの位相を判定し,ジャンクション,境界,曲面ボクセルの順番でサブサンプリングした点を用いてボクセルモデルをポリゴン化する研究の発表があり活発な質疑・応答が交わされた.

前川 卓(横国大)

OS 5 モデル駆動型の製品システム開発

  • オーガナイザー: 古賀毅(山口大),青山和浩(東大)
  • 座長: OS 5-1 古賀毅(山口大), OS 5-2 長谷川 浩志(芝浦工大)

OS 5-2 製品設計開発のためのモデリング・方法論・マネジメントII

本セッションは,SysMLによるシステム開発に関する講演,段階的な設計における要求と挙動の詳細化手法の提案,要求モデルを用いた多様な要求の反映方法の2件,メカトロ製品の開発初期段階における協調設計支援ツールの開発の計3件の講演があった.これらの講演は,多機能・複雑化した製品設計プロセスをいかに体系的にモデリングをし,支援できるかという極めて重要なテーマを取り扱った講演であった.今後の研究の発展に期待したい.

長谷川 浩志(芝浦工大)

OS 6 設計と最適化

  • オーガナイザー: 山崎光悦(金沢大), 西脇眞二(京大), 下田昌利(豊田工大), 福永久雄(東北大)
  • 座長: OS6-1 山田崇恭(名古屋大), OS6-5 小木曽望(阪府大)

OS 6-1 設計と最適化Ⅰ―形状・形態設計―

本セッションでは4件の講演があり,船舶構造の構造最適化に関する講演が1件と,レベルセット法に基づくトポロジー最適化・形状最適化に関する講演が3件行われた.提案手法の適用範囲や,実装法及び定式化に関する議論が行われた.今後,実際の工業製品の設計問題への適用などのより実用的な展開に関する研究にも期待したい.

山田崇恭(名古屋大)

OS 6-5 設計と最適化Ⅴ―製品設計への応用―

このセッションは,「OS6 設計と最適化」の5番目のセッションであり,製品設 計に最適設計を適用した3件の論文が発表された.

  • 「開けやすいアルミボトルのキャップのねじ形状の検討」では,アルミボトル のキャップ開栓時に必要なトルクとネジ山形状の関係を定式化し,そのトルクを 最小化するネジ山形状を求めた.得られた最適形状から,ネジ山とキャップの接 触角の関係に対する考察がなされた.
  • 「平歯車列創成設計システムの開発」では,歯車列配置問題に対して,これま でに構築してきた設計システムを,配置空間に制約のある問題へと拡張した例が 発表された.空間制約を考慮できることで,一層,実用化に近づいたと言える.
  • 「k-Shortest Paths問題のアルゴリズムを利用した加工工程設計」では,フラ イス加工,穴加工など複数からなる加工工程の時間短縮のために,ネットワーク でモデル化し,k-shortest Paths問題として定式化する手法を提案した.今回の 発表は手法の提案が中心であったため,今後の発展が期待される.

製品設計への適用は,設計問題の定式化と最適設計法の適用可能性を確立した段 階,実際の製品設計に適用した段階,さらには,設計問題を拡張し,適用事例を 拡張する段階での発表がなされる.本セッションでの発表は3件と少なかった が,各発表がこの3つの段階に対応していて,興味深いものであった.

今後,発表件数が増加することで,新たな製品設計への適用と最適化手法のさら なる発展につながることを期待する.

小木曽望(阪府大)

OS 8 知識マネジメント・情報共有

  • オーガナイザー: 村上存(東大), 青山和浩(東大), 綿貫啓一(埼玉大)
  • 座長: OS 8-1 青山和浩(東大), OS 8-2 綿貫啓一(埼玉大)

OS 8-1 知識マネジメント・情報共有Ⅰ

設計における知識の記述とマネジメントは,これまで多くの試みがされてきた普遍的な研究テーマである.最初の講演は,フィンランドメソッドによる発想支援を工夫し,共有知を提示することによって発想が活性化されたとの実験報告であった.次の講演は,機能構造を機能分解木によって記述表現し,部分木の類似度計算による知識の探索方法などを提案する内容であった.最後は,設計意図を反映する属性間の関係情報を事例から探索する手法とシステム構成を提案する講演であった.設計は,可能な限り多くの知識を対象にしながらも,適切な知識を選択することが求められる.知識の生成と探索に関連する手法等が議論されたセッションであった.

青山 和浩(東大)

OS 9 ライフサイクル設計とサービス工学

  • オーガナイザー: 下村芳樹(首都大), 梅田靖(阪大)
  • 座長: OS 9-1 下村芳樹(首都大), OS 9-2 來村 徳信(阪大),OS 9-3 福重 真一(阪大), OS 9-4 野間口大(阪大), OS 9-5 木見田康治(首都大), OS 9-6 梅田靖(阪大), OS 9-7 井上 全人(電通大

本オーガナイズドセッションでは,7セッション,計25件の講演が行われた.その内訳は,(A)ライフサイクル設計に関する研究が9件,(B)サービス設計に関する研究が12件,そのハイブリッド研究とも見なすことが可能な(C)ビジネス設計に関する研究が3件,(D)その他が1件であった.(A)および(B)に関する研究が,ともに順調に件数を伸ばしており,これらの研究分野が堅実な成長を続けていることが裏付けられた一方で,その派生展開と見られる(C)に関する研究が新たな領域を形成しつつあることは,本質的に領域横断性の高い問題に取り組んでいる本オーガナイズドセッションにおける新たな展開の兆しであり,非常に喜ばしい傾向である.今後の同分野の成長に期待したい.

下村芳樹(首都大)

OS 9-5 ライフサイクル設計とサービス工学Ⅴ

本セッションでは,製品ライフサイクルを考慮した設計手法に関する講演が計4件行われた.具体的には,製品ライフサイクルにおいて,製品アップグレードや,製品部品の再利用,モジュール交換を実現するための設計手法が提案された.これらの提案手法は,従来から設計工学において議論されてきた,設計パラメータ間の関係や部品間の幾何的拘束条件等の製品の物理的な制約条件に加え,再利用部品の機能的な価値や製品を利用する利害関係者の関係等の製品利用者に係わる新たな制約条件も考慮したものである.これらの講演に関して,会場の参加者による活発な質疑応答が行われ,このテーマに対する関心の高さが伺えた.

木見田康治(首都大)

OS 9-6 ライフサイクル設計とサーヒ?ス工学VI

本セッションではサービス設計に関連する4件の講演が行われた.1件目と4件目は,4件目は,類似の概念を用いて機能の発想を支援しようとするものであった.2件目は,ITサービスシステムのライフサイクル管理の高度化を狙って,設計環境と運用環境の双方で情報をモデリングし,連携させる方法を提案した.これは,実用性が高く,かつ効果も明確な手法であろう.3件目は,顧客の期待形成過程をモデル化することによってサービスの評価を行おうとするものであった .

梅田 靖(阪大)

OS 10 創発性と多様性の設計

  • オーガナイザー: 宮田悟志(ダッソー・システムズ・シムリア), 佐藤浩一郎(慶應大), 長坂一郎(神戸大)
  • 座長: OS 10-1 長谷川浩志(芝浦工大),OS 10-2 佐藤浩一郎(慶應大)

OS 10-1 創造と発想支援

本セッションは,概念設計支援のためのデータ包絡分析法とTRIZ理論,形態の多様性を確保するための要素増減方法,バイオミミクリーに基づく構造発想支援,形態創生のための電子スケッチブック(創発計算を応用)の計4件のバラエティ豊かな講演であった.これらの講演は,支援方法が確立されていない概念設計を支援するための方法論として魅力的なものであり,さらなる研究の発展に期待したい.

長谷川 浩志(芝浦工大)

OS 10-2 創発性と多様性の設計Ⅱ

 本セッション:「創発性と多様性の設計Ⅱ」では,4名の講演者の方々から,プリ/ポストプロセスを導入した概念設計支援システムの提案,概念設計支援システムへのコスト評価法の導入,外乱を考慮したHDL記述の制御器の機能創発,および人の行動における多様性と空間特性の分析に関する話題をご提供いただき,会場には十数名ほどの聴講者の方にお越しいただいた.中心的な議題は,創発的に導出された多様な設計案のなかからより優れた設計解を抽出するための評価方法とその有用性について活発な議論がなされた.また,創発性が有する多様な場(外乱などの使用環境など)への対応の可能性や,人の多様な行動を分析するための可視化手法の有効性とその価値等についても議論が交わされた.

佐藤浩一郎(慶應大)

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