SSIRI(Secure System Integration and Reliability Improvement)2008 開催報告  

福田収一 Stanford University

 7月14日から17日、横浜シンポジアで、筆者がGeneral ChairUniversity of Texas, DallasProf. Eric WongProgram Chair、白鳥正樹横浜国立大学教授がLocal Arrangement Chairを務めて、IEEE Reliability Society主催のSSIRI (Secure System Integration and Reliability Improvement) 2008を開催した。

 本会議は、第1回が2006年にHanoi, Vietnamで開催され、その時は、SIRI (System Integration and Reliability Improvement)と呼んでいたが、今回からsecureという言葉を足し、SSIRIと呼ぶことになった。本会議は、筆者がIEEE Reliability SocietyVice President (Technical Operations)を務めていたときに、アジア地区で今後信頼性が重要となると考えられること、アジア地区対象の信頼性の国際会議はほとんどないことから、同SocietyExCom(役員会)で今後シリーズ的に開催しようと提案し開催が始まった。(この開催の経緯については、「機械の研究」のコラム「一杯のコーヒーから(24)」に詳しく述べてある。興味がある読者はそちらを参照されたい。)会場の横浜シンポジアは、横浜産業貿易センタービルの9階にあり、横浜港が見渡せ、また山下公園に隣接しているので、外国人の参加者には大変好評であった。

 14日午前中は、柘植綾夫芝浦工業大学学長から”Comprehensive Strategy for CreatingScience and Technology Driven Innovation in Japan: Bridging Knowledge Creation and Socio-Economic Value”と題する基調講演が、つづいてChair Prof. and Director.Michael Pecht, CALCE Electronic Products and Systems Center, University of Maryland から”Reliability Engineering in the Next Generation”と題する基調講演が行われた。後者は、最近話題となってきているprognosticsの研究の動向について具体的な企業活動も含めての紹介であり、とくに日本人の参加者にはアメリカの現状を知る上で有用であったと思われる。午後は、現在のIEEE Reliability SocietyPresidentWilliam TontiからeFuseに関するtutorialが開催された。ただし、今回の参加者は、ほとんど全員がsystem reliability, software reliability の関係者であり、device reliabilityの関係者はほとんどいなかったので、彼には多少気の毒であった。14日の夜は、中華街でreceptionが開催された。今回は、日本人よりも、外国人が大部分であったので、外国人同士、外国人と日本人の交流も盛んに行われ、大変活発で有意義なreceptionであった。

  15日は、論文発表が並行セッションで行われた。Security (1,2), Testing(1,2), Reliability(1,2) , Real Time and Embedded Systems and Automation and Product Lifetimesessionであり、それぞれのセッションでregular paperが3件ずつ発表された。これらのセッションと並行して、元PresidentRichard Doyle氏のMechanical Reliabilitytutorialが行われた。Doyle氏の講演は、医療分野の信頼性の話であり、 信頼性についてだけではなく、日米の医療事情の相違なども理解でき大変興味深い内容であった。講演のセッションが終了してから、best paperなどの表彰式が執り行われた。

  16日は午前中にregular paperのセッションが並行して行われて、午後から、そして 17日と続いてfast abstractのセッションが単独セッションとして開催された。Fast abstractの発表とはon goingの研究の発表である。Regular paper, fast abstractCDに納められている(ISBN 978-0-7695-3266-0)Fast abstractの内容は多方面にわたり、ソフトウエアの信頼性が多かった。しかし、他に、不快感、artificial hip, ant colony optimization、錫ウイスカー、原子力などのプラントの信頼性の話題もあった。したがって、議論もさまざまな視点からの議論が交わされ、大変興味深かった。16日は、これらのセッションと並行して、元PresidentSam Keenesix sigmatutorialが開催された。このtutorialは参加者も多く、議論も活発であり、まだまだsix sigmaが話題となっていることを認識した。16日の夜は横浜港を一周するdinner cruiseを行い、多いに飲み、楽しんだ。17日は、fast abstractのセッションと並行して、Naval Postgraduate SchoolProf. Bret Michaelsoftware reliabilitytutorialが開催された。これは、現在のsoftware reliabilityの問題点の指摘であり、既に解決されたことを述べるtutorialも少なくないが、いま何が問題で、どのような取り組みが行われているかを知る上では大変有用な内容であった。

  論文としては、約80篇の論文が発表され、その半数がregular paper,残りの半数がfast abstractであった。参加者は、約100名であり、関連した国内の大会が同時期に開催されたために、日本人の参加者が少なかったことは残念であった。ただし、アジアへの信頼性の普及という本来の目的からは、アジアから多くの参加者を得て成功であった。また、アジア以外のヨーロッパ、ブラジルなどからも参加があったことは、アジアをこれからの信頼性のマーケットと考えている国々が少なくないことを示している。日本のアジアへの信頼性分野の売り込みは、他国に比べるとあまり積極的ではないとの印象を受けている。日本はもっともっと積極的にアジアへ進出をする必要がある。なお、次回は中国での開催が予定されている。

 

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