この度,第90期の部門長の大任を仰せつかりました.加藤廣副部門長をはじめ運営委員および学会スタッフの皆様,ならびに当部門にてご活躍の皆さまのご支援・ご協力のもと,学会ならびに設計工学・システム部門の一層の発展に寄与して参りたいと思います.どうか,よろしくお願い申し上げます.
昨年度は,昨年の3月には東北大震災,10月にはタイにおいて大洪水など,未曾有の災害が国内外で発生しました.被害に遭われた方には,この場を借りて謹んで,お見舞い申し上げる次第です.これらの災害は,人命を損なうような被害はもとより,日本のものづくりに大打撃を与えました.そして,このような大災害を想定していなかったせいか,開発現場・工場の破壊,サプライチェーンの分断などにより,全く生産できない状況が続きました.また,日本経済全体に与えた影響も小さなものではありませんでした.
このような大きな災害を得て我々が実感したことの一つには,ものづくりにおいてもどのようにこのようなリスクに対処し,災害時にも柔軟に対応できるような開発・生産システムを,さらにはサプライチェーンあらかじめどのように準備しておくかということであると思います.このような課題に関して,その具体的な提言が行えるのが,我々の部門たる設計工学・システム部門であると思います.設計工学・システム部門は,「ものづくりにおける領域横断的連携の実践」をその主題にしており,このような俯瞰的な観点に立った領域横断的連携があってこそ,上の課題を解決できる鍵を見つけることができるのではないでしょうか.今後,課題解決の糸口を見つけるべき積極的な議論がなされることをおおいに期待します.
また,昨年来の円高は,日本のものづくりに大きな打撃を与えてまいりました.多くの生産向上が海外に移動し,日本国内では危機的な空洞状態が広がりつつあります.このようなものづくりの危機を乗り越えるには,もはや開発・生産の効率化は限界にきており,我々エンジニアが取り組むべき方策は,だれにも真似のできない新しい魅力ある製品ものづくりにあることは周知の通りです.確かに,日本は個々の要素技術力は世界一だと確信しております.しかしながら,その要素技術をまとめあげて独創的な一つの製品まとめるあげる力は,未だ欧米の力には及びません.このような要素技術をまとめあげることを追求するのは,まさしく設計工学・システム部門であり,その責務は非常に重大であると思います.
さらに,教育の面においても,設計工学・システム部門の役割は重要視されていると思います.今,産業界に要求されている人材は,個々の技術に深い知識を持つ人材だけではなく,俯瞰的,言い換えればシステム的にものを見ることができる人材です.確かに,一つの技術に関して深い知識をもつことは非常な大切なことですが,その深い知識を,他の知識と連結,連携させて,大域的なものの見方ができる人材は,企業においても,大学においても,さらに大きな組織体として国家においても,リーダーとして,プロジェクトを牽引していけるものと考えます.このような人材を育てる課題を議論し,まとめあげるのも設計工学・システム部門の大きな役割だと思います.
以上,私見ながら,設計工学・システム部門の意義,役割について述べて参りました.その他にも,考えるべき課題は多くあります.学際,産業界を問わず,志を同じくする皆様の積極的なご参加により,活発に議論しながら,本部門がますます発展できるよう頑張ってまいります.どうか,皆様のご支援・ご鞭撻よろしくお願い申し上げます.