(東京大学 鈴木 宏正)
第87期の部門長しております. 伊藤宏幸副部門長をはじめとして運営委員の皆さんと共に部門の発展に努力しますので,どうぞよろしくお願いいたします.
本部門の活動は,部門に置かれた各委員会の委員の方によって自律的かつ活発に進められております.我々運営委員会や総務委員会の最も重要な役割は,その活動の環境を整えることです.今年度は,そのような観点から,各委員会のミッションを明確化しその運営を効率化するように部門内規の改定を行いました.また,技術進歩の激しい中にあって,長期的に部門の舵取りを行うことが必要となり技術委員会を設置いたしました.さらに,今年度の企画として特記すべきことは,部門講演会が沖縄・読谷村で開催されることです.他にも多数の企画や事業が動いておりますが,その中で若手が大車輪で活動していることも申し上げておきます.
さて,製品のもつ価値は設計で創造され,製造で実現されるといわれますが,本部門の担当分野が製造業において重要な役割をもっていることは言うまでもありません.しかし,現状を見ると,産からの部門活動への参加は中々活性化しませんし,特に最近の講習会では集客に大苦戦をしています.部門の中の者が「本部門は重要性だ」と声高に言っても独りよがりなのかもしれません.未曾有の経済危機が製造業を直撃していることも事実ですが、こういう時こそ技術に対する厳しい選択が行われているはずだからです.部門では様々な努力を行って来てはいますが,我々のフィールドである設計の現場からの声を聞く機会をもっと増やし活動に反映させることが重要と考えています.
ここまでは産→学の視点ですが,逆に学→産の視点も考える必要があると思います.景気対策のお陰で業績回復の兆しが見えて来ていますが,本来求められているのは産業構造を変え,新しい産業を振興するような中長期的な取り組みです.大きく見ると,技術は学→産と流れて行きます.つまり学は技術の長期投資を行っていることになります.その意味で,どのような製品・サービスの実現を目指して研究を行うか,ということをよく考える必要があります.それは学の重要な責任です.正に皆さんが日々研究開発されていることが,将来の産業構造を決めるのだ,という認識をもつことが求められているように思います.
少しでもより社会に役立つ部門になるように議論を深めてまいりたいと思いますので,本部門の企画や活動への積極的なご参加をお願いいたします.最後に,長年に渡り本部門の担当をしていただいた遠藤貴子さんが,残念ながら事務局の異動で交代となりました.遠藤さんに対し感謝の意を表すと共に,交代された田中克さんには,今後しっかりとした運営サポートをお願いいたします.
(大阪大学 梅田 靖)
2009年3月をもちまして,設計工学・システム部門の第86期部門長を任期満了により無事退任致しました.部門長をやってみますと,諸事わからないことばかりで,何とか一年間乗り切ることができたのは,ひとえに部門登録者の皆様,特に運営委員の皆様と,事務局の遠藤さんのお陰です.改めてお礼申し上げます.
在任期間中,アドバイザリーボード,総務委員会の設立,講習会の活性化(私自身やったことは,アクティブな方に担当をお願いしただけでしたが・・・)など,達成できたことも多少はありましたが,できなかったことの方が多く,申し訳なく思っております.その一つは,産業界からの参画の拡大でした.そもそも,2008年秋のリーマンショックで何もかも吹き飛んでしまいました.というのは言い訳で,講習会等の活性化により産業界からより多くの方にお集まりいただけるようになりつつありますが,これは飽くまで「お客様」であって,部門講演会への参加による成果発表,学の研究に対する問題点の指摘,ニーズの提案,さらには運営委員会へのご参画などをより積極的に進めていかなければならないと考えます.これは,D&S部門だけではなく,どの部門,他学会も苦労している,簡単に答えが見つからない問題ではありますが,主たる研究対象が産業界の設計開発活動であるD&S部門は,常に模索していかなければならない課題だと考えております.その意味では,産業界の方々には,部門講演会,講習会,研究会,ホームページ,ニューズレターなどいずれのチャンネルでも結構ですから,D&S部門に接触していただければ幸いです.
第87期のD&S部門は,部門長の鈴木宏正先生 (東京大学)のもと,順調に動き出しています.本部門のますますの発展を祈念しますとともに,今後とも微力ながらそれに協力させていただきたいと思います.1年間ありがとうございました.
(ダイキン工業(株) 伊藤 宏幸)
このたび,運営委員の選挙により,第87期の副部門長にご選出頂きました.本稿執筆にあたり,改めて先達のメッセージを拝見しましたが,本部門の中核をなす学問体系に対する造詣の深さにおいて彼我の差は歴然としており,畏敬の念を禁じ得ません.また,久しく産業界からの就任が途絶えていた役職でもあり,負託の大きさに身の引き締まる思いです.なお,本年度より,「部門活動で取り上げる技術分野に関して,その適正化を図り新規発展分野の開拓を促進するための課題を中長期的な視点から部門長および運営委員会に対して答申する.」ことを目的とした技術委員会が新たに設置され,技術委員長には,副部門長が就任することとなりました.この職務におきましても,会員の皆様と部門の接点として様々なご意見を賜りながら.横断的な部門としてのご認識を得つつ,とりわけ産業界からも,より多くの会員の皆様に部門登録して頂くべく,そのメリットを明らかにしてまいりたいと考えております.
さて,これも広い意味ではマクロ経済をどのような「システム」と捉え,制度「設計」し,運用していくかという問題に関わりますが,バブル崩壊後の低金利誘導による円安が進むことで,輸出ドライブを伴いつつ国内の製造業は束の間の小春日和の状況でした.しかしながら,サブプライム問題発生以降,本年度後半においてやや薄日が差してきたものの,公的なインセンティブを差し引いた購買意欲は低いレベルのまま推移しており,かつ相対的な金利差縮小による円高基調により,依然,深刻な状況が続いております.
このような状況下では,差別化製品・サービスを積極的に市場投入するのが原則ですが,「モノ」よりは,「コト」に深く関係することの多い本部門においても,これをチャンスと捉え,講演会・講習会などの企画を通じて,産官学での議論を活発化したく考えております.学の先生方には,優秀な日本製品を支える基本的な所作である,現場での「造り込み」「使いこなし」という発展形態を織り込んだ懐の深い設計体系の構築やその発現系であるツールの提案をお願いしたく存じます.また,産の方々には,可能な限り具体的な課題を提示して頂くことをお願いしたく考えております.ここでは,相互のコミュニケーションを促進する目的で,本部門に関わる既存の概念やツールについて,これまでの「設計研究会」,「関西設計工学研究会」における議論を踏まえながら,例えば,その完全性,頑健性,発展性,実用性を,種々の観点から,協同でベンチマークすることを提案したいと思います.愚説を縷々述べてまいりましたが,鈴木部門長の下,微力ながら本部門の発展に貢献する所存ですので,一層のご支援,ご協力のほど宜しくお願い申し上げます.