ニューズレター

2010年度の設計工学・システム部門講演会では,15のオーガナイズド・セッションと一般セッション,産総研セッションが実施されました.本ページでは,各セッションの座長の方に当日のセッションの様子を報告いただき,紹介します.

発行:2011/4/15
ページ製作・編集 D&S広報委員会

設計工学・システム部門講演会 オーガナイズド・セッション報告

OS1 製品開発プロセスのための方法論

オーガナイザー: 藤田 喜久雄(大阪大学), 青山 和浩(東京大学), 発表件数:8件
開催日時: OS1-1 10月28日 13:30-14:50, OS1-2 10月28日 15:10-16:30
座長: OS1-1 藤田 喜久雄(大阪大学), OS1-2 青山 和浩 (東京大学)

  • OS1-1 製品開発プロセスのための方法論I
     OS1-1「製品設計開発プロセスのための方法論」では,製品開発の業態に基づいてデジタル化やIT投資の進め方を考える上での枠組み,パラメータ・性能・構造というプロダクト情報に基づいて設計開発プロセスを計画・管理する方法,知財保護を考えたモジュール決定方法とその適用具体例,製品開発プロセスの構造化手法をシステムLSIに適用しようとする研究,についての4件の発表が行われた.

藤田 喜久雄(大阪大学)

OS2 設計理論・方法論

オーガナイザー: 松岡 由幸(慶應大学), 村上  存(東京大学), 綿貫 啓一(埼玉大学), 発表件数:2件
開催日時: 10月28日 16:10-16:50
座長: 綿貫 啓一(埼玉 大学), 氏家 良樹(慶應大学)

本セッション:「Design 理論・方法論」では、2名の講演者の方々から、設計・デザインのプロセスと教育に対する科学的アプローチの可能性、可変機構を有する人工物の設計問題に対応可能なロバスト設計法に関する話題をご提供いただいた。会場には20名ほどの聴講者の方にお越しいただき、設計者・デザイナの教育に関する展望、課題・ニーズを発見する科学・工学の重要性、ロバスト設計法が扱う設計変数の特性などを中心に活発な議論が行われた。

OS4 デジタルエンジニアリング

オーガナイザー: 前川  卓(横国大学),  鈴木 宏正(東京大学), 発表件数:8件
開催日時: OS4-1 10月29日 9:30-11:10, OS4-2 10月29日 11:20-12:20
座長: OS4-1 前川 卓(横浜国立大学), OS4-2 鈴木 宏正(東京大学)

OS4-1 デジタルエンジニアリングI

本セッションでは,デジタルエンジニアリングに関連する発表が5件行われた.CAEを用いたコンパクト液体洗剤容器のデザインに関する研究,サーバの低騒音化設計のための騒音予測システムの開発,CADメッシュのプリミティブフィッティング誤差の分析及びフィッティング結果の評価に関する研究報告があった.また,CADメッシュの姿勢の正規化プラスティック部品の革シポテクスチャ合成手法に間する研究の発表があり活発な質疑・応答が交わされた.

前川 卓(横浜国立大学)

OS4-2 デジタルエンジニアリングII

本セッションでは,3件の発表があった.一つは企業におけるデジタルエンジニアリングの展開に関するもので,3次元化やシミュレーションの活用の段階から,さらに設計知識なども含めて,グローバルに開発を支援するためのシステムに付いて発表と質疑が行われた.他の2件はリバースエンジニアリングに関するもので,メッシュ上での新しい主曲率計算方法や,高速な幾何アルゴリズムによる曲面フィッティングについて発表であった.スキャン点群の大規模化にともない,より効率のよいアルゴリズムの開発が必要となっている.

鈴木 宏正(東京大学)

OS7 設計と最適化

オーガナイザー: 山崎 光悦(金沢大学), 西脇  眞二(京都大学), 下田 昌利(豊田工業大学), 轟 章(東京工業大学), 発表件数:18件
開催日時: OS7-1 10月28日 9:30-10:30, OS7-2 10月28日 10:40-12:00, OS7-3 10月28日 13:30-15:10, OS7-4 10月29日 9:30-10:30, OS7-5 10月29日 10:50-11:50
座長: OS7-1 山崎 光悦(金沢大学), OS7-2 中村 正行(信州大学), OS7-3 下田 昌利(豊田工業大学), OS7-4 竹澤 晃弘 (広島大学), OS7-5 西脇 眞二 (京都大学)

OS7-1 設計と最適化Ⅰ~形状・形態設計~

 レベルセット法を用いたトポロジ最適化に関する3件の発表が行われ,正則化法としての制約条件や表面被覆法の実装に関する質問,討議が行われた.

山崎 光悦(金沢大学)

OS7-3 設計と最適化Ⅲ~衝突・加工・機構設計~

 セッションの概要:本セッションでは衝突に対する自動車構造の解析に関する発表が3件,深絞り加工のパラメータ解析に関する発表が1件,4足ロボットの足先軌道の最適化に関する発表の計5件の発表が行われた.
発表の多かった自動車の衝突問題に関して概要をまとめると,衝突相手車の損傷も考慮するコンパティビリティ性能を向上させるための車体構造に関して,エネルギー吸収部の板厚や断面形状をパラメータとした検討が行われ,各パラメータの影響が調査されていた.
また,歩行者の脚部損傷の低減を目的とした装置の研究では,車体前方に設置した構造の効果が応答曲面法を用いた最適化手法によって検討されていた.その他,トラックの歩行者に対する加害性を軽減するためバンパー高さ等のパラメータスタディの結果が報告された.
パラメータスタディ段階の研究も最適化につなげることが予定されており,安全に関わる具体的な構造提案に繋がる実用的で興味深い研究内容であり,今後の進展を楽しみにしたい.

下田 昌利(豊田工業大学)

OS8 近似最適化

オーガナイザー: 荒川 雅生(香川大学), 北山 哲士(金沢大学), 発表件数:9件
開催日時: OS8-1 10月27日 10:00-11:40, OS8-2 10月27日 13:30-14:50
座長: OS8-1 荒川 雅生(香川大学), OS8-2 酒井 忍(金沢大学)

OS8-2 近似最適化II

 本セッションでは,4件の研究発表が行われた.最初の2件は,Teamologyを利用した活性なチーム編成の方法に関する研究であり,心理学分野で用いられているBigFive(人間の性格を5次元で分析)の考え方も取り入れた新しいTeamologyの提案や定式化法などが検討され,大学のゼミナールや会社のチーム編成に応用した事例が紹介された.日本人の特性などを加味した新たなチーム編成の手法の一つとして,今後の発展が期待される.データ包絡分析法を用いた多目的近似最適化手法では,各データの重みを考慮した最適化の方法やサンプリングポイントの追加法についての検討がなされていた.最後に,変数の相関性を考慮したロバスト設計では,設計変数間の相関性を表すマトリックスCを導入した新たな定式化を行っており,非常に興味深い研究であった.

酒井 忍(金沢大学)

OS12 ライフサイクル設計とサービス工学

オーガナイザー: 下村 芳樹(首都大学東京),梅田 靖(大阪大学),発表件数:18件
開催日時: OS12-1 10月28日 13:30-14:50, OS12-2 10月28日 15:10-16:30, OS12-3 10月28日 16:50-18:10
座長: OS12-1 伊藤 宏幸(ダイキン), OS12-2 下村 芳樹(首都大学東京), OS12-3 古賀 毅(東京大学)

OS12-3 ライフサイクル設計とサービス工学Ⅲ

 本セッション:「ライフサイクル設計とサービス工学Ⅲ」では,4名の講演者の方々から,ライフサイクルのシナリオを考慮した設計,およびサービスの表現とプロセス改善に関する話題をご提供いただき,会場には立ち見が出るほどの40名以上の聴講者の方にお越しいただいた.製品設計において,ライフサイクルのシナリオをどのように記述し考慮するか,およびサービスの提供プロセスを,どのように表現しシミュレーションするか,構造化し改善を検討するか,という話題を中心に,活発な議論がなされた.

古賀 毅(東京大学)

OS13 創発性と多様性の設計

オーガナイザー: 宮田 悟志(ダッソー・システムズ・シムリア), 竹村 研治郎(慶應大学), 佐藤 浩一郎(慶應大学), 発表件数:6件
開催日時: OS13-1 10月28日 9:30-10:30, OS13-2 10月30日 10:50-11:50
座長: OS13-1 佐藤 浩一郎(慶應大学), OS13-2 長谷川 浩志(芝浦工業大学)

OS13-1 創発性と多様性の設計Ⅰ

 本セッション:「創発性と多様性の設計Ⅰ」では,3名の講演者の方々から,創発性を促す新たな発想法の提案,設計における技術システム進化の分析,および技術システム進化の理論の導入による発想支援ツールの提案に関する話題をご提供いただき,会場には十数名ほどの聴講者の方にお越しいただいた.中心的な議題は,概念設計に必要とされる多様な設計解を発案するための設計支援ツールの有用性となり,ボトムアップ的手法とトップダウン的手法の融合による発想支援の可能性について活発な議論がなされた.また,設計における多様な技術システムの進化パターンの予測分析の価値や重要性などについても議論が交わされた.

佐藤 浩一郎(慶應大学)

OS13-2 創発性と多様性の設計Ⅱ

 本セッションでは,発表件数6件で,前半の3件は,機能の新しい組み合わせを創発するための考え方,その評価,また,機能の新しい組み合わせはイノベーションに繋がっていくことから,掃除機を題材とした技術的システムの進化の現状分析(紙パック式,サイクロン式の関係)が発表された.後半の3件は,形態の創発に関する発表で,生物に見られる分岐網形態創成アルゴリズムを用いたICチップ冷却チャンネル網の設計,初期設計領域の影響を考慮した密度法(位相最適化手法)による形態の創生,構造体を対象にした創発の概念,その方法を用いた力学場の計算概要について発表があった.製品の設計では,必ず機能と形態の創成を伴うため,この両方の視点にて議論する場が必要であり,大変有意義なものであった.

長谷川 浩志(芝浦工業大学

OS15 感情と設計

オーガナイザー: 福田 収一(スタンフォード大学), 発表件数:5件
開催日時: 10月28日 13:30-15:40
座長: 福田収一(スタンフォード大学)

OS15 感情と設計

 横尾俊輔(東京大学)の製品音の快適性を,和音性を利用し確保しようとする研究はきわめて独創的であり興味を引いた.音については,消音が重視され,音を設計する視点からの研究はきわめて少ない.感性的な音の研究もその多くは,発生した音の感性評価であり,必ずしも設計と結び付くわけではない.しかし,この方法は純音成分の和音性に注目し,発生する音を快音化しようとする研究であり,音の設計の研究であり,きわめて独創的である.日本の多くの感性設計は感性を+αの付加価値と捉えているが,感情,感性価値は本来の製品の価値である.その意味で,製品の商品価値,感情価値を創造するこの研究のもつ意味はきわめて大きい.

 NIRSによる重心移動と脳賦活反応の関係を調べた侯(埼玉大学)の研究はこれからのBMIの研究として興味を引いた.感情とは,動的であり,行動と深く関連する.そのため,行動‐脳‐心のつながりを解明してゆく必要がある.この研究はその方向での重要な研究である.これからの発展が多いに期待される.

 福田収一(Stanford)は,感情がパターンダイナミックスの視点から理解できることを論じ,合理性を欠くように捉えられがちであるが,激変し,多様化する環境の中での意思決定,品質確保に役立つことを指摘した.

福田 収一(スタンフォード大学)

GS1 一般セッション

オーガナイザー: 古賀 毅(東京大学), 福重 真一(大阪大学), 発表件数:4件
開催日時: 10月27日 13:30-14:50
座長: 古賀 毅(東京大学), 福重 真一(大阪大学)

GS1 一般セッション

 一般セッションでは,産業界から1件,アカデミアから3件,合計4件の発表が行われた.衝撃荷重を受ける梱包用構造物の監視デバイスに関する研究では,ダンボールが運搬中に落下すし破損する挙動を解明するために,衝撃の影響を実験・解析を比較し解明する研究が発表された.産業界からは,シェル構造の補剛模様の開発として,卍型やH型など様々なパターンの実験解析結果が報告された.また,ピッチング用具の設計において,少数のひずみ情報から衝撃加重を受けた位置を特定する研究が報告された.最後に,文法進化(GE)という新しい進化的計算法のアルゴリズム改良に関する報告が行われた.

古賀 毅(東京大学)

 第21回設計工学・システム部門講演会は2011年10月21日(水)~23日(金)に米沢市山形大学にて開催されます.この講演会でも,第20回部門講演会と同様のオーガナイズド・セッションが企画されると思われます.ご興味を持たれた方は是非発表者として,または聴講者として奮ってご参加下さい.

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