The 16th CIRP International Conference on Life Cycle Engineering (LCE 2009) は,エジプト・カイロのマリオットホテルにおいて5/3~6の4日間の日程で開催された.LCE 2009では,“Life Cycle Engineering in the Sustainability Age”というテーマのもとに,「エコデザインとエコイノベーション」,「ライフサイクルアセスメント」,「持続可能なビジネスモデル」,「持続可能な生産・製造」を含む,ライフサイクルエンジニアリングに関する幅広いトピックについて議論がなされた.この会議では,69件の一般講演と12件の基調講演,併せて81件の講演があった.また,参加者は26カ国から延べ96名であった.ちょうど新型インフルエンザが世界的に流行し始めた時期であったが,その影響もなく会議は盛況に行われた.一方で,会期がゴールデンウィーク期間中であったためか日本からの参加者は3名にとどまり,この点ではやや寂しい印象を受けた.
基調講演 (図1参照) としては4つのセッションが企画された.この中で,Prof. Lanzaは生産システムにおいてリーン化手法 (例えば,カンバン方式) の効果を生産時間や生産性の点から定量的に評価するための手法を紹介した.また,Prof. Meierは企業が国際競争力を高めるためには製品だけを設計するのではなく,製品とサービスを統合化したシステムを顧客に提供することの必要性を示し,そのようなビジネスモデルを構築するための手順を提示した.これら2つのほかにも,リマニュファクチャリングのための設計,製品ライフサイクルマネジメントのコンセプトなどについての発表が行われた.
一般講演 (図2,3参照) では14のセッションが企画され,それぞれにおいて活発な質疑応答が行われた.発表件数をトピックごとに分類すると,(A) エコイノベーションとエコデザイン: 14件,(B) ライフサイクルアセスメント・工学・マネジメント: 13件,(C) 持続可能なビジネスモデル: 10件,(D) リユース・リマニュファクチャリング・リサイクル: 10件,(E) 持続可能な製造・生産: 12件,(F) カーボンフットプリント: 5件,(G) 持続可能な製造とメンテナンスシステム: 5件,であった.個人的な印象では,学術的なコンセプトや設計手法の提案に対して,サプライチェーンマネジメントを支援するためのツールの提案など,企業にとって実用的な手法を提案する発表が比較的多かったように感じた.
研究発表以外でも,コーヒーブレークや晩餐会 (図4,5参照) を通した参加者間の交流は活発であった.特に,開催地がカイロという土地柄,おなじみのピラミッドのほかにもモスク (図6参照) を訪れるといったオプショナルツアーが数多く用意されており,参加者間の交流を深めるための極めて貴重な機会となった.実際のところ,これらのツアーを楽しみにして会議に参加した研究者は多かったようである (もちろん著者を含む).
なお,次回のLCE 2010は2010年 5月19~21日に中国・安徽省で開催される予定である(http://lce2010.hfut.edu.cn/).LCE 2010の事務局を担当するDr. Huangによると,こちらのオプショナルツアーもLCE 2009に負けず劣らず充実しているとのことであり,要チェックである.
木下 裕介(大阪大学大学院)
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