設計工学・システム部門講演会  オーガナイズド・セッション報告

2009年度の設計工学・システム部門講演会では,17のオーガナイズド・セッションと一般セッション,D&Sコンテストが実施されました.本ページでは,各セッションの座長の方に当日のセッションの様子を報告いただき,紹介します.

編集・ページ製作 D&S広報委員会

 

OS1 製品開発と設計方法論

オーガナイザー:藤田 喜久雄(大阪大学),発表件数:6件
開催日時:OS1-1 10月28日 15:00-16:00,OS1-2 10月28日 17:40-18:40
座長:OS1-1 座長:藤田 喜久雄(大阪大学),副座長:小林正和(豊田工業大学),
    OS1-2 座長:井上 全人(電気通信大学),副座長:藤田 喜久雄(大阪大学)

  • OS1-1 製品開発と設計方法論 I

    OS1-1「製品開発と設計方法論I」では,すりあわせ型製品開発のためのセットベース設計手法とエージェント技術による設計支援の考え方,多目的トレードオフ設計・ロバスト設計のための諸手法とリスク管理手法による統合的設計管理手法,その圧力インペラの振動設計への具体的な展開例,についての3件の発表が行われた.

藤田 喜久雄(大阪大学)

  • OS1-2 製品開発と設計方法論 II

    本セッションでは,時間的要因を含めた製品種別ごとの製品系列展開の様相分析とその具体的な開発事例による考察について,さらにその考察を受けて,投入可能な人あるいは物の資源制約を考慮した製品系列の最適設計法について,そして,日本企業が「ものづくり」の強みを生かしながらPLMシステムを使いこなすためのデジタルデータの取り扱い方に関する考察について,計3件の発表が行われた.活発な質疑応答が行なわれ,今後のさらなる展開が期待される非常に興味深い内容であった.

井上 全人(電気通信大学)

OS2 設計理論・方法論

オーガナイザー:松岡 由幸(慶應義塾大学),村上 存(東京大学),綿貫 啓一(埼玉大学),発表件数:6件
開催日時:OS2-1 10月29日 16:40-17:40,OS2-2 10月29日 17:50-18:50
座長:OS2-1 座長:綿貫 啓一(埼玉大学),副座長:氏家 良樹(慶應義塾大学),
    OS2-2 座長:村上 存(東京大学),副座長:松岡 由幸(慶應義塾大学)

  • OS2-1 設計理論・方法論I

    本セッションでは,工学的アプローチによるデザイン・イノベーションの構想,4次元形状モデリングに基づく動的対象の設計,最適可変域および最適多水準の決定問題に対するロバスト設計法に関する3件の研究発表が行われた.機能や性能の追求だけではなく,人々の感性や感情などの諸要因を考慮した「設計」と「デザイン」に関する理論や方法論の確立は重要である.形状や運動などが時間変化する動的対象物の設計法,製品の様々なばらつきに対してロバスト性を確保する設計法なども重要な課題である.これらの設計理論・方法論に関する興味深い講演が行われ,参加者との活発な議論がなされた.新たな価値創生に向けた新たな設計理論・方法論も待望されており,この分野の今後の進展が期待される.

綿貫 啓一(埼玉大学)

  • OS2-2 設計理論・方法論II

    本セッションでは,まず2318「多空間デザインモデルに基づくデザイン推論の枠組み」で多空間デザインモデルと,その中でデザイン行為がどのように説明できるかの枠組みが説明された.次に2319「多空間デザインモデルを視点としたデザインにおける場と感性」で,デザイン・設計において重要なヒトの感性と場の関係の例として,投影が形状の美しさ評価におよぼす影響に関する実験結果が示された.最後に2320「スケッチによる多空間デザイン法とその適用」で,多空間デザイン法にスケッチを導入することで,状態要素の抽出が容易となり,また異なる分野間で様々な情報共有が可能になるなど,多空間デザイン法の実践が容易になることが示された.以上3件の発表により,多空間デザインモデルの枠組みの提案から実践までの流れが示され,有意義なセッションであった.

村上 存(東京大学)

OS3 設計・デザイン論

オーガナイザー:田浦 俊春(神戸大学),來村 徳信(大阪大学),柳澤 秀吉(東京大学),泉井 一浩(京都大学),発表件数:6件
開催日時:OS3-1 10月28日 15:00-16:00,OS3-2 10月28日 17:40-18:40
座長:OS3-1 座長:,來村 徳信(大阪大学),副座長:柳澤 秀吉(東京大学),
    OS3-2 座長:柳澤 秀吉(東京大学),副座長:泉井 一浩(京都大学)

  • OS3-1 設計・デザイン論I

    設計やデザインを幅広くとらえ,その本質を議論するという意図のもとでオーガナイズされており,本セッションはそのひとつとして3件の講演が行われた.具体的には,多義性(Polysemy)と仮想的な連想プロセスのモデルに基づいた創造的なデザインアイデアの生成法と評価法(講演番号1406),レベルセット法に基づくトポロジー最適化により使いやすさを考慮したユニバーサルデザインのメカニズムの最適設計と解析のフレームワーク(1407),カプセル内視鏡に関する自走などの運動機能や操縦などの制御方法の設計と実験(1408)について報告が行われた.このように,設計の一般的理論/方法論から領域における設計例まで,幅広い議論が行われた.

來村 徳信(大阪大学)

  • OS3-2 設計・デザイン論II

    本セッションでは,設計・デザイン論における機能のモデリングおよび分類に関する講演と討論が行われた.創造的設計のための自然言語処理による機能モデリングに関して機能の合成的な詳細化のためのシソーラスの提案,機能の分類視点組織化に関する考察,およびライフサイクルに注目した機能の生態論的モデルの提案の3件の講演があった.

柳澤 秀吉(東京大学)

OS4 デジタルエンジニアリング

オーガナイザー:鈴木 宏正(東京大学),前川 卓(横浜国立大学),発表件数:10件
開催日時:OS4-1 10月29日 14:50-16:10,OS4-2 10月29日 16:30-17:30,OS4-3 10月29日 17:50-18:50
座長:OS4-1 座長:前川 卓(横浜国立大学),副座長:鈴木 宏正(東京大学),
    OS4-2 座長:増田 宏(東京大学),副座長:前川 卓(横浜国立大学),
    OS4-3 座長:鈴木 宏正(東京大学),副座長:増田 宏(東京大学)

  • OS4-1 デジタルモックアップ

    本セッションでは,デジタルエンジニアリングに関連する発表が4件行われた.Mass-Springモデルによるワイヤ・ハーネス等の柔軟物の変形シミュレーションに関する研究,そしてモーフィング技術によるリブや穴等のフィーチャの追加・削除が可能なメッシュ変形技術の開発に関する研究報告があった.また,三角形メッシュのCAE板状メッシュモデルからソリッドモデルを構成する手法の開発,そして大型設備の現物モデリングを対象とした大規模点群に基づくインタラクティブな形状モデリングシステムの発表があり活発な質疑・応答が交わされた.

前川 卓(横浜国立大学)

  • OS4-2 自由曲面モデリング

    本セッションでは,3件の講演が行われ,離散的な点群に対して曲線や曲面を当てはめる手法が議論された.最初の発表では,Bスプラインを用いて補間する問題を扱い,続く2件は再分割曲面による補間を扱っている.いずれも高品質化,高速化のための計算上の工夫を示している.曲面当てはめは古くから研究されているテーマであるが,現物の点群計測が一般化してきたこともあり,近年でも活発に研究されている.発表された3件はいずれも高速化や高品質化について十分な有効性があることが示されている.この研究分野では,特異点処理や微分連続性の改善などの新しい成果も発表されている.今後,さらなる研究の進展を期待したい.

増田 宏(東京大学)

OS5 メカトロ設計

オーガナイザー:大富 浩一(東芝),発表件数:4件
開催日時:10月29日 14:50-16:10
座長:大富 浩一(東芝),副座長:古賀 毅(東京大学)

  • OS5 メカトロ設計

    近年の製品開発の特徴として,製品のメカトロ化が挙げられる.従来の機械の設計に加え,電子回路や組込みソフトといった複合領域にまたがる設計を,高度に組み合わせて製品開発を進める必要があり,そのための技術が求められている.このような背景を受け,本講演会では,今年初めて2つのセッション「メカトロ設計」および「モデル駆動型の製品システム開発」を設置した.メカトロ製品の実記レス検証や,エレベータの統合制御などの研究発表がなされ,大いに議論が盛り上がった.特に合計4件の発表のうち,3件までもが産業界からの発表であったことは,本領域の必要性を裏付けているものと考えられる.

古賀 毅(東京大学)

OS6 モデル駆動型の製品システム開発

オーガナイザー:古賀 毅(東京大学),青山 和浩(東京大学),発表件数:5件
開催日時:10月29日 16:30-18:10
座長:古賀 毅(東京大学),青山 和浩(東京大学),副座長:大富 浩一(東芝)

  • OS6 モデル駆動型の製品システム開発

    本セッションでは,「OS5メカトロ設計」の手法に該当する,モデル駆動型開発に重点を置いた研究発表が行われた.自動車,電機機器などに代表されるメカトロ製品の開発では,実際の製品を製作する前に,計算機上で設計の妥当性を検証するモデル駆動型開発,あるいはモデルベース開発が指向されている.複雑化するメカトロ製品の開発管理という困難な課題に貢献する,要求情報の定義と表現手法や,論理的な設計変更の影響把握手法に関して,研究発表がなされた.また,次世代の半導体デバイスの設計・開発を成功に導くための,システム設計・統合手法が提案された.合計5件の発表のうち,4件が産業界からの発表であり,今後の発展が多いに期待されるものであった.

古賀 毅(東京大学)

OS7 設計と最適化

オーガナイザー:山崎 光悦(金沢大学),西脇 眞二(京都大学),下田 昌利(湘南工科大学),発表件数:15件
開催日時:OS7-1 10月28日 13:00-14:20,OS7-2 10月28日 14:40-16:00,OS7-3 10月28日 17:40-18:40,OS7-4 10月29日 17:30-18:50
座長:OS7-1 座長:山崎 光悦(金沢大学),副座長:中村 正行(信州大学),
    OS7-2 座長:下田 昌利(湘南工科大学),副座長:山崎 光悦(金沢大学),
    OS7-3 座長:中村 正行(信州大学),副座長:下田 昌利(湘南工科大学),
    OS7-4 座長:西脇 眞二(京都大学),副座長:泉井 一浩(京都大学)

  • OS7-1 設計と最適化I -構造最適化-

    本セッションでは,随伴変数法による感度解析,力法に基礎をおくビード・ユルゲート板殻構造の創成法,所望の変位場を達成する形状設計法およびレベルセット法による形態設計法,さらには光学異方性多層膜の構造設計法についての発表があった.いずれもチャレンジングな研究課題で,討論でも設計の基本にかかわる各種の議論があった.

山崎 光悦(金沢大学)

  • OS7-2 設計と最適化II -形状・トポロジー最適化-

    4件の発表の内,2件は種々の設計問題への応用が広まっているレベルセット法を用いたトポロジー最適化に関する発表であった.1つは熱アクチュエーターへの適用に関するもので,もう1つは熱拡散問題への適用に関する内容であった.特に,前者はMEMSへの応用が期待される興味深い研究であった.後者は信頼性を考慮した点に特徴があり,信頼性指標の有無が結果に与える影響が示されていた.加えて,熱磁気モータの加熱冷却システムの最適設計に関する発表と積層構造体の熱応力緩和を目的とした最適化に関する発表が行われた.いずれも時間を超過するほどの質疑が行われ,活発なセッションとなった.

下田 昌利(湘南工科大学(現 豊田工業大学))

  • OS7-3 設計と最適化III -衝撃・加工-

    本セッションでは3件の研究発表が行われた.いずれも複雑な現象の詳細な解析に基づき形状やプロセスの最適化を行っている.プレス成形において,熱流体・伝熱・構造の連成解析を実施し,金型の温度ムラと最大相当応力が最小となる最適な水冷管の配置や半径を検討した研究では,実験計画法に基づき応答曲面モデルを作成して遺伝的アルゴリズムを適用して最適解を求めた.金属材料の強度・靱性の向上のたの結晶粒微細化プロセスを最適化した研究では,スクエア/フォーバル圧延における断面形状と圧延パス条件に対するひずみ分布の蓄積を三次元陽解法有限要素解析を用いて詳細に解析し,少ないパス回数で大きなひずみを導入できる条件を求めた.アルミ缶の軽量化,薄肉化を目的とした塑性加工過程の最適化に関する研究では,まず,動的陽解法を用いた解析に基づき座屈変形を効率的に利用した新しいエンドシェル成形法を提案した.次に,成形条件と金型形状を設計変数とし,エンドシェルの板厚分布における最小板厚を目的関数に,仕様に対する寸法許容範囲の制約条件のもとで,実験計画法に基づく応答曲面法を用いて,最小板厚を最大化する最適な成形条件を求めた.

中村 正行(信州大学)

  • OS7-4 設計と最適化IV -空力特性・積層構造-

    本セッションでは,衝突特性,空力特性,中空材を対象とした,解析および設計手法に関する報告があった.空力特性を対象とした最適設計を行う場合,計算機による解析に膨大な時間を消費してしまう問題がある.このため,メタモデリング法を用いた代理モデルを構築し,最適解を求める方法が提案された.また,中空材を簡易に解析するための代理モデルを構築する方法も提案された.ただし,この方法では,中空材を用いたシステムとしての挙動を代理モデルにより表現するのではなく,基本的な中空材の挙動特性を長方形のACM要素を用いて表現するために,ACMの面外等価剛性を表すマトリックスをメタモデリング法で近似的に求めておくという点で興味深い研究であった.これらの研究に対して,鉄道車両の衝突性能についての最適設計問題では,メタモデリングの方法がうまく適用できないという報告があった.このような問題では,CAD,CAE ,最適化を統合化し,自動的に最適解を求めるフレームワークを構築することが重要となる.今回の報告では,車両構造を二重の薄板構造にすることで,衝突性能を大幅に向上させることができることをその最適設計環境により確認しており,最適設計の有用性の高さが示された.

泉井 一浩(京都大学)

OS8 近似最適化

オーガナイザー:荒川 雅生(香川大学),北山 哲士(金沢大学),発表件数:8件
開催日時:OS8-1 10月29日 9:00-10:20,OS8-2 10月29日 10:40-12:00
座長:OS8-1 座長:荒川 雅生(香川大学),副座長:酒井 忍(金沢大学),
    OS8-2 座長:酒井 忍(金沢大学),副座長:北山 哲士(金沢大学)

  • OS8-2 近似最適化II

    本セッションでは,設計と最適化に関連した4件の講演があった.その内容は,製薬設計や食品設計の設計支援にマルチスプライン応答曲面法を利用した発表,チーモロジーを用いた事例の発表,畳込みRBFの半径決定法に関する発表,プル型スケジューリングの実践に関する発表である.特に,機械設計分野以外の最適設計問題に応答曲面法を適応する手法の提案,設計・開発の作業チームの編成方法にチーモロジーを用いた最適化の事例の発表は,非常に興味深いものがあった.いずれの発表も最適設計に関する幅広い観点から重要な課題の解決に取り組んでおり,今後の発展や成果が期待されるものである.

酒井 忍(金沢大学)

OS9 システム最適化

オーガナイザー:西脇 眞二(京都大学),吉村 允孝(京都大学),発表件数:5件
開催日時:10月29日 10:40-12:20
座長:小林 正和(豊田工業大学),副座長:西脇 眞二(京都大学)

  • OS9 システム最適化

    「OS9 システム最適化」では5件の発表があり,それぞれ階層化された構造に対しての配置最適化の研究,単純化モデルを用いた薄肉はりの衝突性能設計支援システムの研究,小型人工衛星の構造最適化に関する研究,2工程HFS問題における効率的なスケジューリングアルゴリズム開発のための基礎的検討,道路合流部の交通渋滞緩和シミュレーションの研究と非常に幅広い研究内容が発表された.私個人としては,2007年度の部門講演会より注目している階層配置最適化が,本発表では,要素間の位置関係や距離,全体空間における要素の位置などを制約として扱えるように拡張され,より実用性を増した点に興味を覚えた.

小林 正和(豊田工業大学)

OS10 設計における知識マネジメント・情報共有

オーガナイザー:村上 存(東京大学),青山 和浩(東京大学),綿貫 啓一(埼玉大学),発表件数:11件
開催日時:OS10-1 10月28日 13:00-14:20,OS10-2 10月28日 14:40-16:00,OS10-2 10月28日 17:40-18:40
座長:OS10-1 座長:綿貫 啓一(埼玉大学),副座長:青山 和浩(東京大学),
    OS10-2 座長:青山 和浩(東京大学),副座長:綿貫 啓一(埼玉大学),
    OS10-3 座長:村上 存(東京大学),副座長:古賀 毅(東京大学)

  • OS10-1 設計における知識マネジメント・情報共有I

    本セッションでは,内省的設計プロセス支援のための形状操作の獲得と管理,設計情報・設計意図統合型CAD,多様な顧客価値を考慮したスケジューリング支援システム,議論に基づく設計意図表現に向けた設計事例分析に関する4件の研究発表が行われた.設計者は仮説生成や検証をし,それらを通じて設計知識の獲得をする.また,協調設計では,多くの設計・開発者により同時進行的に設計が進められ,設計情報の共有が重要となってくる.設計においては,多様な顧客価値を考慮し,多様な側面から総合的に捉えて問題解決・意思決定することが必要である.それらのプロセスを支援するシステムなどについて興味深い講演が行われ,参加者との活発な議論がなされた.

綿貫 啓一(埼玉大学)

  • OS10-2 設計における知識マネジメント・情報共有II

    設計における知識のマネジメントは実現が待望されるテーマである.モデリング知識のフレームワーク,故障木解析の知識マネジメントから,データ包絡分析法や事象関連性分析手法などの興味あるデータ分析手法が提案された.4件の講演からなる本セッションの内容を大別すると,設計知識をマネジメントするために,設計情報を記述するための手法,およびそのフレームワークに関する研究と,設計情報から分析手法を駆使して有用な設計知識を獲得するための手法に関する研究に整理できる.設計では,多種多様な情報が扱われ,それらの情報を如何に整理して記述する仕組みを構築することも重要であり,また,それらの情報から得られる知識は何なのかが議論された.

青山 和浩(東京大学)

  • OS10-3 設計における知識マネジメント・情報共有III

    「設計における知識マネジメント・情報共有」の3つのサブセッションのうち本サブセッションでは,ものづくりに近い研究発表3件がなされた.1109「固体酸化物燃料電池の材料データベース構築とプロセス統合設計支援システムの試作」では,オントロジー工学アプローチにより,固体酸化物燃料電池を対象とした材料データベース構築および,複合的なプロセスの俯瞰的把握を可能とする手法,それを用いた通常の機能発揮プロセスの理解や故障診断の支援が報告された.1110「溶接作業性評価のための知識表現モデルの検討」では,著者らが提案するiSmartModel (interactive Smart Model)を拡張し,部品の接合状態を表す仮想的な半実体ノードを導入することによる,溶接対象構造のモデル化とそれを用いた溶接作業性評価手法が報告された.1111「VR環境下における鋳型合せの繰り返し訓練に伴う技能の習熟過程」では,3次元バーチャルリアリ ティおよび力覚提示装置を用いて,鋳造業における型合せ作業を対象に,身体的アプローチによる知識(技能)の伝達・共有(習熟)に関する実験結果が報告された.

村上 存(東京大学)

OS11 設計プロセスのモデリングとマネジメント

オーガナイザー:野間口 大(大阪大学),青山 和浩(東京大学),発表件数:9件
開催日時:OS11-1 10月30日 8:40-10:20,OS11-2 10月30日 10:40-12:00
座長:OS11-1 座長:青山 和浩(東京大学),副座長:野間口 大(大阪大学),
    OS11-2 座長:野間口 大(大阪大学),副座長:古賀 毅(東京大学)

  • OS11-1 設計プロセスのモデリングとマネジメントI

    設計を効率的に展開するためには設計プロセスのマネジメントが重要な鍵を握ることは論を俟たない.本セッションでは,設計プロセスのモデリングから,プロセスのシミュレーション手法,さらには,プロセスを適切にガイドすることによる創造的活動を支援する手法などが報告された.設計プロセスの存在は十分に理解しているものの,設計プロセス自体をその意味も含めて明確に認識するのは大変に難しい.講演された発表では,様々な仮説が提案され,設計プロセスのモデル化と評価,シミュレーションなどが精力的に議論された.これらの研究成果が,設計行為の質的向上に寄与することが待望される.

青山 和浩(東京大学)

  • OS11-2 設計理論・方法論II

    本セッションでは4件の講演があった.東京大学の上野氏および吉江氏からは,品質機能展開(QFD)を応用したサプライチェーン改善の定量的支援,および製品と組織の協調的モデリングに基づく複雑なプロジェクトのマネジメントに関する研究が発表された.豊田工大の小林氏からは,設計プロセスにおけるコラボレーションにおいて,設計者間に存在する個人差を参加者に提示して設計者の創造性をさらに引き出すための個人差分析手法の発表があった.日大の鈴木氏からは,成層圏プラットフォームのメンテナンス用昇降ロボットのプロトタイプモデル設計についての発表があった.会場には大学の研究者だけでなく企業の関係者も多く,活発な質疑応答が行われ,このテーマに対する関心の高さが伺えた.

野間口 大(大阪大学)

OS12 ライフサイクル設計とサービス工学

オーガナイザー:梅田 靖(大阪大学),下村 芳樹(首都大学東京),発表件数:20件
開催日時:OS12-1 10月28日 13:00-14:40,OS12-2 10月29日 9:00-10:40,OS12-3 10月29日 10:00-12:20,OS12-4 10月30日 8:40-10:00,OS12-5 10月30日 10:00-10:40
座長:OS12-1 座長:來村 徳信(大阪大学),副座長:柳澤 秀吉(東京大学),
    OS12-2 座長:梅田 靖(大阪大学),副座長:下村 芳樹(首都大学東京),
    OS12-3 座長:下村 芳樹(首都大学東京),副座長:三島 望(産業技術総合研究所),
    OS12-4 座長:千葉 龍介(首都大学東京),副座長:近藤 伸亮(産業技術総合研究所),
    OS12-5 座長:近藤 伸亮(産業技術総合研究所),副座長:福重 真一(大阪大学)

  • OS12-1 ライフサイクル設計とサービス工学I:サービス設計と価値表現

    本セッションではサービス工学に関する5件の講演が行われ,顧客にとってのサービスの価値に注目してサービスの設計/改良/解析を行う手法やモデルが提案された.具体的には,顧客価値・非金銭的コストとサービス提供者の業務(タスク)の関係性に基づいて改善すべき業務を特定する手法(講演番号1401),個々のタスクが顧客価値に寄与する度合いを狩野モデルと品質機能展開に基づいて解析する手法(1402),企業間サービスにおいて(個人消費者とは異なる)企業や組織の顧客の要求を分析・抽出する手法とツール(1403), サービスを確率的なマルチエージェントシステムとして捉えて場面遷移ネットを用いてシミュレーションする手法(1404),顧客との長期的関係のためのサービスライフサイクルの定義と顧客要求の抽出手順(1405),が提案され,議論が行われた.

來村 徳信(大阪大学)

  • OS12-3 ライフサイクル設計とサービス工学III:LCDの課題設定

    本セッションでは,「LCDの課題設定」というタイトルのもと計4件の講演を迎え,持続性社会実現のための具体的方策について,(1)シナリオ記述方法,(2)システムのモジュール構成法,(3)環境税設計法,(4)エコビジネス設計支援法という多様な観点に基づく提案,さらにそれらの内容に基づく活発な議論が行なわれた.具体的には,(1)および(4)においては,今後のエコビジネス設計支援をシナリオの記述支援と問題解決法のライブラリ化というそれぞれの異なる手段により実現する可能性が提案され,今後のエコビジネス活性化のための可能性が示された.(2)および(3)においては,社会におけるシステムが排出する環境負荷を低減するための手段として,システムをモジュール交換可能とすることで事実上の物理/機能寿命の延長を達成する方法,環境税の課税方法を最適に設計することにより環境配慮型製品の社会における普及を促進することのそれぞれの可能性が示された.総評として,今後の持続性社会実現に向けてはこれまでの知見を踏まえつつも,よりビジネス的,社会科学的観点な取り組みが必要であり,そのために領域横断的な研究の一層の活性化が必要であることを参加者全員が再認識するに至った.また本セッションにおける議論が大変に有意義であったとの多数のコメント/感想が参加者より寄せられた.

下村 芳樹(首都大学東京)

  • OS12-4 ライフサイクル設計とサービス工学IV:LCDの方法論

    当該セッションでは,ほぼ会場一杯の参加者と共に,ライフサイクル設計に関する講演が4件行われ,ツールおよび方法論に関する発表および議論が中心となった.非常に活発に議論が行われ,技術的課題を残すものの,その必要性・有効性については,参加者の異議のないところであった.計算機上におけるライフサイクルの設計・評価を自動化するため様々なツール・方法論が提案され,質疑においてより多面的な検討事項や,詳細な有効範囲について議論された.当該分野はフレームワークができつつあるものの,より多角的な研究の必要性を考えさせるものであり,当該セッションが当該分野の発表・議論の場として極めて有効であったと言える.

千葉 龍介(首都大学東京)

  • OS12-5 ライフサイクル設計とサービス工学V:ライフサイクルマネジメント

    ライフサイクル設計に関連して,ネットワークエージェント,RFID等を用いて効率的に部品リユースを実現することを目的とする2件の研究発表が行われた.部品リユースは,ライフサイクル全体を通じて,低コスト,低環境負荷でサービスを提供するために極めて有効な手段であり,これを実現するためには,部品の状態管理,ユーザの選好把握などが欠かせない.これらを実現するためのネットワークエージェント,RFID技術の適用の仕方や産業応用への道筋などについて活発な議論が行われた.

近藤 伸亮(産業技術総合研究所)

OS13 創発性と多様性の設計

オーガナイザー:松岡 由幸(慶應義塾大学),宮田 悟志(エンジニアス・ジャパン),竹村 研治郎(慶應義塾大学),氏家 良樹(慶應義塾大学),発表件数:5件
開催日時:OS13-1 10月30日 10:20-11:00,OS13-2 10月30日 11:00-12:00
座長:OS13-1 座長:氏家良樹(慶應義塾大学),副座長:長坂 一郎(神戸大学),
    OS13-2 座長:宮田悟志(エンジニアス・ジャパン),副座長:氏家良樹(慶應義塾大学)

  • OS13 創発性と多様性の設計

    本セッション:「創発性と多様性の設計」におきましては,5名の講演者の方々から,形態の創発における構造要素の提案とその適用,創発的計算手法と発明的問題解決手法の融合による設計解導出支援法の提案とその適用,創発の概念に基づく多様解導出システムにおける繊維状形状生成のパラメータ提案とその適用,創発の概念に基づく多様解導出システムの多様な質点系挙動生成への応用,アレグザンダーのデザイン理論における課題の明確化と多様性のデザインに向けた指針の提案に関する話題をご提供いただきました.会場には15名ほどの聴講者の方にお越しいただき,創発に基づく設計支援法の使用者として想定する設計者の特性,同支援法によって得られた解の解釈方法,同支援方法の適用対象(形態,挙動,マテリアルデザインへの応用可能性),などを中心に活発な議論が行われました.

宮田悟志(エンジニアス・ジャパン (現 ダッソー・システムズ・シムリア)),氏家良樹(慶應義塾大学)

OS14 感性と設計

 

オーガナイザー:大富 浩一(東芝),村上 存(東京大学),柳澤 秀吉(東京大学),山崎 美稀(日立製作所),発表件数:7件
開催日時:OS12-1 9月26日 12:50-14:10,OS12-2 9月26日 14:20-16:00
座長:OS14-1 座長:柳澤 秀吉(東京大学),副座長:大富 浩一(東芝),
    OS14-2 座長:大富 浩一(東芝),副座長:柳澤 秀吉(東京大学)

  • OS14-1 感性と設計I

    本セッションでは,主にユーザビリティの評価法に関する講演と討論が行われた.開けやすいアルミボトルの口径寸法の評価法,持ちやすさ・開けやすさの評価法,開けやすさの評価関数の提案の3件の講演と討論があった.

柳澤 秀吉(東京大学)

  • OS14-2 感性と設計II

    本セッションでは,音質,色彩,快適性など多様なモダリティに関する感性設計に関する研究の発表と討論が行われた.複合感覚の感性品質における調和性分析,色度図と逆解析を用いた光学多層膜付加窓ガラスの色彩選択,生理指標の時系列分析に基づく入浴行動時の快適性評価,クラシックギターの音質についての4件の講演が行われた.

柳澤 秀吉(東京大学)

OS15 感情と設計

オーガナイザー:福田 収一(スタンフォード大学),発表件数:2件
開催日時:10月29日 14:50-15:50
座長:伊藤 宏幸(ダイキン工業),副座長:福田 収一(スタンフォード大学)

  • OS15 感情と設計

    現段階では萌芽期にあると考えられる本セッションは,「ブランド価値創出」と「経験価値」に関する2件の講演とミニ討論により構成された.PCとプロジェクタの不適合により,討論に十分な時間をとることができなかったが,「感情」がどの程度説明できて,どのように設計に応用されるのか,聴講者からの建設的な示唆を織り込みつつ本セッションの学際的な性質を踏まえ,関連の深いいくつかのキーワードが,基礎的領域から応用領域にわたり以下のように分類・総括された.
    1) 脳科学(アイマーカー,fMRI(fNIR), ミラー・ニューロン, 高次脳機能,利他的行動)
    2) 行動経済学(不完全情報,限定合理性)
    3) オープン評価(ブランドの(/と)設計<顧客との関係構築>→Enterprise Architecture,比較サイト,風評,ダイナミック・プライシング)
    4) プロダクト/プロセス価値(技術者による真の価値創成(/出)とは,運用と経験,物語,創造的顧客,人間<感情,欲求>,ダイナミックなインタラクション,Win-Win,保守による多様化,アンビエント・インテリジェンス)

伊藤 宏幸(ダイキン工業)

OS16 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティ

オーガナイザー:渡辺 富夫(岡山県立大学),村上 存(東京大学),小木 哲朗(慶應義塾大学),発表件数:7件
開催日時:OS16-1 10月29日 9:00-10:20,OS16-2 10月29日 10:40-11:40
座長:OS16-1 座長:大久保 雅史(同志社大学),副座長:村上 存(東京大学),
    OS10-2 座長:小木 哲朗(慶應義塾大学),副座長:大久保 雅史(同志社大学)

  • OS16-1 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティI

    本セッションでは,合計4件の発表があった.そのうち2件は高齢者の生活を支援する システムで,1件は高齢者のために物理的に歩行を支援する歩行補助機の提案であ り,もう1件は,入力デバイスとして杖を利用するインタフェースの提案であった, 他の2件のうち1件は拡張現実感技術を用いた歯科治療支援の提案,最後の1件は4K ディスプレイを利用した複数ユーザが情報共有するための有限要素法解析のGUIの提 案であった.どの発表も非常に興味深く,活発な議論がなされた.

大久保 雅史(同志社大学)

OS17 設計教育

オーガナイザー:福田 収一(スタンフォード大学),発表件数:4件
開催日時:10月29日 16:00-17:20
座長:福田 収一(スタンフォード大学),副座長:柳澤 秀吉(東京大学)

  • OS17 設計教育

    本セッションでは,設計教育における多様な観点からの講演と議論が行われた.具体的には,バーチャルトレーニングとOJTを融合した旋盤加工技能伝承に関する研究,高専におけるデジタルエンジニアリングを導入した設計基礎教育の事例,設計製図教育を支援する支援プログラムの開発事例,発展途上国支援における国際比較に基づいた発展途上国を市場とした設計教育の必要性の4件の講演があり,活発な議論が交わされた.

柳澤 秀吉(東京大学)

GS1 一般セッション

オーガナイザー:泉井 一浩(京都大学),古賀 毅(東京大学),発表件数:14件
開催日時:GS1-1 10月29日 9:00-10:20,GS1-2 10月29日 14:50-16:30,GS1-3 10月28日 13:00-14:40
座長:GS1-1 座長:古賀 毅(東京大学),副座長:森永 英二(大阪大学),
    GS1-2 座長:三島 望(産業技術総合研究所),副座長:近藤 伸亮(産業技術総合研究所),
    GS1-3 座長:泉井 一浩(京都大学),副座長:末吉 敏恭(琉球大学)

  • GS1-1 一般セッションI

    一般セッションでは,工場設備メンテナンスにおける不具合情報の共有と活用,歯車機構の自動設計,製造技術のサステナビリティ評価,高速度飛翔体の通信情報におけるノイズ比率低減という,広範な範囲における研究発表が行われた.テーマを特定しない一般セッションのため,萌芽的な視点も多く議論され,今後が非常に期待されるテーマが複数発表された.例えばサステナブル製造などというテーマは,容易に解決できない難問であり,今後セッション化して議論していく必要性があるのではないかと感じられた.

古賀 毅(東京大学)

  • GS1-2 一般セッションII

    本セッションにおいては,計5件の講演があったが,うち4件は開催地に近い琉球大学から,うち3件は遺伝的アルゴリズムを利用した制御系の設計に関する講演であった.残る2件のうち,1件は疲労亀裂の延伸防止に関する研究,1件は太陽熱集熱器の熱効率改善に関するものであった.そのため,GAを応用した制御系の設計については集中的かつ活発に,関連性のある議論を行うことができた.一方,この3件と,他の2件の講演者,聴講者の間に,分野横断的な議論はなかった.一般セッションという性質上,やむを得ない面もあるが,広がりのある議論により,新たな発想を得るためにも,セッションの構成にも一層の工夫があると良いように思う.

三島 望(産業技術総合研究所)

  • GS1-2 一般セッションIII

    本セッションでは,一般セッションとして募集した講演の中から,構造設計のための力学的な理論に基づいた解析法と評価法に関する5つの講演が行われた.まず,金属多結晶のひずみ挙動を画像処理により計算法の提案と,この計算に基づく黄銅在の不均一変形挙動を評価する方法が示された.次に境界要素法を用いた異種材料の接合部の弾性解析法が提案された.有限要素法を用いるよりも大幅に計算効率を向上できる評価法であることが示された.また,アルミ材の塑性絞り加工の解析を行うための,応力増分方向に依存する塑性構成式を考慮した有限要素解析法を示された.引き続いて,接触圧力問題を解析する場合等で頻繁に利用される楕円方程式を簡単な数列の極限で精度よく求める方法を提案している.最後に,近年配管の安全性を向上させるために用いられている二重円管について,その座屈特性を評価するための解析法が提案された.以上のように,構造設計の基礎となる力学的解析手法が近年ますます高度化していることが大いに感じられたセッションであった.

泉井 一浩(京都大学)

DC0 D&Sコンテスト

オーガナイザー:青山 和浩(東京大学),発表件数:7件
開催日時:10月29日 10:40-11:29(口頭発表)およびポスター
口頭発表座長:青山 和浩(東京大学),副座長:古賀 毅(東京大学)

  • DC0 D&Sコンテスト

    今回のコンテストの企画は,沖縄という地での開催ということもあり,応募件数が非常に心配であった.しかしながら,多くの方々に本企画の趣旨のご理解とご協力を賜り,7件の魅力的な応募を得ることができた.これまでと同様に,大学での設計演習を話題とした内容から,産学連携研究の内容まで様々な比較的に具体的な研究内容が発表された.この場を拝借し,オーガナイザーとしてご協力を戴いた方々に深く御礼を申し上げたい.
    参加者による投票結果を集計し優秀発表を選出するのは,甲乙つけ難く,誠に大変であったが,海上技術安全研究所の松尾宏平氏による「船舶の曲り外板製造を支援する新しい外板展開システムの開発」が優秀ポスター賞として選考された.この研究は,実際に造船所の業務として利用されている完成度が高い内容であったことがコンテストの趣旨として象徴的であった.

青山 和浩(東京大学)

第20回設計工学・システム部門講演会は2010年10月27日~29日に(独)産業技術総合研究所 臨海副都心センター(東京都江東区)にて開催されます.この講演会でも,第19回部門講演会と同様のオーガナイズド・セッションが企画されると思われます.ご興味を持たれた方は是非発表者として,または聴講者として奮ってご参加下さい.

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