(大阪大学 梅田 靖)
今期(第86期)の部門長を仰せつかりました.運営委員の皆様と共に部門の一層の発展に努力して行きますので,どうぞよろしくお願いいたします. 設計工学・システム部門は,本学会において中位に位置する部門でありますが,製品の高付加価値化やサービス化の要求の高まり,ものづくり力強化,環境問題への対応などの諸課題を持ち出すまでもなく,本部門は,機械工学と社会をシンセシスによって結びつける他部門にはない重要な役割を担っており,その重要性はますます高まっていると考えております.例えば最近,技術戦略ロードマップ作りなどを初めとして科学技術の戦略に関する議論が盛んに行われています.この中で,技術戦略を考えるときに従来の先端的な要素技術開発ばかりに注力してもだめで,領域横断的に要素技術をまとめ上げ,有機的に連携させ,社会的,もしくは,経済的「価値」を生み出す「技術」が必要であるという認識が広がりつつあるように思います.これはまさに,本部門の主題である,システム技術であり,シンセシスであり,設計工学そのものです.この意味で,Conversing technologiesと呼ばれることもあるこのような課題が「技術」として認知されつつあることはまさに時代が変わったことを意味し,本部門の研究分野が今後ますます飛躍的に発展する兆候ではないでしょうか.狭い意味での設計手法,設計支援だけでなく,混迷する我が国のものづくりの在り方を発信して行く力が本部門にはあると思います.
設計研究の難しさの一つは,実際の現場である企業の設計活動そのものが見えない,見られない(見せられない)ことにあると思われます.また,特許という形での設計手法や設計プロセスに関する情報も皆無に近いのではないでしょうか.例えば,リサイクルための分離技術,破砕技術,選別技術などは大量の特許情報がありますが,リサイクル設計に関する特許情報はほとんどありません.この,技術を作り出す側と技術を活用する側の情報断絶という古くて新しい問題が,設計研究の発展を阻害していることは間違いありません.この意味で,学術コミュニティとしての本部門にとって,産業界と研究機関の連携を活性化することが大きなミッションです.このための特効薬はありませんが,地道,かつ不断の努力で産業界からの積極的な参画をお願いして行こうと考えております.設計関係で悩みをお抱えの方,日々の設計活動を違う視点から見つめ直してみたい方,設計研究の動向について文句を言いたい方など,産業界から積極的なご参加をお願い致します.
結果として,本部門が,社会に役に立ち,学術的にも深みのある成果を生み出す学術コミュニティに成長できれば,と願っております.設計工学・システム部門をどうぞよろしくお願いいたします.