特別講演会「最適設計-TOPOLOGY AND SHAPE OPTIMIZATIONS II」開催報告

開催日:2008年11月25日(火)
会場:早稲田大学 理工学術院 55号館
共催:非線形CAE協会
協力:アルテアエンジニアリング,くいんと

本特別講演会では,国内外の大学および産業界からトポロジー最適化と形状最 適化を中心にそれぞれの分野でご活躍されている講演者をお招きし,最適設計理 論の基礎から最新の研究動向や,産業界における具体的な実施例や取り組みなど をご紹介いただきました.

今回は,フランスEcole PolytechniqueからGregoire Allaire先生をお招きし, レベルセット法に基づく構造のトポロジー最適化に関する講演をいただきました. レベルセット法に基づく形状・トポロジー最適化法は,従来のトポロジー最適化 法では困難であった明確な境界表現を,レベルセット法を導入することで解決す る方法です.この方法は基本的には形状最適化に分類される方法ですが,トポロ ジカルデリバティブを導入することでトポロジーの変更をも可能とする方法であ り,実用面での展開が期待されています.本講演では,レベルセット法に基づく 物体境界の表現法と境界進展計算の原理,そして,形状微分の計算法など,理論 的な側面から詳細な解説を行っていただきました.

次に,名古屋大学の畔上秀幸先生より,「Consciousness of regularity for sensitivities in shape and topology optimization problems」というタイト ルで講演をいただきました.形状最適化やトポロジー最適化では,波打ち現象や, チェッカーボードパターンのような数学的不安定性がしばしば問題となってきま したが,これらを回避するための方法として,力法やH1勾配法の紹介があり,そ の理論的背景を詳しく講義いただきました.

続いて,京都大学の大崎純先生からは「Mathematical programming approaches to truss topology optimization」と題する講演をいただいきまし た.応力制約,振動数制約などの非常に複雑なトラスの最適化問題に対し,混合 整数計画法,半正定値計画法などの数理計画法を用いた解法と最適化結果が示し ていただきました.

以上の大学の研究者からの,主として理論面に重きを置いた研究動向の紹介に 続いて,講演会の後半には企業からお招きした講演者から,トポロジー最適化と 形状最適化の具体的な応用例を中心に講演を行っていただきました.まず,豊田 中央研究所の野村壮史様より,トポロジー最適化の電磁波問題への多数の応用事 例を,アルテアエンジニアリングの由渕稔様より,航空機部品に使用される複合 材の積層構造最適化の最新の手法と事例を,そして,くいんとの竹内謙善からは, 位相・形状最適化プログラムの多種多様な分野へ応用するための実装に関する話 題をご提供いただきました.これらの最新の応用事例を通して,トポロジー最適 化と形状最適化の技術分野としてのすそ野が大きく広がっていきつつあることが わかりました.

以上のように,理論から応用まで最適設計に関する幅広い話題を提供されまし た.2年前にも同様の企画を行ったところ,非常に大きな反響をいただきました が,その後2年の間に,トポロジー最適化と形状最適化は,理論・応用の両面に おいて技術的に大きな進展がありました.今回の講演会では,その最先端の成果 を見ることができることから,会場には会員33名,会員外16名,学生員5名の聴 講者が集まり,前回に引き続き大変な盛況となりました.

泉井 一浩(京都大学)

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