ページ製作・編集 D&S広報委員会,2010年10月発行
2010 International Design Engineering Technical Conferences
(ASME IDETC/CIE) 参加報告
報告者:首都大学東京 舘山武史
2010年8月15日から18日にかけて,カナダ・モントリオールのFAIRMONT THE QUEEN ELIZABETHにて,ASME IDETC/CIE 2010が開催された.同会議は9つの会議で構成されているが,参加者は全ての会議に気軽に参加可能であり,分野横断的な議論を行う場が提供されているといえる.
サービス工学に関する研究に従事している筆者らの研究グループは,Design for Manufacturing and the Lifecycle Conference (DFMLC)とDesign Automation Conference (DAC)にて論文発表を行ったことから,これら2つの会議を中心に報告する.
DFMLCは,製品・システムの生産や,ライフサイクルマネジメントのための設計の方法論やツールの開発などを主な対象テーマとしている.特に,全12セッションのうち3セッションがSustainableを主テーマとしており,また"Design for Sustainability"というタイトルでキーノートスピーチが行われるなど,この分野への関心の高まりがうかがえる.筆者らが発表を行ったセッション"Design for Service, Design for Quality (DFMLC-7)"では,9件の発表が行われた.筆者らは,サービスを離散・連続混合システムとしてモデル化し,シミュレーションを行うことにより評価を行う手法,サービス提供プロセスモデルを起点としてサービスの実現構造を構築する手法,および集団顧客の要求を考慮した,公共サービスの設計支援手法について発表を行った.また,リハビリテーションロボットや航空機などの実事例を対象とした製品・サービス設計に関する研究などの発表がなされた.本セッションには,Computers and Information in Engineering Conference (CIE)のセッション"Product Service Systems (PSS) Design"の参加者など,サービス研究に従事している各国の研究者が参加しており,活発な議論がなされた.
DACの主要な研究テーマは"Design Representation", "Design Optimization", "Design Evaluation", "Design Integration"の4つであり,23セッションで112件の発表が行われた.筆者らのグループは,セッション"Design for Market Systems"にて,サービス設計知識のデータベースを構築し,アナロジーに基づいたサービス設計支援を行う手法について発表を行った.
なお,次年度の本会議は,2011年8月28日から31日までの日程で,米国ワシントンDCにて開催される予定である.
報告者:デルフト工科大学 高本 仁志
The 2010 ASME International Design Engineering Technical Conferences and Computers and Information in Engineering Conference が2010年8月15日から18日かけてカナダ・モントリオールにて開催された.本会議は米国機会学会(American Society Of Mechanical Engineers)の主催で毎年開かれている.本会議は13の会議で構成されており,筆者はその一つであるInternational Conference on Design Theory and Methodology(DTM))で発表させていただいた.12の会議の中にも,設計の観点から興味深い発表が多かったが,ここではDTMで発表された内容に関して報告させていただく.会議全般及びその歴史的な経緯などは過去のニューズレター等をご参照いただきたい.
今年で20回目の開催を迎えるDTMへは85報が投稿され,そのうち54報が採択・発表された.その中には産業界からの論文(5報),米国外の学術研究機関による論文(24報)も含まれた.採択された論文は内容別に11のセッションに分けて発表された.今年のセッションは,Product family and Architecture Design Methods・Functional Modeling in Design・Robust Development Metrics and Methods・Process Modeling and Uncertainty・Advances in Design Theory and Formalisms・Advances in Design Prepresentations and Methods・Bioinspired Design・Design Behavior Study・Design Creativity and Innovation・Customer Needs and User Centered Design I and IIであった.これらのセッションは並行して行われることが無く,設計研究を概観するには丁度良い会議であった.筆者は初めて出席したため,今回のDTMの内容を過去のものと比較するはできないが,建築的な議論の場を与える発表が多かったのが印象深かった.この理由の一つは,DTM常連の発表者・研究機関が多く,昨年の発表で受け取ったであろう質問の回答として.(今年の)研究成果の発表が構成されたからと感じた.
DTMでの発表の合間に,DTM運営委員会による今後のDTMの方針などを決める会議が行われた.とりわけ,新しいセッション形式の導入について議論・検討された.それは、研究成果の発表をセッション導入部分にまとめて行い,引き続いてセッション題目に関する議論を,発表者及び聴衆で行う,というユニークなものである(エレベーターセッションと呼ばれている).今年はFunctional Modeling in Designのセッションにてこの形式が試験的に導入された.来年からのDTMでの発表形式が全てこれに従うか定かではないが,来年発表を予定されている皆さまはこの点を考慮して投稿願いたい.また,DTM委員によって編集されている学術論文の紹介等(Special Issuesへの投稿要請なども含め)が行われたことから,DTMに関係する研究者の情報交換が盛んであることを感じさせた.
報告者:東京大学 平尾彰啓 (修士1年)
今回、私は初めての国際学会として、ASMEへ参加しました。
今回のASMEはモントリオールでの開催で、私にとっては初めてのカナダ滞在でした。
成田空港からシカゴを経由し、モントリオールへ入りました。
飛行時間はシカゴまでの約12時間に加え、更にそこから2時間のフライトです。
滞在中、日本では猛暑が続いていたようですが、モントリオールでは日中でもおおよそ25度ぐらいの気温で、非常に快適でした。
モントリオール、という都市そのものに対する印象としては、非常に快適な街であるな、というものでした。
公用語は英語ではなくフランス語で、街の中の標識もほぼフランス語、一部フランス語と英語両方の記述です。
しかし、多くの住人は必要とあればすぐに英語で対応してくれるため、全くフランス語は知らない私でも不自由なく生活できました。
緯度が北海道の稚内ぐらいの所であるため、8月は非常に昼が長く、20時ごろでもまだ空は明るいです。
街行く人々がバカンスを楽しんでいる様子を見ていると、見ているこちらまで楽しくなってきます。
様々な国から訪れているようで、街中をガイドマップを持ち歩いている人を見ると様々な国の人がいました。
それもあってか、日本に比べ人々のノリはよく、ストリートパフォーマンスの周りには日本では考えられないぐらい人が集まり、にぎやかになっていたのが印象的です。
さて、私の発表は、火曜日の朝9時からのグループにおいて、4発表中2番目に行う予定でした。
事前にスライドの準備も行っていたのですが、やはり前日の夜になると緊張してしまいました。
先生には前日の夜、一つ一つの単語の発音までしっかりとご指導頂きました。
火曜日、朝は、8時ぐらいから発表を行う部屋の前にあるソファーに座り、直前まで最終確認を行いました。
9時になり、さて、1人目の人の発表を聞きながら落ち着こうと考えていた所、予想外の事態が起きました、
一人目の人が来ていなく、いきなり最初に発表を行わなくてはいけないことになったのです。
後で聞くと、国際学会では、学会に通ってもビザが発行されず参加できなくなる人も少なくないそうで、このようなことはそれほど珍しくないとのことでした。
しかしその時はそのようなことが起きると予想もしていなかったので、さすがに驚いてしまいました。
今思うと、逆に一人目の発表を聞いている間に緊張してくることがなく良かったのかもしれません。
さて、このようなトラブルが起きた結果、発表者が90分で4人から90分で3人にまで減ったため、一人あたりの持ち時間が予定よりも長くなりました。
結局、私は質疑を入れて40分弱話していたと思います。
発表途中にも質問が入ってくるような雰囲気になり、当初予想していた状況とは異なるものになっていました。
英語は残念なことにそれほど得意とは言い切れないのですが、おそらく気を利かせて質問をゆっくりと話してくれたのでしょう、とりあえずは何とか対応できたと思います。
結果として振り返ってみると、イレギュラーなことが起きてしまったとはいえ、下手な英語なりにも返答は行えたと思いますし、最低限の義務は果たせたのではないかと思います。
他の人の発表を見ると、全く質問が出てこないものも少なからずあった中で、長い時間質疑が行われたのは良かったのではないかと思います。
もちろん、発表において分かりにくい箇所があったから生まれてしまった質問というものもあったとは思います。そこは教訓としてしっかりと身に刻んでおきたいです。
他の方の発表を聞いて感じたこととしては、学会は、特に学生として参加する学会ですが、他の人の研究内容を詳しく理解する、というより、精神面における効果の方が大きいのではないかということです。
もちろん、論文を読むだけでは分かりにくいことを発表で確認したり、質問をしたりすることができるのは学会の現場だけでしょう。
しかし、理解をすることだけに意識を向けるのであれば、論文そのものを詳しく読み解くことでもかなりの効果があるはずです。
特に学生の場合、やはりまだ予備知識が不足している場合や、言語の壁などの理由から、学会の発表だけで理解をすることは正直難しいのだと感じます。
それよりもむしろ、本や論文で得た手法を、別の国での研究でも使っているという当たり前の事実を、しっかりその目で見ることが大事ではないでしょうか。
また、実際の研究のレベルを肌で感じることなどを通じ、自分の中の気持ちを鼓舞させることに意味があるのではないでしょうか。
少なくとも私は、「本当にこの手法って使われているんだ」「英語圏でない人の英語での発表って、こんな風になるのか」などの感想を抱いていました。
そこからだんだん、ワクワクした気持ちになっていけたことが、最も良かったと思います。
最後に、読者の中で国際学会に行くかもしれない学生の方に対して、コメントをしたいと思います。
英語に関してですが、私は苦手でした。
しかし、発表に関しては話す内容を事前に考えておけるので、しっかりと準備を行えば何とかなると思います。
質疑は、文法がなっていなくても、とりあえず何か言い返せば大丈夫だと思います。
実際参加してみて実感したのは、やはり聴衆側も研究を行っている方なので、頭の良い方ばかりであるので、質問への回答が英語的におかしくても、かなりの部分を察してくれます。
黙ってしまうとそこで終わってしまう一方で、例えば名詞の羅列だけででも返答すれば、それだけでしっかりとした議論になります。
また、意外と学生は多く参加しています。
学生限定のレセプションがあったのですが、会場にはかなりの人がいました。
そして、やはり海外というのは、そもそも行くだけで刺激を得られるものです。
観光とは少し違った、外国の方々からの刺激というのは、それだけでいい経験であったと私は感じています。
研究にも、研究以外にも、生きてくるような刺激は得ることができると思います。
国際学会に参加されるのであれば、ぜひ、様々な刺激を得てきてください。
とりとめのない文章ですが、以上で2010年開催のASME参加報告とさせていただきます。
写真提供:東京大学 古賀 毅
カンファレンス AWARD ランチ(CIE)
カンファレンスディナー
カンファレンスコーヒーブレーク
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