ニューズレター

このページでは,設計工学・システム部門 Newsletter No.36の内容をお届けします (2012年 4月発行) .

発行:2012/4/12
ページ製作・編集 D&S広報委員会

Newsletter No.36

部門長就任のあいさつ
西脇 眞二 (京都大学)

第90期部門長 西脇眞二

この度,第90期の部門長の大任を仰せつかりました.加藤廣副部門長をはじめ運営委員および学会スタッフの皆様,ならびに当部門にてご活躍の皆さまのご支援・ご協力のもと,学会ならびに設計工学・システム部門の一層の発展に寄与して参りたいと思います.どうか,よろしくお願い申し上げます.

昨年度は,昨年の3月には東北大震災,10月にはタイにおいて大洪水など,未曾有の災害が国内外で発生しました.被害に遭われた方には,この場を借りて謹んで,お見舞い申し上げる次第です.これらの災害は,人命を損なうような被害はもとより,日本のものづくりに大打撃を与えました.そして,このような大災害を想定していなかったせいか,開発現場・工場の破壊,サプライチェーンの分断などにより,全く生産できない状況が続きました.また,日本経済全体に与えた影響も小さなものではありませんでした.

このような大きな災害を得て我々が実感したことの一つには,ものづくりにおいてもどのようにこのようなリスクに対処し,災害時にも柔軟に対応できるような開発・生産システムを,さらにはサプライチェーンあらかじめどのように準備しておくかということであると思います.このような課題に関して,その具体的な提言が行えるのが,我々の部門たる設計工学・システム部門であると思います.設計工学・システム部門は,「ものづくりにおける領域横断的連携の実践」をその主題にしており,このような俯瞰的な観点に立った領域横断的連携があってこそ,上の課題を解決できる鍵を見つけることができるのではないでしょうか.今後,課題解決の糸口を見つけるべき積極的な議論がなされることをおおいに期待します.

また,昨年来の円高は,日本のものづくりに大きな打撃を与えてまいりました.多くの生産向上が海外に移動し,日本国内では危機的な空洞状態が広がりつつあります.このようなものづくりの危機を乗り越えるには,もはや開発・生産の効率化は限界にきており,我々エンジニアが取り組むべき方策は,だれにも真似のできない新しい魅力ある製品ものづくりにあることは周知の通りです.確かに,日本は個々の要素技術力は世界一だと確信しております.しかしながら,その要素技術をまとめあげて独創的な一つの製品まとめるあげる力は,未だ欧米の力には及びません.このような要素技術をまとめあげることを追求するのは,まさしく設計工学・システム部門であり,その責務は非常に重大であると思います.

 さらに,教育の面においても,設計工学・システム部門の役割は重要視されていると思います.今,産業界に要求されている人材は,個々の技術に深い知識を持つ人材だけではなく,俯瞰的,言い換えればシステム的にものを見ることができる人材です.確かに,一つの技術に関して深い知識をもつことは非常な大切なことですが,その深い知識を,他の知識と連結,連携させて,大域的なものの見方ができる人材は,企業においても,大学においても,さらに大きな組織体として国家においても,リーダーとして,プロジェクトを牽引していけるものと考えます.このような人材を育てる課題を議論し,まとめあげるのも設計工学・システム部門の大きな役割だと思います.

以上,私見ながら,設計工学・システム部門の意義,役割について述べて参りました.その他にも,考えるべき課題は多くあります.学際,産業界を問わず,志を同じくする皆様の積極的なご参加により,活発に議論しながら,本部門がますます発展できるよう頑張ってまいります.どうか,皆様のご支援・ご鞭撻よろしくお願い申し上げます.

部門長退任の挨拶
下村 芳樹 (首都大学東京)

第89期部門長 下村 芳樹

2012年3月,設計工学・システム部門の第89期部門長を任期満了により退任致しました.89期を振り返れば,社会に未曾有の大被害をもたらした震災のひと月後に未だ収まらぬ混乱の中での始まりでした.私自身が部門運営に関する多くの事項を全く理解しないままの見込み発車であったことに加えて,学会もこの非常事態への対策に追われることが重なり,88期部門長の伊藤さん,89期副部門長の西脇先生,同幹事の妻屋先生を始めとして,89期の総務委員会メンバー,拡大運営委員会メンバーの皆様に叱咤激励されつつ,何とか最低限の役目をこなせたでしょうか? そう信じたいのですが,その評価(お叱り?)は追って真摯にお受けしたいと考えております.何れにせよ,運営委員の皆様,さらには部門登録者の皆様のお力添えのもとで何とか一年の任期を全うすることができました.この場を借りて心より御礼を申し上げます.

一年という限られた任期において,さして何もすることは出来ませんでした.ただ,89期の組閣に際してフレッシュな若手人材の登用に注力し,また,山崎委員を初めとする広報委員会の積極的な活動の元,部門広報の徹底的な見直しを行いました.また,大町先生を初めとする山形大学の絶大なご支援を頂いたうえで,米沢での部門講演会を大変な成功裏に終えることが出来ました.また,同部門講演会では,91期の部門講演会の会場として再度,沖縄・読谷村を指定するという超ウルトラCを達成し,多くの方々から早くも熱い期待の声を頂いています.同部門講演会では,ミスター海の漢と呼ばれる青山先生に再度の実行委員長就任をご快諾頂いており,前回の沖縄開催以上の大成功を信じております.また,順序が逆になりましたが,90期の部門講演会につきましても,西脇新部門長,加藤新副部門長,北村実行委員長のもとで,広島大学における開催の準備が粛々と進められています.可能な限り多くの部門登録者の皆様と,広島の地でお会いできることを心待ちにしております.どうぞ奮ってのご参加をお願いいたします.

第90期はその名の通り学会としても重要なマイルストンとなるタイミングを迎えますが,西脇部門長による平清盛ばりの剛腕執行体制により,D&S一門の一層の繁栄は既に約束されています.本部門のさらなる強化と発展をお祈りしつつ,今後もほんの微力ながら私に可能なお手伝いをさせていただきたく思います.

最後になりましたが,この一年の皆様のご支援およびご厚情,誠にありがとうございました.

副部門長就任の挨拶
加藤 廣 (デジタルプロセス(株))

第90期副部門長

2012年度の副部門長を仰せつかった加藤 廣(デジタルプロセス(株))です.東京工業大学を卒業して日産自動車(株)に入社しました.R&Dに配属された関係で,即,自動車技術会に入会しました.「有限要素法(FEM)」の黎明期に,それを自動車に適用する技術開発を担当した関係で,自動車技術会に論文を発表し,その推薦で米国SAEの国際大会に「自動車車体構造解析」の論文を発表するに至りました.1978年の昔懐かしい思い出となりましたが,SAE大会の「規模の大きさ」,「技術の深さ,広さ」に感銘したことを,昨日のように思い出されます.

その頃から,「どうせ技術者になったからには世界一流の技術者になるべし」との思いが強くなり,FEMの実用化を進めると同時に「技術を深堀り」し,自動車技術会で発表し,同分野の技術者と論議することに面白みを感じてきました.その後,会社で業務経験を積むに従って,だんだん「技術そのもの」から「技術マネジメント」の割合が増えて行ったのは,自然の成り行きでした.そんなおり,日産に来社した「ベルリン工科大学のクラウゼ博士」から,ドイツのCAD/CAM学会で「日産のCAD適用の現状」を講演して欲しいと依頼され,1988年に久し振りに海外の学会で発表する機会を得ました.

「技術を実務に展開するプロセス・方法論」も立派な論文になる,とその時に初めて感じました.私が,「JSME設計工学・システム部門」の活動に参加したのは,2004年に米国デトロイトで東芝の大富さんにお会いしたことがきっかけです.自動車技術会に無い「設計工学・システム」のスコープは,私自身が会社生活の後半に担当した「自動車製品開発のプロセス効率化」業務に一致します.自分自身の経験から,3D-CADの活用を中軸に据えた「自動車設計開発のシステム・プロセス改革」では世界の第一人者と自負しています.

幸いにもこの分野で2010年の部門功績賞を受賞できたことは,大変嬉しかったです.「技術軸」でなく「プロセス軸」でも「学会的な意義がある」と認めて貰ったと,勝手に理解しております.今回,副部門長に選任されましたが,私は,機械学会において,材料力学などの四力分野に代表される「縦串」の技術追求部門と,本部門の「設計の方法論・仕組み/システム」を論じる「横串」の活動が相乗効果を発揮してこそ「日本の技術の健全的発展」に貢献できると考えております.

民間出身の私は,「民と学をつないでこの横串活動を活性化する」ことが,私への期待ととらえております.民間の経験もある西脇部門長を補佐して,「設計の方法論・仕組みシステム」の面で「より一層の産学連携」を進められれば幸いです.ぜひ,会員の皆様のご協力をよろしくお願いします.

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