ページ製作・編集 D&S広報委員会,2010年10月発行

17th ISPE International Conference on Concurrent Engineering (CE2010) 参加報告

報告者:Stanford University 福田収一
電気通信大学 井上全人
東京大学 田中謙司

 

  • 開催日時:2010年9月6~10日
  • 会場:AGH University of Science and Technology(AGH), Cracow, Poland
  • 主旨:Concurrent Engineering (CE) is concerned with designing products and services meeting requirements of their life cycle stakeholders.

 ISPE International Conference on Concurrent Engineeringは,設計者がコンピュータソフトウエアを利用したコラボレーションやコミュニケーションにより,設計上のトレードオフを解決するための情報技術に関して議論する場として毎年夏季に開催されている.その17回目の会議CE2010はポーランド・クラコフのAGH科学技術大学で行われた.

 CE2010は5日間開催され,初日はチュートリアルセッション,2日目から5日目まではキーノートとオーガナイズドセッション(Lean Product Development, Knowledge Engineering, Advanced Manufacturing, Design Knowledge Utilization, Mass Customization, Product Design and Development, Human Centric Product Design and Development),一般講演により構成される.初日のチュートリアルセッションでは,スタンフォード大学の福田収一先生がCEの歴史的な変遷を説明された後,製造者とカスタマーの融合という新しい第3世代のCEについて述べられた.キーノートでは,ポーランド開催ということからはPiotr Skurzynski氏(National Centre for Research and Development, Poland),ポーランドの科学研究基金の状況について説明した.ポーランド全体で研究開発基金は年間16億ドルで,これはStanford大学の37億ドルより少ない規模であること,そのような中,ポーランドでは競争力獲得のため“知識”ベースのアプローチに注目していること,クリーンエネルギー分野などの重点項目を決めて予算付けしていること等が説明された.またEric Simmon氏(National Institute of Standards of Technolog, US)によるチュートリアルセッションでは,本年に入り活発な動きを見せているSmartGridの現状について説明がなされた.その中では,曖昧なSmartGridの定義を明確化し,NIST主導で基準策定を行っていること,今後,複雑系システムの組合せとなるSmartGridの設計・マネジメントにおいて,Concurrent Engineering手法の応用が期待されていることなどが解説された.

 Conference全体の傾向としては,昨年から引き続きサービス,リサイクル,サステナビリティといった製品のライフサイクル全体を包含した研究テーマが増加してきたが,本年はこれらに加え"Lean","Knowledge"といったアプローチが加わっている.“Lean”はトヨタのカンバン方式を元にしている研究であるが,欧州を中心に研究が盛んになってきているとのこと.

 日本から多くの参加・発表があり,本会議への貢献と存在感は大きかった。以下発表順に紹介する.1日目のチュートリアルセッションでスタンフォード大の福田収一教授,3日目の東大の稗方准教授のオーガナイズによるDesign Knowledge Utilizationセッションにおいて,東大の笈田佳彰氏,田中謙司助教,日本海洋科学の鈴木陽一郎氏,また,4日目のMass Customizationセッションで産総研の三島望氏,4から5日目のProduct Design and Developmentセッションの福田収一教授と電通大の石川晴雄教授,井上全人助教のグループ,Human Centric Product Design and Developmentセッションの東大の青山和浩教授がそれぞれ研究発表を行った.

 本会議では,採択された68件の発表論文のうち,合計2件のAwardが授与された.Best General Paper Award(最優秀論文賞)として1件の論文が受賞し,もう1件は学生を対象としたAwardであった.設計システム工学部門に所属する,東京大学 古賀 毅,青木 英士,青山和浩による論文「A Modular Design Method for Scenario Embedded Product」が,Best General Paper Awardを受賞した.

 この会議の今後の予定としては,来年のCE2011は7月4日からMIT(米国)で開催される予定である.スタンフォード大学の福田収一教授がCE2011のGeneral Chairを務められる.次回のCE2011が行われる7月4日にはMIT付近のBostonで独立記念式典が盛大に行われており,日本からも多数参加されることを願う.

 以下に関連するサイトへのリンクを示す.

 CE2010およびCE2011情報: http://www.ce2010.pl/

 

Tutorialセッション(9月6日)

「Reversed Concurrent Engineering」

Conference dinner(9月9日)

:最優秀論文賞の授賞式

Conference dinner(9月9日)

:表彰状と記念品

クラコウ市の街並み

:旧市庁舎と織物会館

 

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