設計工学・システム部門講演会  オーガナイズド・セッション報告

2008年度の設計工学・システム部門講演会では,14のオーガナイズド・セッションと一般セッションが実施されました.本ページでは,各セッションの座長の方に当日のセッションの様子を報告いただき,紹介します.

編集・ページ製作 D&S広報委員会 委員長 妻屋  彰、幹事 古賀 毅

 

OS1 製品開発と設計方法論

オーガナイザー:藤田 喜久雄(大阪大学),発表件数:8件
開催日時:OS1-1 9月26日 13:00-14:20,OS1-2 9月26日 14:30-15:50
座長:OS1-1 藤田 喜久雄(大阪大学),OS1-2 青山 和浩(東京大学)

  • OS1-1 製品開発と設計方法論 I

    OS1-1「製品開発と設計方法論I」では,高機能化と振動抑制という相反する要請を両立させる製品開発についての具体的事例,長寿命製品のアップグレードシナリオを設計段階で考えるためのモジュール化設計手法,多様な顧客要求と製品ファミリーとの関係をファジー集合により処理する共通モジュールの設計法,モジュール化が伴う模倣可能性を知財管理の視点から戦略的に回避するための設計方法,についての4件の発表が行われた.

藤田 喜久雄(大阪大学)

OS2 設計における知識マネジメント・情報共有

オーガナイザー:村上 存(東京大学),青山 和浩(東京大学),綿貫 啓一(埼玉大学),発表件数:11件
開催日時:OS2-1 9月25日 10:40-12:00,OS2-2 9月25日 13:00-14:00,OS2-3 9月25日 14:10-15:30
座長:OS2-1 村上 存(東京大学),OS2-2 綿貫 啓一(埼玉大学),OS2-3 青山 和浩(東京大学)

  • OS2-1 設計における知識マネジメント・情報共有I

    本セッションでは4件の発表が行なわれた.「設計情報・設計意図統合型CADの研究」の第1報「次世代設計支援システムの必要機能に関する基礎的検討」では,ユーザが必要な情報を取り出すのではなくシステムが知識ベースを用いてユーザへのナビゲートや警告などの情報を提供するアクティブCADの構想が提案された.同第2報「挙動と形状を考慮した機構の分析」では,要求される挙動から機構の形状,構造を導出するシステムの構想が提案された.「人工物の機能概念・方式知識編纂技術と設計支援への応用」では,技術文献から機能的知識に相当する要素概念を抽出し,オントロジー工学の専門家や熟練者が編纂した上で機能的知識コンテンツを構築する研究が報告された.「機能語彙体系間のオントロジー的マッピングに基づく相互運用性」では,複数の機能語彙体系をオントロジー的アプローチにより対応付け,相互運用性などを向上する技術について報告がなされた.いずれも興味深いアプローチであり,設計の実問題への適用とそれによる有効性の検証が待たれる.

村上 存(東京大学)

OS3 設計プロセスのモデリングとマネジメント

オーガナイザー:青山 和浩(東京大学),野間口 大(大阪大学),発表件数:7件
開催日時:OS3-1 9月27日 13:00-14:20,OS3-2 9月27日 14:30-15:30
座長:OS3-1 青山 和浩(東京大学),OS3-2 野間口 大(大阪大学)

  • OS3-2 設計プロセスのモデリングとマネジメントII

    本セッションでは,設計プロセスのモデリングとマネジメントに関する3件の講演があった.東京大学の丹羽氏からは,設計業務のプロセスモデリングにおいて,グラフ構造分析とマトリックス分析を活用してモデルの論理的不整合を発見するための手法の研究,および設計業務の継続的プロセスマネジメントを支援するためのモデリング・シミュレーション環境の研究についての発表が行われた.東京大学の青山先生からは,プロジェクトマネジメントにおけるレビュー計画手法の研究に関する発表が行われた.会場には大学の研究者だけでなく企業の関係者も多く,活発な質疑応答が行われ,このテーマに対する関心の高さが伺えた.

野間口 大(大阪大学)

OS4 デジタルエンジニアリング

オーガナイザー:鈴木 宏正(東京大学),前川 卓(横浜国立大学),発表件数:10件
開催日時:OS4-1 9月27日 13:00-14:40,OS4-2 9月27日 14:50-16:30
座長:OS4-1 鈴木 宏正(東京大学),OS4-2 前川 卓(横浜国立大学)

  • OS4-1 デジタルエンジニアリングI

    本セッションの内容の一つは大学におけるCAD/CAM/CAEの研究・教育事例であり,もう一つはスキャンデータ処理に関するものである.前者では,プレス金型設計を対象とし,スプリングバックの評価をCAEと実験で比較しようとしている.後者では,測定点群やカメラ画像から,3次元メッシュを構成する問題について代表的な問題についての発表があった.一つは,膨大な点群からコンパクトな近似曲面を細分割曲面として生成する技術である.また,ビデオカメラを用いて簡便に生成された3次元メッシュの精度を向上させる方法や,複数のスキャンデータの位置合わせを効率よく行うための特徴点を使った初期位置を求める方法についての報告があった.

鈴木 宏正(東京大学)

  • OS4-2 デジタルエンジニアリングII

    製造業の製品開発では,コンピュータ支援による製品の設計(CAD),解析(CAE),形状のリバースエンジニアリング(RE),また内部構造を検討するためのシミュレーションソフトウェアであるデジタルモックアップ(DMU)など「デジタルエンジニアリング」で総称される技術を導入し,大幅なコスト削減を実現している.本セッションでは,デジタルエンジニアリングに関連する発表が5件行われた.CADの分野では,対数型美的曲線の意匠デザインへの応用,三角形メッシュクラスタリングによるソリッドモデルの再構成の2件,CAEの分野では,先行機種のメッシュからメッシュモーフィングにより新形状のメッシュを作成する技術の開発の発表があった.また大規模なCTデータから中立ボクセルを抽出するREの研究,そしてMass-Springモデルによるワイヤ・ハーネスの変形シミュレーションに関するDMUの研究報告があった.

前川 卓(横浜国立大学)

OS5 設計と最適化

オーガナイザー:山崎 光悦(金沢大学),西脇 眞二(京都大学),下田 昌利(湘南工科大学),発表件数:11件
開催日時:OS5-1 9月27日 9:10-10:30,OS5-2 9月27日 10:40-12:00,OS5-3 9月27日 13:00-14:00
座長:OS5-1 下田 昌利(湘南工科大学),OS5-2 鳥阪 綾子(早稲田大学)OS5-3 西脇 眞二(京都大学)

  • OS5-1 設計と最適化I (熱関係)

    熱関係の最適設計を対象とした4件の発表があった.2つはプラスチック射出成形時のソリやヒケの問題を解決するための最適な冷却配管配置を最適化する内容であった.もう1つはエンジンシリンダブロックの熱荷重による応力を低減するため,形状最適化手法を適用した内容であった.最後は熱磁気モータの効率にヨークの形状変更が寄与しており,その影響を検討した内容であった.

下田 昌利(湘南工科大学)

  • OS5-2 設計と最適化II (トポロジー最適化)

    トポロジー最適化に関する研究は最適化関連の国際会議で特別セッションがいくつも組まれるなど非常に話題性のある内容である.本セッションの内容は実に様々で,多層膜の配向を扱った光学異方性膜の分光特性解析に関する研究,レベルセット法に基づき,複雑な形状を創出するために必要な新しい解析手法の定式化とその適用事例,自動車の音圧レベル低減のための複数種の吸遮音材配置を扱った問題,さらには自動車のステアリングナックルを例に挙げてトポロジー最適化技術を現実の問題へ適用する際の設計者の主張と現場からの声との相違にまで及び,どの講演も非常に白熱した議論を伴い,質問の尽きない講演も多かった.まだ解析上の数値計算結果の比較検討にとどまっているが,今後,具体的な実用例が多く報告されることを期待したい.

鳥阪 綾子(早稲田大学)

  • OS5-3 設計と最適化III (形状最適化など)

    本セッションでは,形状最適化等に関連する3つの講演があった.一件目は,力法に基づくシェル構造の形状最適化の方法に関する発表,二件目は,無人車両の準最適走行経路の生成法に関する発表,三件目は,三次元構造問題において,FOAに基づいた解析を行うための新しい要素の開発に関する発表であった.それぞれの発表が,設計工学・システムという観点から大変重要な課題の解決に取り組まれており,その成果は,学術および産業界に大きく貢献できると感じた.

西脇 眞二(京都大学)

OS6 近似最適化

オーガナイザー:荒川 雅生(香川大学),北山 哲士(金沢大学),発表件数:8件
開催日時:OS6-1 9月26日 13:00-14:20,OS6-2 9月26日 14:30-15:50
座長:OS6-1 北山 哲士(金沢大学),OS6-2 荒川 雅生(香川大学)

  • OS6-1 近似最適化I

    近似最適化Ⅰでは,4件の講演が行われた.
    進化的計算手法の一つであるPSOによる多目的最適化に関する研究では,エージェントの考えを組み込むことにより,パレートフロントを的確に見つけるというものであり,興味深い.
    また,足裏アーチサポートに関する研究は多目的近似最適化の実践的な研究事例であり,構造最適化のみならず,様々な方面で多目的近似最適化が活用され始めていることをうかがわせるものであった.
    さらにRBFネットワークに関する研究報告は,学習領域と未学習領域の判定を行う方法が提示され,今後の発展が多いに期待されるものであった.

北山 哲士(金沢大学)

  • OS6-2 近似最適化II

    RBFネットワークの半径の設定や自己抑制項によるパターン分類や近似関数の性能の差や,目安となる半径式の提案に関する2件の研究発表があった.これは,少ないデータ点数からより正確なパターン分類を行うため,そして,より正確な近似式を求めるためのカギとなる部分の検討であり,非常に有意義であった.多目的最適設計におけるトレードオフ分析方法として満足化トレードオフ法を利用するにあたって,希望する希求水準を如何に簡易に求めるかに関する研究の発表が行われた.最終的な設計案を求めるには多目的最適化を利用してトレードオフ分析を行うことが必要であり,それを可能な限り自動化するための試みであり,その数学的な背景をきちんと追った研究であり,非常に有意義なものであった.

荒川 雅生(香川大学)

OS7 システム最適化

オーガナイザー:西脇 眞二(京都大学),吉村 充孝(京都大学),発表件数:6件
開催日時:OS7-1 9月27日 14:10-15:10,OS7-2 9月27日 15:20-16:20
座長:OS7-1 宮下 朋之(早稲田大学),OS7-2 小木曽 望(大阪府立大学)

  • OS7-1 システム最適化I

    本セッションでは,3件の発表があり,最適化手法を活用したトポロジー問題及びライフサイクル問題への活用が示され,活発な議論がなされた.特に信頼性指標の導入に基づく形態生成やセンサーの配置を加味した形態生成などの観点にて活発が議論となり,ライフサイクル指標の導入による最適化問題の定式化についても活発に議論された.

宮下 朋之(早稲田大学)

  • OS7-2 システム最適化II

    システム最適化に関する2番目のセッションとして,3件の講演発表があった.
    1件目は「階層的最適化手法による設計解のブレイクスルー」,2件目は「小型人工衛星の構造最適化に関する研究」,3件目は「市場ニーズを考慮した製品設計支援システムの構築」であった.本講演会最終日の最後のセッションであったにも関らず,活発な議論が行われた.

小木曽 望(大阪府立大学)

OS8 ビークルの最適設計

オーガナイザー:北村 充(広島大学),濱田 邦裕(広島大学),発表件数:8件
開催日時:OS8-1 9月25日 13:00-14:20,OS8-2 9月25日 14:30-15:50
座長:OS8-1 濱田 邦裕(広島大学),OS8-2 小林 正和(豊田工業大学)

  • OS8-1 ビークルの最適設計I

    本セッションでは,ビークルの最適設計に関連する3件の講演があり,活発な議論が行われた.先ず,最初の講演では,モジュール化の概念を船舶機関室に導入した例とその効果が紹介され,モジュール化による長所・短所に関する意見交換が行われた.2件目の講演では,位相最適化と形状最適化を組み合わせた自動車サスペンションの設計法に関する研究成果が報告された.この講演に対しては,位相最適化と形状最適化の接続に用いられるコントロールポイントの配置法に関する議論が行われた.最後の講演では,はり要素を用いたトポロジー最適化を振動問題に拡張した研究成果が報告され,初期のはり要素の配置法および目的関数の設定に関する議論が行われた.全ての講演に共通して,講演者が発表内容と方法を工夫し,分かりやすい講演をされていたのが印象的であった.

濱田 邦裕(広島大学)

  • OS8-2 ビークルの最適設計II

    「ビークルの最適設計II」では4件の講演があり,船舶の最適設計に関する研究が3件,具体的には船体断面構造の形態・寸法最適化が2件と船舶初期設計の最適化シミュレータの開発が1件,そして残り1件が人力飛行機の翼形状最適化に関する研究であった.設計工学・システム部門講演会では,船舶に関する研究発表は非常に珍しく,船舶特有の設計方法や評価方法とそれを生かした最適設計の方法論は非常に新鮮であった.また,飛行機の翼形状を最適化により求めるというアイデアは,まだ問題を多く残しているものの,将来的な可能性を感じた.

小林 正和(豊田工業大学)

OS9 ライフサイクル設計とサービス工学

オーガナイザー:梅田 靖(大阪大学),下村 芳樹(首都大学),発表件数:16件
開催日時:OS9-1 9月25日 10:?40-12:00,OS9-2 9月25日 13:00-14:20,OS9-3 9月25日 14:30-15:50,OS9-4 9月26日 9:20-10:40
座長:OS9-1 石川 晴雄(電気通信大学),OS9-2 梅田 靖(大阪大学),OS9-3 福重 真一(大阪大学),OS9-4 増井 慶次郎(産業技術総合研究所)

  • OS9-1 ライフサイクル設計とサービス工学 -設計戦略・企画-

    環境問題克服のひとつの重要なコンセプトであるライフサイクル設計について,サービス工学の視点から討論することを目的にオーガナイズされました.製品機能を含むビジネスモデル,あるいはカスタマーの満足性としてのサービスについて,工学の方法論も含めて,4件の発表が行われ,活発な質疑が行われました.これらを通し,サービス工学の重要性があらためて認識されました.

石川 晴雄(電気通信大学)

  • OS9-2 ライフサイクル設計とサービス工学II -評価-

    本セッションでは,ライフサイクル設計,サービスに関わる評価に関する講演が4件発表された.ライフサイクル設計に関わる評価として,井上(電通大)は,3D-CADデータを使用して簡易LCAを実施する実用的な評価システムを提案した.また,ライフサイクル設計とサービス工学の境界領域として,近藤(産総研)は,サスティナブルビジネスを対象として,価値,ライフサイクル環境負荷,ライフサイクルコストからなるトータルパフォーマンス指標で評価し,この指標値を特性化することにより既存ビジネス事例をパターン化することにより,新規ビジネス設計を支援する手法を提案している.サービスの評価について,山岸(首都大)が非金銭的コストの分類を試みた.また,舘山(首都大)は,場面遷移ネットと呼ぶシミュレーション手法に強化学習を導入して,サービスの受け手の行動をシミュレートする手法を提案した.以上のように,ライフサイクル設計,サービス工学という抽象性の高い対象のモデル化,評価を行おうとする果敢な試みが並び,議論も活発であり,刺激的で有意義なセッションであった.

梅田 靖(大阪大学)

  • OS9-3 ライフサイクル設計とサービス工学III -対象表現-

    本セッションでは,製品とサービスとの高度統合による高付加価値実現を目的としたサービス工学,中でも「もの」である製品と「こと」であるサービスとを計算機環境の中で如何に統一的に記述し設計を行うか,というサービス工学における対象表現方法をテーマとする研究発表が行われた.具体的には,サービス活動と製品挙動とを統合的に表現する手法の実在サービスを通じた検証,提案する表現形式を利用したサービスの解析,異なる領域間の設計知識を相互に統合するための計算機支援環境の構築,機能の語彙表現に着目した設計上の矛盾検知手法とその矛盾解消による新たな設計案の導出方法に関する4件の発表があった.

福重 真一(大阪大学)

  • OS9-4 ライフサイクル設計とサービス工学IV -要素設計技術-

    本セッションでは,「製品ライフサイクルシナリオ」や「サービス」といった,新たな対象について,設計支援を行う手法やツールの開発状況が報告された.サービス設計については,設計目標値の設定方法,設計プロセスの一般化に関する発表が行われ,ライフサイクル設計については,部品リユース等のシナリオに対してモジュール化を進めるための設計支援ツールの紹介があった.また近年の情報化社会を背景に,Web情報からの設計知識の獲得を目的とした研究についても発表があった.設計支援ツールの開発といっても,設計対象がサービスやライフサイクルシナリオのように新しい分野であるため,質疑も応用事例や将来展望に関するものが多かった.

増井 慶次郎(産業技術総合研究所)

OS10 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティ

オーガナイザー:渡辺 富夫(岡山県立大学),小木 哲朗(慶應義塾大学),村上 存(東京大学),発表件数:6件
開催日時:OS10-1 9月27日 9:50-10:50,OS10-2 9月27日 11:00-12:00
座長:OS10-1 小木 哲朗(慶應義塾大学),渡辺 富夫(岡山県立大学),OS10-2 村上 存(東京大学)

  • OS10-1 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティI

    本セッションでは,ヒューマンインタフェース・ユーザビリティに関する研究として,指の筋電測定による携帯電話の操作性評価,応力発光材料と内部カメラによる機器操作時に加えられる力の測定法,分散エージェント開発のためのエージェント構築支援ツール,に関する3件の発表が行われた.対象としているシステムの規模は,携帯電話から分散型プラントまで大小さまざまであったが,ヒューマンインタフェース,ユーザビリティという視点から共通の議論が行われたのはセッションとして面白かった.特に応力発光材料を用いた操作性評価に関する研究はまだ初期段階ではあるものの,今後の展開が期待される興味深い内容であった.

小木 哲朗(慶應義塾大学),渡辺 富夫(岡山県立大学)

  • OS10-2 ヒューマンインタフェース・ユーザビリティII

    本セッションでは2件の発表が行なわれた.「着座状態推定システムの研究開発」では,任天堂のゲーム機Wiiのリモコンをモーションセンサとして椅子に座ったユーザの集中度を推定する研究が報告された.「音声駆動型身体的引き込み絵画を付与した身体的バーチャルコミュニケーションシステム」では,仮想空間でのコミュニケーションにおいて,人間の代役であるアバタに加えて,仮想観客として振舞う音声駆動型身体的引き込み絵画を導入することにより,コミュニケーションを盛り上げる研究が報告された.発表件数は少なかったがいずれも非常にユニークな研究であり,リラックスした雰囲気で活発な議論が行なわれた.

村上 存(東京大学)

OS11 創発性と多様性の設計

オーガナイザー:松岡 由幸(慶應義塾大学),宮田 悟志(エンジニアスジャパン),氏家 良樹(慶應義塾大学),発表件数:5件
開催日時:9月26日 9:00-10:40
座長:宮田悟志(エンジニアスジャパン),氏家良樹(慶應義塾大学)

本セッション:「創発性と多様性の設計」におきましては,5名の講演者の方々から,創発の概念に基づく設計システムの繊維状形状生成への拡張とその適用可能性,形態設計における創発や局所ルールの再定式化とその事例適用,Particle Swarm Optimization (PSO)とParticles Method of Unified Structured Inventive Thinking (USIT)の融合による設計解導出支援,構成的数学の観点に基づく設計行為の構成性分析,分岐網創成プログラムを用いた新しい電子基板用冷却チャンネルの設計に関する話題をご提供いただきました.会場には20名ほどの聴講者の方にお越しいただき,システムによって生成された多様な設計案からの選定における問題,創発性と構成性の関連における問題,システムによって生成された設計案の評価における条件設定の問題などを中心に,活発な議論が行われました.

宮田悟志(エンジニアスジャパン),氏家良樹(慶應義塾大学)

OS12 感性と設計

 

オーガナイザー:大富 浩一(東芝),村上 存(東京大学),柳澤 秀吉(東京大学),山崎 美稀(日立製作所),発表件数:8件
開催日時:OS12-1 9月26日 12:50-14:10,OS12-2 9月26日 14:20-16:00
座長:OS12-1 大富 浩一(東芝),OS10-2 山崎 美稀(日立製作所)

OS12-2 感性と設計II

感性は製品開発を行う上で重要な設計情報であるにも関わらず,その取り扱いが機械工学の範疇を超えているため,今まで本講演会ではあまり発表の場がなかった.本部門の研究会の中で感性設計に対する勉強会,講演などを通して情報の拡大を図り,今年は8件の発表があった.マイクロ感性科学に基づくマイクロ情報の定式化,生体情報を用いたのみやすさ評価法,アクティブガイド装置によるエレベータ乗り心地向上,空間ディスプレイの感性設計法,未踏緒パラメータ領域の評価サンプルを用いた感性評価法,多層膜窓ガラスの透過光に対する色彩解析,アルミボトル飲みやすさの評価法,アルミボトルの開け・握りやすさの評価法,感性とEmotion の違いなど,製品適用事例から方法論の展開まで幅広い発表が行われた。

山崎 美稀(日立製作所)

OS14 設計教育

オーガナイザー:福田 収一(Stanford University),発表件数:7件
開催日時:OS14-1 9月27日 9:30-10:50,OS14-2 9月27日 11:00-12:00
座長:OS14-1 福田 収一(Stanford University),OS14-2 伊藤 宏幸(ダイキン工業)

  • OS14-1 設計教育I

    本セッションでは4件の発表があった.2件が大学,2件が企業からで,企業から設計教育の講演があったことは,本部門への企業参加が少ないことを考えると大変喜ばしい.ぜひ,これからも多くの企業の方に講演を頂ければと願っている.
    最初の講演3401は,高知工科大学の坂本先生の電気自動車を使った設計教育の発表であったが,先生の情熱がほとばしる講演であり,これだけの内容であれば,もっと時間をかけてじっくりと伺いたいと思った.また,これだけの活動をするためには,多くの人材が必要ではないかと座長の筆者も思い,そのような質問もあったが,きわめて限られた人数で実施されていると聞き驚いた.
    第2の講演3402は,名古屋大学の北先生が講演された.このシステムはエディターだけを利用した簡便なシステムであり,資源が少ない大学がすべき工夫をしている点が非常に印象に残った.
    第3の講演3403は,デジタルプロセスの関戸氏が講演された.同社はソフト系のため,モノづくりへの感覚が不足している.そこで,そうした感覚を育成するためにPaper Bicycleを題材として,PBL的な教育を実施している,とのことであった.しかし,大学でも厳しい,これだけの教育内容を消化する学習者は,大変な苦労であろうと思うと同時に,直接業務とは関係しないこのような活動に多大の時間を割いている同社のビジョンに感心をし,またこれだけの内容をこなせる社員であれば,実務でも優秀であろうと思われた.大学もこうした人材にPBLなどの活動において,ときどき教えに来てもらうことを考えるとよいと思う.
    第4の講演3404は,ダイキンの伊藤氏からであった.MIT, Stanfordなどの海外の大学と日本の大学について熟知されている同氏は,PBL教育について産業人としての立場から,氏の感じていることを率直に述べられた.設計工学・システム部門でも,このような一種のphilosophyに関する講演がもっとあってもよいと思う.また,他の産業人からも,こうした感想,要望などを講演してもらうことをもっと部門として奨励すべきであろう.現在は,なんとなく,部門講演会が学術講演会となっているが,産業人からの大学への要望,不満などを講演してもらう機会として部門講演会を活用すべきである.それにより,大学人も,新しい視点が開け,またニーズを実感できる.

福田 収一(Stanford University)

  • OS14-2 設計教育II

    設計教育Ⅱでは,「教育」をより広い視点から捉えた発表が3件あった.「複合現実感技術による鋳造方案」は,日本の素形材製造産業における基盤技術,熟練技能の伝承,知識創出に関わるものであり,2次元図面から合成された3次元画像が浮び上る臨場感を巧みにコミュニケーションに活用.鋳造の他工程との関係やデータベース化に関する議論があった.「多様性/持続発展性と設計教育」に関する2件の発表は,先進国に留まらない多様なコミュニティーを前提としたPBLを,教育だけではなく学習環境の多様性として捉える視点の紹介,また,多元的な発展を持続させる目的から,専門化を超えて個人化した「工業」の提案があった.PL法との関わり,Warranty/Guarantyについての議論があった.

伊藤 宏幸(ダイキン工業)

OS15 設計・デザイン論

オーガナイザー:田浦 俊春(神戸大学),妻屋 彰(神戸大学),泉井 一浩(京都大学),発表件数:9件
開催日時:OS15-1 9月27日 9:00-10:40,OS15-2 9月27日 10:50-12:10
座長:OS15-1 田浦 俊春(神戸大学),OS15-2 泉井 一浩(京都大学)

  • OS15-1 設計・デザイン論I

    本セッションは,設計やデザインを幅広くとらえ,その本質を議論するという意図のもとに,今回新たに設けられたものである.テーマの性格上,発表の内容は多彩となり,若干,的のしぼり難い構成となったが,結果的には充実した発表と議論が行なわれたのではないかと思われる.とくに,最初の大富氏の講演は,現在の設計・デザインの抱える問題点と今後の方向性を的確にとらえたものであり,今後の設計・デザイン分野のありかたを議論する上で貴重な問題提起となった.その後の4件の発表(花植氏,山崎氏,横田氏,福西氏)に関しても活発な質疑応答が行なわれ,本テーマに対する関心の高さが窺われた.

田浦 俊春(神戸大学)

  • OS15-2 設計・デザイン論II

    設計過程の最も上流にあたる概念デザインプロセスおいて,設計者の発想の支援すること目的としたシステム開発に関する研究発表が行われた.まず,設計という創造的活動において,思考タイプや差異性に関して分類と創造性の高さとの関係の指摘があった.また,UMLやSVODフレームによって顧客の要求や部品の機能を明示的に記述することで,要求を抜けなく満たしたり,機能の組み合わせ的な方法で創造的な設計を支援する方法の提案があった.さらに,単語の意味の関連をネットワークにより表現しておくことで,設計コンセプトと実際の設計の関連性を評価することのできるシステムが提案された.

泉井 一浩(京都大学)

GS1 一般セッション

オーガナイザー:泉井 一浩(京都大学),発表件数:7件
開催日時:GS1-1 9月25日 10:40-12:00,GS1-2 9月26日 9:20-10:40
座長:GS1-1 竹澤 晃弘(広島大学),GS1-2 小林 正和(豊田工業大学)

  • GS1-1 一般セッションI

    一般セッションIにおいては,サッカーロボットの学習システム,新しい交通安全システムであるセミアクティブ可動ハンプ,人工衛星用の長いアンテナ部品とそれぞれ全く異なる対象に関する研究発表が行われた.特に話題を限定しない一般セッションということで,極めて自由なコンセプトで新しいアイディアの発表がされており,例えるなら発明家が各自の自信作を持ち寄って発表しているかのような,極めて楽しい雰囲気の場であった.こういった自由な議論が許される場は,初めて当講演会に参加する方や,新たな研究テーマに取り組んだ方が申し込み易いということもあり,今後も引き続き開かれるべきであろう.

竹澤 晃弘(広島大学)

  • GS1-2 一般セッションII

    「一般セッションII」では4件の講演があり,それぞれアクティブ可動ハンプの最適化の研究,バイパスオリフィス式油圧緩衝器のモデリング研究,MR緩衝器の材料に関する研究,トータルパフォーマンス指標による製造プロセスの評価と再設計に関する研究であった.一般セッションということもあり,非常に幅広い研究内容が発表された.私個人としてはハンプを自動車の速度に応じて稼動させるという研究に興味を持った.実用化には信頼性や認識の問題,最適なハンプ形状と制御の問題など多くの課題を抱えているが,ぜひ研究を続けて貰いたい.

小林 正和(豊田工業大学)

第19回設計工学・システム部門講演会は2009年10月28日~30日に沖縄県読谷村にて開催されます.この講演会でも,第18回部門講演会と同様のオーガナイズド・セッションが企画されると思われます.ご興味を持たれた方は是非発表者として,または聴講者として奮ってご参加下さい.

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