ニューズレター

このページでは,設計工学・システム部門 Newsletter No.34の内容をお届けします (2011年 4月発行) .

発行:2011/4/15 改版:2011/5/23
ページ製作・編集 D&S広報委員会

Newsletter No.34

部門長就任の挨拶
(首都大学東京 下村 芳樹)

第89期部門長 下村芳樹

この度,第89期の部門長を仰せつかりました.運営委員および学会スタッフの皆様,ならびに部門員の皆さまのお力添えのもと,学会ならびに設計工学・システム部門の一層の発展に寄与できますよう努力を致したく存じます.どうぞよろしくお願いいたします.

我々を取り巻く社会は日々目まぐるしく変化し続け,一夜にして常識が覆り,攻守が頻繁に入れ替わる状況が日常的に続いております.このことは日本機械学会において扱われることの多いメカトロニクスシステム製品に対しても同様の変化をもたらしております.例えば,今や工学の範疇においても「価値」を議論する場が設けられることは決して稀有なことでは無くなりましたが,そこでいう価値の本質を固定的概念として語ることは容易ではなく,社会・時代の変遷とともに,変化し,成長し続ける概念としてとらえるべきものであることは,今や広く認識されるところです.そして「ものをつくる」ことが価値を創出するための手段であり続けるために,生み出すべく価値の変遷に伴って,「もののつくり方」もまた変化を遂げねばならないことは自明の理であり,その意味で我々は決して終わることのない,手段探求の道筋を歩み続けねばなりません.この過程において,道筋を示す地図の記法を整備し,また実際に地図を描くことこそが,設計工学・システム部門の役割であろうと認識しております.しかし社会の変化が求める「ものづくりの進化」は決して単純な旅程ではなく,多くの複雑な分岐や,かつてない巨大な障害に溢れています.これら分岐を地図に正確に記し,障害を取り除きつつ歩を進めるためには,先端の技術開発にこれまで以上に注力するとともに,個々の領域を超えた横断的な連携をものづくりにおいて実践することが非常に重要です.そしてこの「ものづくりにおける領域横断的連携の実践」こそが,設計工学・システム部門の主題であると理解しております.ここでいう領域横断的な連携をすること無しに解決することが困難であると言われる代表的な問題が環境問題であり,また極度に疲弊した自国経済の復興であることは皆様のご存知の通りです.しかしこれら以外にも我々が取り組まねばならない問題は散在しており,その一つの例が教育問題です.若年層の理科離れが叫ばれて随分と時間が経過しましたが,まだその抜本的な対策は見つかっていないように思われます.そしてその影響は高等教育や企業活動の現場においても深刻な影響を及ぼし始めており,「ものを知らない日本人」が急速に増大し,取り返しのつかない状況に陥りつつあることが多々指摘されています.つまり我々が描くべき「ものづくりの地図」には,つくるべきものへの道筋やあたらしいつくり方への道筋だけでなく,「ものを知る日本人」の育成への道筋を書き記すことが求められ始めています.設計工学・システム部門におきましては,この工学に対する新たな要求にお応えできる地図づくりと,そのための人づくりにひたすら邁進致します.学際,産業界,政界を問わず,志を同じくする皆様の本部門活動への積極的なご参加をお願い申し上げます.併せて,今後の設計工学・システム部門をどうぞよろしくお願いいたします.

部門長退任の挨拶
(ダイキン工業(株) 伊藤 宏幸)

第88期部門長 伊藤宏幸

一介の企業人に過ぎない身でありながら,伝統ある設計工学・システム部門の第88期部門長の大役を拝命し,何とか乗り切ることができましたのは,部門登録者の皆様のご協力,拡大運営委員会メンバーのご尽力,そして田中さんをはじめとする日本機械学会本部の皆様のご支援のお蔭です.ここに厚く御礼申し上げる次第です.

この1年間,いわば橋渡し的な役割を任じつつ,現在の日本の製造業が抱える本質的な課題に真正面から対応する本部門を,その多様性とともに,いかに会員や関連学協会メンバーに伝えることができるかに,腐心してまいりました.そのため,アドバイザリボードの皆様,企業出身の運営委員の方々には,度々お知恵をお借りしました.それらの経験に基づき,弊職の非力さゆえ未だ道半ばといったところですが,本部門のカバーする広い分野を,頻繁に開催される講演会,講習会を通じて紹介し,併せて,新興するアジアを中心としたグローバル・ニーズに応えるため国際会議を適宜主催・共催し得るような発展的かつ健全な財政基盤を確立するための一連のスキームを提案,着手したところです.加えて,新たに開始された部門インフォメーションメールの有する圧倒的な広報能力の有効活用を前提として,ネットワーク外部性に依拠した,さらなる公益性向上に繋がる企画も進行中です.

第89期は,下村芳樹部門長のリーダーシップの下,着実な事業活動とともに飛躍的な展開があるものと期待されます.新たに拡大運営委員会を構成される方々には,お忙しい中とは存じますが,所属委員会の活動を中心に,少なくとも,週に1時間程度は本部門に思いを致し,是非,何らかの行動を起こして頂きたく希望します.弊職も及ばずながら,お手伝い申し上げる所存です.

副部門長就任の挨拶
(京都大学 西脇 眞二)

この度,第89期の副部門長に選出いただき,大変光栄であるとともに,その責任の大きさをひしひしと感じている次第です.日々不安は募るばかりですが,下村芳樹部門長を始めとする運営委員,アドバイザリーボードの方々,ならびに部門所属の皆様のご支援をいただきながら,微力ながらも本部門発展のお手伝いをさせて頂ければと考えております.また,一昨年度に「部門活動で取り上げる技術分野に関して,その適正化を図り新規発展分野の開拓を促進するための課題を中長期的な視点から部門長および運営委員会に対して答申する」ことを目的として新設されました技術委員会につきましても,副部門長がその委員長を担当することとされており,併せてこの職務に対しましても,皆様からのご意見を賜りつつ,頑張っていきたいと思います.

現在,日本機械学会には20の部門がございます.それぞれの,部門にはそれぞれの部門の特徴と役割がございますが,学会を布地にたとえて,学会の縦糸としての役割をもつ部門と,横糸としての役割をもつ部門で構成されていると,よく言われます.縦糸としての役割をもつ部門とは,機械工学における基礎力学や基本技術を支え,発展させていく役割をもち,横糸としての役割をもつ部門は,その基礎力学を融合し,新しい価値を見いだす役割をもつと言えるでしょう.このような,縦糸の役割をもつ部門と横糸の役割をもつ部門が有機的に連携しながら発展していくことにより,新しい21世紀の機械工学が生まれでると期待できます.本部門たる設計工学・システム部門は,まさしく横糸としての役割を担った分野横断的な部門です.しかしながら,横糸の役割は,これは私見ですが,未だに体系化されているとは言い難いと思います.この状況は,逆に考えれば,本部門にとっては大きなチャンスであるとも言えるでしょう.すなわち,本部門は,学術的,技術的に飛躍できる挑戦的な課題を多くもち,それをひとつずつ解決していくことにより分野横断的な学問・技術の体系化がなり,やがては機械工学に大きく貢献できると期待できるわけです.

以上,今後一層の発展が期待される本部門において,その運営に例え僅かでも直接的な貢献をする機会を与えていただけましたことは光栄の一言に尽きる思いです.下村部門長の下,本務を全うするため頑張りますので.どうか皆様の暖かいご支援,ご協力のほどをお願い申し上げます.

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