ニューズレター

このページでは,設計工学・システム部門 Newsletter No.35の内容をお届けします (2011年10月発行) .

発行:2011/10/14 改版:2011/10/14
ページ製作・編集 D&S広報委員会

No.11-82 講習会「自動車における3次元設計の現状と課題」(設計工学・システム部門企画) 開催報告

開催日:2011年8月31日(水)
会場:首都大学東京 秋葉原サテライトキャンパス (秋葉原ダイビル12階)

本講習会開催の狙い

製造業における製品開発は自動車などをリード役として,3D‐CADによる設計の時代に入りました.3Dデータは形状の確認,複雑な部品間空間成立性検討,レイアウト(場所取り),生産要件検討,また,カタログから整備要領書に至るまで,活用度は広範囲に及びます.一方で,その活用の実態は,各社まちまちなところを残しており,また,3Dデータ整備の時代にあっても,2D図面の存在は不可欠であります.

本講習会では,内外アセンブリメーカでの3Dデータ利用からサプライヤサイドでのモノ造りデータとしての運用実態をわかりやすく紹介することで,3Dデータ構築/運用するメリットと将来への方向性,3Dデータに具備すべき要件についての考察を行います.参加企業の皆様においては,自動車業界の方々はもとより,機械・電機・重工など他産業を含めて,2Dと3Dデータの両方を運用する現状から,今後3Dデータをどのように構築,活用していくかを検討する参考にして頂きたいと考えております.積極的な参加と論議を期待致します.


講演概要と講師

(1)「3次元CADの研究動向と製品設計への貢献」

法政大学理工学部機械工学科 教授 木村 文彦

法政大学理工学部機械工学科 教授 木村 文彦

3次元CADは広く産業界に普及し製品開発に不可欠な道具となっているが,開発初期段階における支援機能,高精度な機能評価,製品ライフサイクルを通じて生ずる様々な擾乱の扱い,ソフトウェア融合型製品のような多領域技術支援など,十分に解決されていない課題も多い.3次元CADの研究開発の動向と製品設計への適用について考えを述べて頂いた.

(2)「グローバル展開時代の3Dデータ活用」

日産自動車(株) 知識・情報マネージメント部 部長 二俣 達哉

日産自動車(株) 知識・情報マネージメント部 部長 二俣 達哉

日産自動車では早くから3Dデータを衝とする開発を推進してきた.BOMと連携した3Dデータをマスターとすることにより,生産性検討・CAEなどのコンカレントエンジニアリング,生産部門のモノ造りデータへの一元流通も実現した.更に,近年では海外開発拠点や海外サプライヤーとのコラボラティブエンジニアリングにも効率的に対応することが出来ている.これら最新の取り組み状況について紹介して頂いた.

(3)「モノづくりにおける3次元CADデータの活用と課題について」

ジヤトコ(株) 開発部門 解析技術センター
センター長 新明 正弘

ジヤトコ(株) 開発部門 解析技術センター センター長 新明 正弘

ジヤトコでは,製品3Dデータを開発から生産まで活用することにより開発期間短縮を実現している.開発から生産まで多種多様なCADが存在する中で効率的に活用するための仕組み,今後の課題と取り組み状況について紹介して頂いた.

(4)「3次元設計における最新ソリューションと海外事例」

シーメンスインダストリーソフトウエア(株)
代表取締役社長 島田 太郎

シーメンスインダストリーソフトウエア(株) 代表取締役社長 島田 太郎

日本の製造業における,3次元化のメリットと課題を整理し,3次元設計の最新ソリューションがその課題をどのように解決できるか,SiemensPLM製品を例題として,海外の事例も含めて紹介して頂いた.

(5)「JAMA /JAPIAの3D図面標準化活動総括と活用への取り組み紹介」

(社)日本自動車工業会 DE部会3D図面活用WG 委員
三菱自動車工業(株)エンジニアリングIT部エキスパート嵯峨周司

(社)日本自動車工業会 DE部会3D図面活用WG 委員 三菱自動車工業(株)エンジニアリングIT部エキスパート嵯峨周司

自動車産業においては,今後の開発効率向上の観点から,3D図面の有効活用が課題となっている.本講演では,これまでJAMAで実施してきた3D図面標準化の活動紹介,及び今後の課題をCAD/Viewerの実証結果や機能要求などを交えて紹介して頂いた.

(6)「データ成長を活用した3次元化の実現に向けて」

デジタルプロセス(株) デジタル・コンテンツ・サービス部 部長 稲荷 泰明

デジタルプロセス(株) デジタル・コンテンツ・サービス部 部長 稲荷 泰明

3次元化の実現に向けては,3次元化形状データを活用したモノ作りスタイルを構築することが,必要と認識している.その中でも,モノ作りの開発フェーズに対応した形で3次元形状データを構築(これをデータ成長と呼んでいる.)し,そしてそれらを効率的に,かつタイムリーに構築していくことが,3次元化をうまく行なうために重要なファクターとみている.そこで,これまでの3次元化に取組んできた製造業を中心とした様々な事例を交えながら,データ成長を活用した3次元化の取組み内容を紹介して頂いた.

実施結果

[受講者]

参加23 名(企業18 名、大学・研究機関2 名、不明3名)、他に講師・事務局を入れて、合計34 名
職種製造(2)、研究(2)、開発(4)、設計(6)、管理(0)、企画(0)、その他(7)、学校/教員(2)

(1)受講者のアンケート結果

[参加の目的]

業務に生かすため (16)
業務の幅を広げるため (4)
その他 (3)
  • 3DCADの現状を知るため
  • 情報収集。ゆくゆくは業務に生かしたい。
  • 情報収集(他社、他業界の動向)

[役に立ったか]

非常に有意義であった (11)
どちらかといえば有意義であった (12)
あまりためにならなかった (0)
民間企業での3DCAD使用状況を知ることができ、大変勉強になりました。

[本日の講習会で特に興味深かったものは?]

(1) 3次元CADの研究動向と製品設計への貢献 (7)
(2) グローバル展開時代の3Dデータ活用 (14)
(3) モノづくりにおける3次元CADデータの活用と課題について (21)
(4) 3次元設計における最新ソリューションと海外事例 (9)
(5) JAMA /JAPIAの3D図面標準化活動総括と活用への取り組み紹介 (4)
(6) データ成長を活用した3次元化の実現に向けて (7)

[今後の講習会に]

ぜひ参加したい (0)
内容次第で参加したい (23)

[今後の希望テーマ]

  • 苦労した所の話
  • 3D活用例、生産を含む、それ以外目新しいところがあれば聞きたい。
  • PLM(Product Lifecycle Management)
  • モデルベースデザイン
  • メーカーの設計部門、開発部門の担当者の発表
  • インデント製品メーカーの3D活用
  • 3次元設計を実施するための設計プロセス改革事例
  • 競争力向上、付加価値向上の取組み事例の紹介
  • できれば、ソフトウェアの会社よりもメーカーの話を聞きたい。

[ご意見]

  • 3D図面活用WGについて、将来的方向性や、目的がもう少し明確にお話いただけたらと思いました。稲荷さんのお話の様に「3D図面化」が目的になっていないか、少々疑問が残りました。
  • 資料の字を大きくもしくは、印刷を2ページ/1ページにする等にして欲しい。
  • 歴史や経緯の説明は短くして、課題や現状の説明を長くしてもらいたかった方が良いと思います。どちらかというと、中身の説明が後半にあってはしょり気味の説明になったのが残念な場合がありました。
  • スライドが小さくわかりにくい。
  • 発表と質疑応答を40分/20分程度にしてほしい。
  • PPTの間引き掲載は後で分かりづらい。
  • 講演内容により、講演時間が長いものもあった。

主催事務局の所感

昨年の講習会の評価を踏まえ、本年も昨年同様にの趣旨で、自動車業界にフォーカスして「3次元設計の現状と課題、今後の方向性」をテーマにレクチャーを構成した。

木村先生「CADの研究動向」を起点に、自動車メーカ「開発のグローバル展開」→サプライヤ「データ衝の具体的取組み」→CADベンダ「最新ソリューション(JTなど)」→業界団体「JAMAの3D図面標準化」→サービスベンダ「データ成長」の流れでシナリオを構成した。流れとしては、筋の通った講習会になり、内容に関する評価は高かったと感じる。

日産自動車二俣氏、デジタルプロセス稲荷氏のお二方は、昨年に引き続いての講演ということで、昨年と同様の内容で、1年間の状況変化分の折込をお願いした。参加者の中で、昨年に引き続きの聴講の方も1名いらっしゃったが、特に講習内容に関する不満はなかった。
参加者の関心の高さから、講習中はどの講演に対しても活発な質問・意見交換が行われた(質問14名、34件)。改めて、「3次元CADによる設計」が色々な課題を持つことを認識した。「データ作成の基準化」「協力企業や海外拠点との3Dデータを含んだ設計情報の伝達の難しさやセキュリティ確保」などである。

自動車業界に限らず、3次元設計が定着しつつあることの証左と感じる。次年度の講習会を含め、今後の部門活動の参考にしたい。また、部門事業としては、有償の参加者が23名と少なかったので、次年度以降のPR方策等を検討したい。

記)機械学会D&S 部門委員、産学連携推進委員長:加藤 廣(デジタルプロセス)
以上

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