No.27
200710月発行


目次

1.       挨拶

1.1 部門長就任の挨拶  (東京大学 青山 和浩)

1.2 部門長退任の挨拶  (大阪大学 藤田喜久雄)

1.3 副部門長就任の挨拶 (大阪大学 梅田 靖)

 

2.       特集

2.1 日本学術会議・機械工学委員会における「製品設計の科学分科会」発足について

2.2 Stanford EXPE'07 報告

2.3 Stanford Me310'07 参加報告

 

3.       会議・講習会報告

3.1 LCE2007 14th CIRP開催報告

3.2 CE2007 14th ISPE参加報告 (ブラジル)

3.3 IJCC WDE2007 開催報告

3.4 ICED 2007 参加報告 (パリ)

3.5 07-90講習会「革新的ものづくりのための最適設計法入門」開催報告

3.6 ASME IDETC&CIE 2007参加報告 (ラスベガス)

3.7 2008年度年次大会 報告

 

4.       会議案内

4.1 第17回設計工学・システム部門講演会開催案内

4.2 EcoDesign2007国際シンポジウム 開催案内

 

5.       出版紹介

5.1 初歩から学ぶ設計手法

5.2 機械工学便覧デザイン編β1「設計工学」

 

 部門長就任の挨拶

 青山 和浩 (東京大学)

 今期(第85期部門長)の部門長を仰せつかりました.運営委員の皆様と共に部門の一層の発展に努力していく所存でございます.若輩の身で,誠に僭越ではございますが,ここに就任のご挨拶を申し上げさせていただきます.

 この数年,「イノベーション(Innovation)」という言葉を頻繁に耳にされることと思います.「イノベーション」は,1911年に経済学者 シュンペーターによって定義された言葉として有名ですが,日本の高度成長期では特に「技術革新」という意味で使用されてきました.しかしながら,現代においては,新たな価値を創造し,社会的に大きな変化を起こす「革新」として使用されています.1990年代初頭に創設された設計工学・システム部門は,製品要素からシステムへと対象を拡大し,システムの革新をもたらす設計を探究する部門であると再認識することができます.後述させていただきますように,複雑化する現代社会において,設計工学やシステム技術への期待は一段と高いものになってきており,「イノベーションの実現」が待望されているように思います.

 現代社会は,その構成する様々な要素が複雑化,多様化しており,私たちが解決しなければならない問題は益々複雑化・複合化の一途にあるといっても過言ではないでしょう.インターネットの普及により,人類が蓄積してきた情報と知識が集約されつつありますが,私たちは,何を解決することができたのでしょうか?セカンドライフに象徴されるバーチャルな世界が出現する現代は,現実を逃避した,悩み多い時代であるとも認識できます.

 人口爆発による食糧問題は多くの飢餓を招き,エネルギー問題と環境問題は複雑な関連を持ちながら国際的な格差,紛争を誘発するだけでなく,さらには地球自然環境を崩壊しようとしています.最適化に関する方法論と手法が普及しつつある現代においては,全体最適という言葉が多用されていますが,この全体最適は,何をもって全体と言うべきか,定義する問題自体を改めて問わなければならない時代へと移行している気がします.

 これまでに,エンジニアリングとしての技術は,人類を幸福にするために多く寄与してきました.しかしながら,それが対象とするところは限られたシステムであり,そのシステムの境界が拡大しつつあります.「何をもって全体最適」というのか,つまり,「システム境界をどの様に設定するのか」といった議論の重要性を,今,深く再認識する必用があるのではないかと思います.

 情報ネットワークとコンピュータによる高度情報処理の実現化は,これまで困難とされてきた設計支援技術やシステム技術の新しい可能性を私たちに示しています.しかし,この様な環境が整備されればされるほど,言葉として正確に伝えることができない情報の価値は増大し,人間や集団における意思決定はより一層,重要視されるように感じます.

 学会活動に期待する役割は様々ありますが,重要な役割として,言葉として正確に伝えることが困難な様々な情報を持つ人々のネットワークとしての場の構築があると思います.設計工学・システム部門は,バーチャルな世界のネットワークにおいても重要視される極めて人間的なコミュニケーションを活性化することができる場を提供することが重要ではないかと思います.その場において,これまでの認識のシステムの境界を再編成,再定義,再構築し,全体を観ることの重要性を強く再意識し,思考の軸となる方法論や手法などを磨いていくことが重要ではないのでしょうか.

 以上のような認識のもと,皆様と一緒になって,微力ながら当部門をさらに魅力ある部門へと発展させていただければと考えておりますので,ご支援,ご協力,ならびに,忌憚のないご意見をいただきたく,この場をお借りし,切にお願いする次第でございます.よろしくお願い申し上げます.


 部門長退任の挨拶

 藤田喜久雄 (大阪大学)


 2007年3月をもちまして,第84期の部門長を任期満了により退任いたしました.1年間の責務を何とか切り抜けることができましたが,ひとえに運営委員の皆様や事務局の遠藤様のご支援によるものと,心から感謝いたしております.

 さて,第84期を振り返ってますと,幸か,不幸か,部門評価の年に当たっており,それに向けた自己評価書の作成がもっとも大きな仕事であったように思います.当部門は,日本機械学会の20部門の中にあって,比較的新しく,横断的な内容を担っていることから,伝統ある力学系の部門と並んで同一基準で評価が行われた場合には,有意な差が現れてしまうことを危惧しておりましたが,皆様方のご協力のもと,この数年の様々な活動を丹念に整理して9月末に自己報告書を提出しましたところ,3月末には部門支部活性化委員会から相応の評価をいただくとともに,今後の躍進に向けた期待についてのコメントをいただきました.自己認識としても,個別には様々な取り組みが行われているものの,それらが有機的かつ総合的につながっておらず,大きく目に見える形にはなっていなかったことが浮かび上がっており,評価の結果はこの点とも呼応したものではないかと思います.設計工学やシステムについての課題は,元来,社会や経済などとの関連のもとにあるはずであり,また,それらとともに変貌を続けていることから,諸活動を重ね合わせながら外に向けて発信することは内と外との相互作用をもたらすはずであり,相互作用が新たな課題とその解決をもたらす良い循環を深めていくことが当部門の一層の発展に向けて重要であるように思います.

 最後になりましたが,今後も,立場を変えて,設計工学やシステムに関する分野で努力していく所存ですので,引き続き,何とぞ,よろしくお願い申し上げます.



 副部門長就任の挨拶

 梅田 靖 (大阪大学)

 この度,部門運営委員による選挙により,平成19年度(第85期)の副部門長に選出して頂きました.私の専門分野は,いわゆる「エコデザイン」というどちらかというと設計工学の応用分野でして,設計工学・システム部門の周辺領域で遊ばせて頂いているという認識でしたので,選出されたことは意外な印象を受けました.これも,設計工学,システム分野において,セマンティクスニュートラルな方法論,手法の研究に加えて,価値創造,サービス設計,持続可能社会実現など設計のセマンティクスへと社会の要請と共に研究分野が拡大しつつあることと無関係では無いのかも知れません.
 本部門の特徴は,対象分野の柔軟さ,他に専門分野を持つ第二,第三登録の(幽霊)会員の多さ,および,産業界の会員とアカデミアの会員のよいバランスにあると思います.これらの潜在能力を活用し,本部門をさらに活性化させるためには,多くの会員が共通の興味を持っている問題設定の議論や,検討が始まっているロードマップの議論をさらに進めることが有効かも知れません.また,設計,システム分野の基礎的研究と「役に立つ」研究をうまくつなげて行く仕組み作りやアカデミアからはどうしてもよく見えない実際の設計作業の具体的な調査なども可能かも知れません.
 いずれにせよ,設計工学,システム部門で貴重なコミュニケーション,コラボレーション,研究活性化の場である本部門のより一層の飛躍のために,青山部門長を支え,微力ながら努力致しますので,皆様のご支援,ご協力をお願い申し上げます.

 



 日本学術会議・機械工学委員会における「製品設計の科学分科会」発足について

 福田収一 (Stanford大学)

 設計は、人間の本質である創造活動の一つであり、長い歴史がある。設計活動によって創出された人工物は、最近では高度に発展した人工環境を形成し、社会の諸活動に多大な影響を与えている。設計活動に求められることは、従来は便利な生活の実現を目指す物質的対応が主体であったが、最近は、人間本来の欲求を考え、心の満足を与え、豊かな人生とする精神的対応も重要となってきた。
 このように大きく変貌する設計に対応するためには、改めて広い視点から設計を見直し、解決を要すべき問題、将来方向を明確にしてゆくことが重要な課題である。
 本分科会は、機械工学委員会(中島尚正委員長)の中の分科会として、9名の委員から構成され、この視点から従来の設計を見直し、必要となる新しい枠組みを、知識の体系化と人材育成の観点から明らかにすることを目標として、第1回、第2回の分科会を平成19年6月14日、7月31日に開催し、活動の基本方針を議論し、活動を開始した。


 Stanford EXPE'07 報告 (IDEO社見学を含む)

 伊藤宏幸 (ダイキン工業株式会社)

 Stanford大学Department of Mechanical Engineering / Design DivisionにてCDR(Center for Design Research: Director Prof.Leifer, Associate Director Prof.Cutkosky) が主催する310 * (Global Team-Based Design Innovation with Corporate Partners )およびMML (Manufacturing Modeling Laboratory: Director: Prof. Ishii)が主催するME317(Design for Manufacturability)の成果発表会をコアとしたStanford EXPE ’07 (Stanford design EXPErience 2007: 2007/06/06-08)が開催された.以下に,主な内容について報告する.

*ロボット工学出身者が多数参加しているため従来から「制御」は含まれていたが,「情報・コンピュータ」に関係したテーマあるいはFacultyの増加,Global Teamの標準化への対応からか,今回の開催案内からは”ME”が抜けて単に”310”と記載されている.

アジェンダ:

6/6(水) 

    16:00 

        ME317 Registration 16:15 ME317 Presentation 18:00 ME317 Reception
6/7(木)

     08:00 

        310 Registration 08:30-12:45 310 Presentation 13:15-14:00 ME218C
    14:00-17:00 

        Design Fair ( E110/210, ME21n, ME113, 310) 17:00 310 Reception
    18:00-21:00 

        ME216B
6/8(金) Post-EXPE Event
    11:00-16:00 

        Supply Chain & Manufacturing in Emerging Economics

IDEO社訪問:

 事実上,310関係の行事として6/6午後IDEO社見学ツアーが企画された.IDEO社は,日本でも「発想する会社!-世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法-」など多数の翻訳版にて紹介されている会社であり,上記,CDR, MMLをはじめとして12の研究所およびFacilitiesから構成されれStanford Design Groupとは関係が深く,創業者の一人でありNational Academy of EngineeringのメンバーであるProf. David Kellyは,Product Design Programを教授するかたわら,Hasso Plattner Institute of Design at Stanford ( d.school )設立に尽力している.なお,IDEO社見学にあたっては,同じく創業者の一人で”Designing Interactions (MIT Press 2006)”の著者でもあるConsulting Professor Bill Moggridgeが案内を担当,グループ活動を中心とした実際のデザインの様子,これまでに携わったプロダクト紹介,デザインを取り巻くマインド・マップ,デザインの3ステージ,発想力をサポートするための工夫などについて説明を受けた.

 

 

↑ 階層的なデザイン思考   顕在/潜在(横軸)-ミクロ/マクロ(縦軸)とアクション↑

 

 

 

 

↑デザインの3ステージ(既存の人工物からのインスピレーション~進化~検証まで)

 

 

 

 

↑Sustainabilityは大きなPriorityを有している ↑玩具のデザインチーム作業場への入口

 

 

↑David Kelleyが世界中で集めた小物.小型スターリング・エンジン,ヒートパイプ,ヒンジのない樹脂製の洋鋏,手動/太陽電池充電器,フレキシブルキーボードなど,機能デザインのヒントとなるアイテムがぎっしり詰まっている.

 

ME317 Design for Manufacturability:
 上記IDEOツアーと同時間帯でのPresentationであったため出席できなかったが,入手したハンドアウトと主宰する石井浩介教授の話を総合すると,このプログラムでも次第に医療機器へのシフトが顕著になってきたようである.以下に概要をピックアップした.

  • Bloom Energy:商業用/産業用燃料電池の高信頼性設計

  • Ebara(荏原):個人向け商品/サービスに適応した流体制御システムとビジネスモデル

  • Johnson&Johnson/Alza:経皮吸収鎮痛剤ドラッグデリバリーシステムIONSYS(Fentanyl Iontophoretic

  • Trandermal System:2006/05 FDA承認)の製造コスト低減 (本来のDfMに近いテーマ?)

  • Medtronic:次世代の血管ステントの設計および留置材料作成のためのコンポーネント結合プロセスの考案

  • Nissan Motor Company(日産自動車):CSRに配慮し,サステナブルで地域特性に根ざした動力システムのグローバル生産に関する要求の提案および検討例

  • Toyota Motor Corporation(トヨタ自動車):交通事故防止のための運転支援システムおよび対人ダメージ低減装置などの技術設計と生産ロードマップ

310(Global Team-Based Design Innovation with Corporate Partners)
 310は,2006-2007では,全てGlobal PartnerありのProjectとなった.(現状では,一つの企業Partnerにつき,Stanford Mechanical Engineeringに加え,主として外国のアカデミアが参画する形式.310自体は,複数の企業が一つのProjectに参画することを排除しておらず,即ち,当事者間で知財権問題を解消するとの前提で,連携・提携のトライアルの「場」を提供することを想定しているものと思われる.) 以下に概要を紹介する.

 

・Deutche Bahn(ドイツ鉄道) - Univ. of St. Gallen(スイス):

Knowledge Worker用ノート (duo)
・General Motors-Technical Univ. Munich(独):LEDによるカーナビと振動機能付シート.
  米国のカーナビは,日本の数世代前の視覚情報(俯瞰図はあるが,建物や高速道路の
ランプが立体的に表示される機能はない.)を提供するに過ぎず,比較的単純な指示方法も大多数のドライバーにとっては効果的.
・Nokia-Helsinki Univ. of Technology:e-inkスクリーンを用いた折り畳み型多機能PDA ( Ki’ i ).地図,写真,メモにより,個人の行動と時々の感情をグループで共有.
・SAP-Univ. of St. Gallen:タッチパネルによる洗練された入力機能や情報交換機能をそなえたA4 (or Letter Size)のパッド ( xFOLIO / 7hink )
・Panasonic<SENSibles>-Helsinki Univ. of Technology:非視覚的な感情表現をリストバンド上のLEDに示し,一方で,他人の感情を振動で受けることにより,円滑なコミュニケーションを支援する.( E-MO )
・DaimlerChrysler-Royal Institute of Technology(スウェーデン):表示情報の編集・移動・交換を可能としたマルチ・ディスプレイのヒト-クルマ・インターフェース.(Pangea)
・Civil&Environmental Engineering Dept.,Stanford Univ. - Univ. of Queensland (オーストラリア):テレビ会議 ( Video Conference ) の支援システム.サイト数,参加者数に対しスケーラブルであることなどが特徴.( iRoom )
・DCI International – 福岡工業大学:インフラ整備が十分ではない地域などで有効な,歯科医用のポータブル空気圧縮機-真空ポンプ・システム.スクロール型空気圧縮機,航空機仕様の軽量ピストン型真空ポンプ使用.閉ループ・フィードバック制御により,タンクレスとした.( INNOVair )

 

 

 

 

 

    ↑ INNOVairのダイアグラム

 

    ↓ Design Fairでの実物展示およびポスター

 

・Audi- Technical Univ. Munich:身体・ドライブ・メンタルの3種のフィットネスを目指す.シートの自由度増加(yaw<Z軸回り> ランバーサポート)による身体フィットネス,LCDとハンドルの強制加振によるギヤ・シフトのタイミング練習.(Audi Trainer)

 

・Panasonic-東京大学:クルマではなく,歩行者が寄り道をしながら,目的地に向かうためのナビゲーションシステム.簡単インターフェースが特徴.予め設定したゴールとの距離や方向を矢印と色で示す.
  ( Sense- i )

・VW-Universidad Nacional Autonoma de Mexico:センター・コンソールに設置される通常のナビ用ディスプレイの課題(視線移動,指紋付着)を掃除機能付のAピラー・ディスプレイで解決.( VW Intelligent Display)

 

 

ME218C ( Smart Product Design Interactive Presentations )
 Tele-Operated Rolling User-Propelled Stools (TORUPS)

 

↑ローラー付の椅子に座った兵士は,テラスで兵士のヘルメットを通じて方向などを指示する指揮官に従って移動し,敵を追い詰めていく.
インターフェースが直感と矛盾すると上手く移動できない.

Design Fair
 上述の310のプロトタイプを始め,E110/210, ME21n, ME113のトレードショー風展示.
 ME21nは,Prof. Cutkoskyの指導による新入生対象のコース.ルネサンス期の技術発明を当時の社会学的コンテキストとともに学び,工学研究のスタイルを身に着けることを目的としている.ME113は,学部生向けのデザイン講義・実習(10週間),今回,Ford提供の”HVAC Duct Redesign”という課題もあったが,結果は平凡であった.Panasonicは,ここでも”Display and Tangible Interface Device for Home”なる課題提供をしているが,一見したところ,ME310(2005-2006)でのSiriusからの課題 ( Nosphere: PC画面を直径22インチの半透明ボールの内側から投影し,ボールを回転・押下げによりコンテンツを切り替えて行くインターフェース)の小型化と回転自由度の拡大であり,このように,他の企業がコンセプトを引き継いでいくこともある.具体的な製品化プランがある場合は,知的財産権についても調整する必要性が生じるであろう.

 

 

 

↑Fordの課題に対するソリューション 主要な部分は,シート表面からの送風


 

ME310(2005-2006)の Nosphere (SIRIUS)

 

ME113 (2007) におけるPanasonicのThe “Glow-y” Sphere

 

 

 

↑ME21nの展示 木製のクルマ,水ポンプ,クレーン,投石器

 EXPE’07全体を通じて,機械工学分野におけるPBLの世界標準をリードするStanfordらしさが随所に伺え,グローバル化あるいは歴史教育への構えも十分というところであった.特に内部進学者は,企業からの課題提供に対して,何をなすべきか良く心得ており,日本国内の大学院教育においても学ぶべきことは多いという印象であった.


 Stanford Me310'07 参加報告

 菊地洋輔、小原英明 (東京大学)

今回,ME310の中の”Panasonic Walk-a-Toronics”プロジェクトには東京大学から,産業機械工学専攻の修士1年,システム創成学科の学部4年生,経済学部の学部4年生の3名が参加することになった.プロジェクトでは「Wearable Electronic System for Everyday  Personal Navigation(歩行者用ナビゲーション装置)」の開発がテーマとして与えられた.

このプロジェクトにおける日本チーム第一の課題はコミュニケーションであった.基本的なコミュニケーションは,週一回のビデオ会議とメールのやり取りであった.

 

↑ビデオカンファレンスの模様

 

ビデオ会議において,イラストが大いに役に立った.お互いのアイデアを紙やホワイトボードに書き,考えをよりスムーズに進めることができた.


            ↑実際に使用したイラスト

ビデオ会議の前にアジェンダを作り,話し合う内容を事前に決めおくことはとても有意義であった.基本的にStanford大学側の講義の進行に従いアイデアを出していったのだが,Stanfordチーム側が興味を持たない内容だと,例え日本側でいいアイデアだと思っていても,無視されることもあり,まず彼らにその良さを伝え,理解を得ることに苦労した.

次に,今回のプロジェクトをアイデアとプロトタイプから振り返る.

 [秋学期]

Fall Final Prototype

一番初めのプロトタイプであり,ビデオ会議においてそれぞれにアイデアを発表し合い,その内の一つのプロトタイプを作製し,発表した.初期のアイデアは,歩行者用ナビゲーション装置ということで、既存のナビゲーションシステムを模した視覚を用いたものが多かった.



↑時計型方向指示デバイス 
電子ビームが目的地の方向を示す

 

↑ヘッドマウントディスプレイ型方向指示デバイス

↑ベルト型方向指示デバイス 人がコントロールパネルを用いてベルトの前後左右についているモーターを動かし、曲がる方向を指示

[冬学期]

Dark Horse Prototype

Dark Horse Prototypeとは,今までのアイデアと根本的に異なるアイデアのプロトタイプであり,それはたとえ実現可能性が低くても構わないというものである.

このプロトタイプのアイデア出しはStanford大学のメンバーが来日中のミーティングで行った.最初に3グループに分かれ,ブレインストーミングでアイデアを広げ,そこから収束させ,それぞれに一つずつアイデアを出し,簡易プロトタイプを作製.3グループでプレゼンし合い,その中で一つに決めた.Stanford大学のメンバーが帰国後,そのアイデアをDark Horse Prototypeとして作製し、発表した.このミーティングでは,入力としてジェスチャーを取り入れ,外部デバイス(外部ディスプレイ等)を使ったアイデアが多かった.


↑日本でのミーティングでのプレゼンの模様



Dark Horse Prototype

手の平の読み取りと書き込み用のデバイスで情報をやり取りする

              Dark Horse Prototypeのデモ

外部デバイスから情報を読み取っている


Funky Prototype

歩行者用ということで,できるだけ視覚を妨げずにナビゲートできることに重点が置かれ,バイブレーションを使い,“方向を感じる”ことを主眼においたアイデアが多くなってきた.そして,そのコンセプトを実現するプロトタイプをFunky Prototypeとして作製し,ユーザテストを行い,発表した.



    Funky Prototype 1(入力デバイス)

どの指とどの指を合わせるかによってモードを変えることができる


 

    ↑Funky Prototype 2(出力デバイス)

腕を目的地の方向に向けると,バイブレーションで方向を,LEDで距離を教えてくれるデバイス

 

Winter Final Prototype

今まで出たアイデア,プロトタイプを基に,“視覚を妨げない”,“ハンズフリー”をテーマにプロトタイプを作製し,ユーザテストを行い,発表した.日本メンバーが訪米し,ユーザテスト,発表に加わった.

 

Final Prototpye 腕を目的地の方向に向けると,モーターが振動する



↑ユーザテスト Final Prototypeを用いてStanford大学構内でユーザテストを実施

[春学期]

Final Prototype

本格的なプロトタイプの作製のため,100個の外装のアイデア出しをし,その中から4つを選んだ.
   

    ↑選ばれたアイデア

 

 

 

    ↑だめだったアイデアたち


  

    ↑選ばれたアイデアの簡易モックアップ

外装のデザインを基にCADデータを作り,外装のプロトタイプ(外注)を作製した.予め目的地を設定しておき,腕をその方向に向けるとモーターが振動し,LEDが方向と距離を示すようにソフトウェアを組み,電子回路を組み,Final Prototypeを完成させた.

 

 

    ↑CADデータ                                                 コンセプトスケッチ


 

 

    ↑ラピッドプロトタイプ                                 完成形

 

最後に,小原,菊地それぞれの視点からME310を振り返る.

 東京大学 経済学系研究科 修士1年 小原英明

この度,私は文系ながらも,縁あってME310に参加することになった.企業から与えられたテーマに対して,「市場でのベンチマーキングを行う」,「商品コンセプトに落とし込む」,「実際のプロトタイプを製作する」,「試験をする」,という一連のもの作りのプロセスを体験するところにME310の大きな価値があると思う.その中で,文系の自分が特に興味を持ったのが,ベンチマーキング~コンセプトに関わるマーケティングの過程において,「外観デザイン」への意識が高いことであった.プロジェクトを通じて,必要な機能,構造に合わせて外観デザインを検討するという流れについては,日米で変わりは無いように感じた.一方で,当初のCritical Functional Prototypeの製作,Dark Horse Prototypeや冬学期末プレゼンの段階で機能についての議論がなされる中で常に議論に上がったのが外観デザインだった.これは最終プロトタイプの設計において,外観デザインを最優先し,機能を限定することも厭わないというStanfordチームの意向に顕著に現れていたと思う.昨今,携帯電話業界などを中心に「デザイン重視経営」という言葉が取り立たされているが,その一端をここに体験したような気がした.

東京大学 工学系研究科 産業機械工学専攻 修士2年 菊地洋輔

 

今回ME310に参加し,企業の出した課題を基にコンセプトを設定し,デザイン,機能を決め,プロトタイプを作製するという一連の流れを体験でき,その過程において,どこに焦点を置き,どのように絞っていくのか,そして機能が決まったときに,それをどのように実現させていくのかをStanford大学の方式で学ぶことができ,非常によい体験となった.

 

アイデア出しでは,最初,歩行者用ナビゲーション装置ということで,カーナビを意識して視覚を用いて様々な機能を持ったものが多かったが,歩行者用ということで,安全性を重視した議論を重ねていくうちに,次第に視覚以外の感覚を用いたものが出てきて,最終的に視覚情報を極力排除するために機能を縮小させ,腕を目的の方向に向けるとバイブレーションによって方向を教えてくれるという非常に単純なものとなったことがおもしろかった.日米で考え方に違いがあったこともおもしろかった.腕を水平方向に出し,目的地の方向をスキャンするというFinal Prototypeのアイデアは,人前でその行動をすることが恥ずかしいので乗り気がしなかったのだが,Stanfordメンバーはその恥ずかしさなど全く感じていなかった.

 

このプロジェクトではプロトタイプ作製が一番のキーとなっていた.私は初め,プロトタイプを作製することをそこまで重視せず,紙上でのスケッチで済ましていた.だが,プロトタイプを作製することによって,アイデアが抽象的なものから具体的なものになっていき,他人に伝達することが容易になり,ユーザテストを実施し,新たな問題点を見つけることができ,プロトタイプ作製の重要性を実感することができた.プロトタイプの数も重要であった.このプロジェクト1年の間に大きく6つのプロトタイプを作製した.全く異なるアイデアからもプロトタイプを作製することにより,製品がより洗練されていったと思う.

昨今の製品開発において,プロトタイプの作製,評価は重要な位置を占めているが,その一端を体験することができ,非常に有意義なプロジェクトであった.

 

 


 LCE2007 14th CIRP開催報告

 梅田 靖 (大阪大学)

 準備中 



 CE2007 14th ISPE参加報告

 大山 聖 (宇宙航空研究開発機構)


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では現在,JAXA基幹ロケットH-IIA/Bの信頼性向上へ向けた開発プロセスの革新に取り組んでおり,コンカレントエンジニアリングはキーとなる技術の一つであると考えられている.そのため今回は,コンカレントエンジニアリング技術について勉強するべく,CE2007に参加させていただいた.スケジュールの都合上3日間しか会議に参加できなかったが,政府,企業におけるコンカレントエンジニアリングの取組みや現状,大学・企業の方からの最先端のコンカレントエンジニアリング技術まで幅広く学ぶことができたと考えている.また,発表なしの初参加にもかかわらずいろいろな方とお話させていただくことができ(福田先生のご人脈のおかげです),学会では発表できないような企業内での取り組みなどについていろいろな話も聞くことができ,大変有意義だった.コンカレントエンジニアリングについて研究されている方,勉強したい方には次回会議への参加をぜひお勧めします.


 IJCC WDE2007 開催報告

 DEWS2007 Program Committee 大富浩一 (東芝)、小林 孝 (三菱電機(株))


7th IJCC Workshop on Design Engineering(日韓設計ワークショップDEWS2007)の報告

2007年7月26日 ~27日に東京大学(駒場)先端研にて、7th IJCC Workshop on Design Engineering 2007(Workshop Chair: Dr. Ohtomi)が開催された。
本WSは以下の5セッションで構成され、合計28件の一般講演と特別企画のパネルディスカッションが実施された。

◆セッション構成と日韓Session Chair

Japan

Korea

CAD/CAM/PLM

Prof. Hiromasa Suzuki

(東大)

Prof. Soonhung Han

(KAIST)

CAE and Design

Dr. Koichi Ohtomi

(東芝)

Dr. Sungwhan Park

(KIMM)

Design Theory & Methodology

Prof. Yoshiki Shimomura

(首都大)

Prof. Yong Se Kim

(Sungkyunkwan Univ.)

KANSEI Design and Industrial Design

Prof. Tamotsu Murakami

(東大)

Prof. Kwan Heng Lee

(GIST)

Industrial session

Dr. Takashi Kobayashi

(三菱電機)

Dr. Se Hyun Kim

(サムスン電子)


今回は、日韓を中心に約60名の設計研究者の参加があり、内訳は以下のとおり。
(韓国側の大学・研究機関17名、製造業4名、 日本側の大学・研究機関など27名、製造業8名、その他(スイス大学機関)1名など)



l 本学会は2000年以来、IJCC (Int. Journal of CAD/CAM) Workshop on Digital Engineeringとして日韓で会場を交互に移して毎年開催されてきた。なお、今回からは名称をIJCC Workshop on Design Engineering に改変し、感性設計やIndustrial sessionを新設して、より設計工学的な視野での運営ビジョンが示された。
l 例えばIndustrial sessionでは、日韓の自動車メーカや電機産業から、成熟段階を迎えた個々のDigital Engineeringツールをいかに活用して新製品開発、プロセス短縮を実現しているかが事例紹介され、トータルな視点での設計研究の重要性が述べられた。
l また、特別企画のパネルディスカッションでは、日韓製造業の各パネラーから設計現場における開発課題と今後のデジタルエンジニアリングへの期待(例:デジエン2.0の必要性)が問題提起され、会場も含めて活発な意見交換がなされた。また、司会の大富氏からは2030年を視野に入れた設計工学の将来ロードマップ案(JSME設計研究会A-TS-12-05編)が紹介され、モノづくりの発展に真に役立つ設計工学の実現には継続的な産学連携、国際協調活動の必要性が述べられた。
l 最後に、僭越ながら本ワークショップに初参加した下名の所感を付記させて頂く。製造業からの参加者がまだ少ない点が今後への課題と考えるが、世界のモノづくり分野で重要な位置を占める日韓両国の産学研究者が集い、設計工学の現状や今後に関して活発に意見交換できたことは意義深いと感じた。特に2日間を通して韓国側からの質疑・意見が活発であった点が印象的であり、人的交流も含めて有益なワークショップであったと考える。
末筆ながら、Organizing Committeeをはじめとした運営関係者のご尽力に深謝を表する。

<関連リンク>

 

http://www.den.rcast.u-tokyo.ac.jp/dews2007/

https://www.jsme.or.jp/dsd/A-TS12-05/English/DEWS2007-PanelDiscussion.pdf
https://www.jsme.or.jp/dsd/A-TS12-05/English/

 


 ICED 2007 参加報告

 古賀 毅 (東京大学)


 2007年9月28日から31日の3日間にかけて、フランス・パリのLa VilletteにあるCité des Sciences et de l'Industrieにて、設計工学に関する国際会議である16th International Conference on Engineering Design 2007が行われました。また、それに先立ち、2007年9月27日にフランス・パリにてDesign Society Workshopsが行われました。この会議は、The Design Societyをパートナーとして隔年でEUを中心に開催される、参加者の総数は1000名近くに上る大規模な会議として知られています。アメリカ合衆国における機械学会が毎年主催するASME DETC (International Design Engineering Technical Conferences & Computers and Information In Engineering Conference)と対比されることが多い会議です。
 会議において採択され、発表された論文の総数は、オーラルセッション、パネルセッションを加えると、合計で395件にも上りました。パネルセッションを加えると、総論文数は合計で439件となります。論文は、以下の3ジャンルに分かれて発表されました。

(A) Oral Session (179件)
 一般的なプレゼンテーション・スタイルでの講演にて、7会場に分かれて発表が行われました。どの会場も満席に近い状況で、立ち見が珍しくなく、活発な質疑応答によって活況を呈していました。

(B) Poster Session (216件)
 件数でいえば最も多かったものが、このポスターセッションです。広いエリアでポスターが展示され、3日間にわたって何度も設定されたポスターセッションタイムにおいて、参加者は自由に見学し討論することができました。展示者が不在の場合のための、名刺ケースが設置され、いつでもコンタクトが可能なように図られていました。

(C) Panel Session (59件)
 パネル専用の会議室が準備され、連日討論形式で、白熱した議論が展開されました。

以下は、会議の様子を写した写真です。左から順に、
・クロージング・セッションの様子
・オーラルセッションの様子
・パネルセッションの様子
となっています。



ICEDにおける主要なトピックを、講演論文の発表件数ごとにまとめたものを、以下のグラフに示します。各トピック右側は、受理された講演論文の数を示しています。ICEDにおける主要な話題の割合が分かると思います。ASMEに比べて、実務的・具体的な研究は少なく、設計の本質に迫る概念的な研究が多いような印象を抱きました。



 また、ICEDにおけるセッションの構造と講演件数をまとめた表を以下に示します。各ジャンルごとに、セッション名を公演数の多かった順に示しています。また、セッション名の右手の数字は、講演件数を現しています。

ジャンル セッション 公演数
Knowledge Information Systems & Knowledge Management 39
Ontologies 8
Cognitive and Cultural Dimensions of Collaboration in design 6
Knowledge and Design Processes 6
Knowledge Representation 4
Information Mining 4
Information  4
Information 4
Information in Design 4
Information in Design Processes 4
PLM 4
Collaborative Product Development 4
Collaborative Support 4
Modular Design and Platforms 4
合計   99

 

Design for X Design for X 25
Context in Design 21
Design for Environment 4
Design for Sustainability 4
Design for Reliabililty 4
Design for Manufacturing 4
合計   62

 

Organization Design Management 30
Change Management in Design 6
Team Management 4
Complexity 4
Scehduling 4
Project Management 4
合計   52

 

Computation Computations in Design 16
Advanced Computations in Design 6
Conceptual Robust design 5
Computational product Model 4
Optimization Techniques 4
Multi-Scale Computation in Design 4
Virtual Reality for Design 4
FEM for Design 4
合計   47

 

Innovation Innovation & Creativity 21
Design Creativity Assessment 6
Concepts 4
Creativity Theories 4
Analogy in Design 4
Human Aspects in Design 4
Yet Other Thoughts in Design 4
合計   47

 

Theories & Methodologies Approaches & Rationales in Design 28
Approaches in Mechatronics 4
Functional Approaches 4
Design Methodologies 4
Applications of Design Methodologies 4
合計   44

 

User User Requirements & Functional-Value Analysis 12
Human Centered Design 6
User Requirements 6
Customer Oriented Design 4
Multi-View Points Requirement 4
Fnuctional Value and Design Evaluation 4
合計   36

 

Assessment Validation & Assessment 9
Design Evaluation 6
Basics of Assessment 4
Measurement in Design 4
Evaluation in Dfx 4
合計   27

 

Education Education & Training 7
Education Expectation 6
Redesigning Design Education 4
Enhancing Education 4
Computer Supported Education 4
合計   25


 以下に、私が興味を覚えた2つのセッションにおいて、印象に残った発表に関して報告します。

(1) Knowledge / PLM (Product Lifecycle Management)セッション
 ナレッジベースト・エンジニアリング(KBE)と、プロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)を統合するアーキテクチャに関して、スウェーデンのChalmers University of TechnologyのAmer Caticらより、発表がありました。ナレッジベースト・エンジニアリングのカテゴリ分けを行い、KBEをPLMにおけるサービスとして位置づけて、ナレッジ・モジュールの構造に関する議論を行いました。設計の検証や、ナレッジの検索などのKBEサービスを、効果的に行うPLM環境の提案がなされ、そのアーキテクチャに関して議論が行われました。

(2) Innovation / Analogy in Design
 設計の着想を得る、工学的なシステムの開発に関して、インドのIndian Institute of Scienceから、Prabir Sarkarより発表がありました。何十億年もの試行錯誤によって、有効なソリューションを生み出してきた生態系の成功例から着想を得ることは、設計者のインスピレーションとして有効である筈であると主張します。マジックテープやソナーなどの工学製品だけでなく、コンピュータサイエンスでは遺伝的アルゴリズムやニューラルネットなど数多くの事例がありますが、開拓されたポテンシャルは10%程度だと指摘し、まだ多くの可能性が秘められていると考え、自然界を概念化したものと人工物との類推・体系化を行ったシステムを構築し示しました。実際に設計者がインスパイアされるか?という点に関し、議論が行われました。

 また以下に、ICEDの前日に行われましたDesign Society Workshopsの様子に関して報告します。

(3) Design Society Special Interest Group
(執筆:野間口大(大阪大学))



 ICED に先立ち,8月27日(月)にパリ近郊Châtenay-Malbry にあるEcole Centrale, Paris (ECP) においてDesign Society Special Interest Group (SIG) Day が開催されました.SIG Day は今年初めて開催されるもので,今回は8つのSIGのワークショップが設けられ,各SIGとも活発な意見交換が行われました.本稿ではこの中のDesign Creativity SIGの様子を紹介します.このSIG は,設計における創造的な思考過程を理論的に解明することを目的として神戸大学の田浦教授が企画運営しているもので,当日は55人が参加しました.基調講演をProf. Amaresh Chakrabarti (Indian Institute of Science, India)およびProf. John Gero (Krasnow Institute for Advanced Study, USA)が行い,創造性の定義や創造的設計を支援するためのソフトウェアに関する話題を提供して議論を盛り上げました.またProf. Yong Se Kim (Sungkyunkwan University, Korea) は,2007年6月に米国ワシントンで開催されたthe 6th Creativity and Cognition Conferenceの報告を行い,この分野での研究動向を紹介しました.なおDesign Creativity SIG の詳細については下記のWebサイトを参照してください.
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/nagai/DesignCreativity/

 次回のICEDは、2009年8月25日から28日にかけて、U.S.A.のカルフォルニアにあるスタンフォード大学にて開催される予定です。早くも会議のページが準備されているようですので、詳しくは、以下のWebサイトを参考にしてください。
http://iced09.stanford.edu/


 07-90講習会「革新的ものづくりのための最適設計法入門」開催報告

 山崎光悦 (金沢大学)

 2007年8月30日(木)10:30~20:00及び31日(金)10:30~16:30の日程で,早稲田大学理工学術院を会場に標記の最適設計法入門のための講習会を,最適設計法についてこれから学びはじめようという技術者や技術系新入社員の教育の一環として利用したい技術者などをターゲットとして企画・実施した.企業所属の個人会員45人,教育機関・公設研究機関の会員が2人,そして学生12人の合計59人の参加があった. 
 本講習会では,大学,企業から最適設計法に関する研究の第一戦で活躍する研究者を講師に招き,革新的ものづくりのための最適設計入門(最適化技術の基礎,利用法,それら技術を統合した革新的なものづくりの先進事例)について分かり易く教示するように努めた.特に講習会資料とは別に,当日各講師が使用するパワーポイントファイルを参加者にあらかじめ配布し,予習教材として提供してサービスに努めた. 

  1. 「CAEと設計の基礎」(初日午前)では,設計最適化の基礎となるCAD等の形状モデリング技術,CAEを活用した設計技術の概要,設計法のポイントが易しく解説された. 

  2. 「最適設計技術の基礎」(初日午後)では,最適設計法の分類とその解法(最適性基準法,数理計画法,進化的アルゴリズム),設計感度解析法と近似最適化問題の構成など,最適化要素技術についての解説があった.

  3. 「形状・形態(トポロジー)最適化の基礎」(初日午後)では,形状および形態(トポロジー)最適化の基本的な考え方と,その具体的な最適化問題の定式化および実装方法について説明があった.併せて,簡単な数値例より形状・形態最適化の特徴と実用設計への適用方法が示された.

  4. 「応答曲面近似法と大域解探索の基礎」(初日午後)では,実設計問題への最適化技術の適用のため,実用的な時間内に設計者が最適解を得るための有効な方法として応答曲面近似が説明された.タグチメソットの概要と合わせて非線形性の強い応答曲面の近似精度を上げるためのデータ点追加の方法や大域解探索手法の紹介もあった.

  5. 「信頼性・ロバスト設計法の基礎と応用」(2日目午前)では,荷重条件や材料特性などの不確定性が構造に及ぼす影響を考慮するための設計法として,不確定性を確率変数としてモデル化する「信頼性に基づく最適設計」および非確率量としてモデル化する「ロバスト設計」について,その基本的な考え方を中心に,最新の設計手法について説明があった.

  6. 「多目的最適化の基礎と複合領域設計」(2日目午後)では,複数の目的を同時に最適化する場合に多目的最適化問題として定式化し,パレート最適解を求めるいくつかの代表的な方法について紹介があり,さらに複合領域の最適設計について事例を交え解説された.

  7. 「最適化ソフト活用の基礎 - 結果を出すためのポイント-」(2日目午後)では,最適化ソフトも今日では一般のCAEソフトと並び珍しい存在では無くなったが,特定用途の最適化ソフト,例えば形状最適化の場合,各力学分野の解析の延長と考えて使う事ができるが,汎用最適化ソフトの場合には最適化独自の視点や特徴も理解して使う必要があるなど,ソフトウエア活用上の注意事項に重点を置き,最適化ソフトの活用のポイントが解説された.


 どの参加者も2日目最終講義まで,熱心に聞き入っていた.なお,初日の質疑応答の後,場所を移しての情報交換会(別料金)にも,20名近い聴講者と講師ほかの参加があり,最適化をキーワードに日頃は交わることの少ない異業種や関連分野の技術者がそれぞれの立場からの情報提供をし,大いに情報交換の実が上がったものと思われる.
 2日目終了後に実施されたアンケート調査でも,一部の不満を除き概ね好評との比較的高い評価をいただいた.この結果を励みに,来年も是非,同様の講習会を企画してみたいと感じている.
 最後になりましたが,会場を提供の便宜を図っていただいた早稲田大学創造理工学部 山川 宏 学部長,ならびにお世話を手伝っていただいた研究室の学生さんに感謝の意を表します.


 ASME IDETC&CIE 2007参加報告

 柳澤秀吉、後藤典彦(東京大学)

 200794日から7日にかけて,米国・ラスベガスにて 2007 International Design Engineering Technical Conferences & Computers and Information In Engineering Conferenceが開催された.本国際会議は,米国機械学会ASMEが主催する設計工学関連の複数の会議が合同で毎年行われているのもである.今回は,13の会議・シンポジウムの合同で開催された.この中で,設計工学・システム部門に関係する会議としては,33rd Design Automation Conference (DAC) 27th Computers and Information in Engineering Conference (CIE) 19th International Conference on Design Theory and Methodology (DTM) 12th Design for Manufacturing and the Life Cycle Conference (DFMLC) 4th Symposium on International Design and Design Education (DEC) などが挙げられる.全体で,275のセッション,1219の講演があり,参加者からは活発な議論が行われた.Technical session(講演)の他にも,10WorkshopTutorialが行われた. 

 このように規模が大きく,多くのセッションが並行して行われるため,すべてのセッションを網羅的に報告することは難しい.そこで,本報告では,筆者が実際に出席し,興味深い内容であったセッションについて報告したい.なお,筆者の専門は感性設計であり,主に設計の人間に関わる側面に着目した観点からの報告であることをあらかじめご理解いただきたい.

 この観点からは,前回までと比べて今回の会議では,EmotionHumanといったキーワードを含むSessionWorkshopが目立った.中でも特記すべき点は,19thCIEにおいてEmotional Engineeringに関するWorkshop3つのTechnical Session,およびPannel disscussionが新しく加わったことである.

 まず,初日の94日には,Workshop"Issue of Emotion in Design and Engineering"が開催された.初日の早朝8時にも関わらず,40名ほどの参加者で会場は満席状態であり,Emotional engineeringという新しい設計研究の分野に対する関心の高さが伺えた.Workshopでは,まずOrganizerであるStanford大学の福田収一先生から,なぜ今,Emotional Engineeringが設計において重要になってきているかについて,Masllowの欲求説の新しい解釈を交えながらの講演があった.次いで,筆者が,設計において感性品質を定量化する技術を,実例を交えて紹介した後,感性の多様性と潜在性の二つの問題を指摘し,それに対する筆者の研究の特徴を紹介した.会場からは,特に感性の潜在性に関する議論があった.Stanford大のDr. Ade Mabogunjeからは,脳の辺縁系(Limbic)の処理系の観点からEmotionを説明し,工学系チームワーキングの理解へと議論を展開させていた.Stanford大のProf. Douglass Wildeからは,プロジェクトチームの構成において,メンバー個人の性格の多様性が重要である点が指摘された.そして,実際にStanford大で実施されているME310と呼ばれるPBL(Project Based Learnning)のクラスのチーム構成に応用し,その結果として,米国内の設計に関する賞の割合が増加した結果が示された.最後に,Helsinki工科大のLiisa Polastoから,Stanford大のME310のプロジェクトでのEmotional Engineeringの実践例として,実際に設計・試作したE-moについての紹介があった.これは,リストバンド型の携帯装置であり,感情の喚起レベルを計測し,その情報を相互にチームメンバーと交換することにより,異文化で多様なチームの感情的な気づきを促進させ,コミュニケーションを潤滑にする新しいタイプのデバイスである.以上講演の間には,会場から多くの活発な質疑が行われ,4時間もの長時間であったにもかかわらず休憩無しで行い,むしろ時間が足りないほどであった.

 6日の午後には,Technical session: CIE-10-1 Emotional Engineeringが行われた.本セッションは非常に参加者が多く,立ち見や,最前列の前の空間に座りこんで聴く人まで見受けられた.Delft工科大のProf. Imre Horvathから,Emotional EnineeringSystem Engineeringを組み合わせたアプローチによるバイクのデザインに関する発表があった.筆者からは,東大設計研と東芝の大富浩一氏らとの共同研究である「製品音のデザイン」のプロジェクトにおいて,感性の多様性を定量化し,音の感性品質を定量的に指標化する手法の発表を行った.香川大の荒川雅生先生からは,画像処理を用いた感性工学のアプローチの紹介があり,インテリアデザインにおける応用例が示された.慶応大の浅沼氏からは設計のモデリング手法の体系的な分類に関する発表があった.Delft工科大のElvin Karanaからは,形状が材質に及ぼす感性的な影響についての発表がなされた.

 最終日の7日には,午前にCIE10-2,午後にCIE10-3にてEmotional Engineeringのセッションが行われた.CIE10-2において,筆者から,潜在感性を喚起させる形状創成システムの発表を行った.同志社大の大久保先生からは三次元形状評価のための身体的コラボレーションシステムの紹介があった.伊Politecno di MilanoMonica Bordegoniは,デザイナが感覚的に3次元モデルを形成するためには触覚的なインタラクションが必要であることを指摘し,触覚デバイスによる形状モデリングのプロトタイプに関する紹介があった.慶応大の青山英樹先生からは,仮想空間における三次元アバタの顔感情を合成するシステムの紹介があった.独Paderborn大のNatacha Esauからは,顔画像から合成的な感情を検出するシステムの紹介があった.午後のCIE10-3では,Stanford大のProf. Douglass Wildeや,Sungkyunkan大のYong Se Kimなどから,チームワークにおける感情や創造性に関する研究の紹介がなされた.また,Pannel session: Emotional Interactions and Entertainmentでは,同志社大の大久保先生からEmotion and Entertaiment Engineeringと題して,ロボットのうなずき動作がコミュニケーションを促進させる研究が紹介された.東芝の大富氏からは,製品設計におけるDelight品質の重要性と,その一例としての製品音のデザインに関する研究の紹介がなされた.

 以上のTechnical sessionWorkshopは,日本から多くの発表者があり,それに対して多くの欧米の聴講者が興味を持ち,参加,活発な議論を得るという構図であった.感情や感性の問題は,文化によってそのとらえ方が大きく異なり,東洋と西洋の考え方の違いが議論になるシーンもしばしば見かけた.グローバル化する社会におけるもの作りでは,異文化の感性や価値観の理解が非常に重要であり,その意味でも今回の会議は非常に有意義であったと思う.

 CIEだけでなく,DACDTMにおいても,人間系に関するいくつかのセッションが見られた.例えば,DTM-1 Design behavior study and cognitive modelingDTM-5 Needs understanding and preferenceDAC-21 Designing for human variabilityなどである.また,5日に行われたKeynote speech: "Shaking Money Tree-Funding at NSF"では,Engineering Design Programの全体的な方向性の中に,”Definition of preference”,”human wants and experience”,”Customer preference”といったキーワードが随所に見られた.いかに顧客の嗜好や感性を把握し,それらを満足させる設計をするかが一つの項目になっており,米国においても,これらの研究に対する関心が見受けられた.

 

 


(報告者:柳澤秀吉)


初めての国際会議参加 体験記~学生の視点から~(報告者:東京大学 後藤典彦)

9/2の夕方、東京を出発し、現地時間で9/2の昼、ラスベガス入り。ラスベガスの町には、自由の女神やら、エッフェル塔やら、ピラミッドなどのいろいろなモニュメントがあり、巨大なディズニーランド、という第一印象だった。なんだか節操がなく、寄せ集めた感も否めなかったが。その日は旅で疲れたため、ホテルに入って速攻寝た。

9/4より学会だったので、翌日9/3はフリー。というわけで、この日は、近くのグランドキャニオンに行ってきた。ヘリコプターのツアーで行ったのだが、ヘリコプターに乗ってから、自分が高所恐怖症だったことを思い出し、なんだか気が遠くなりかけた。しかし、出発5分後に「まぁここで落ちたら、100%助からないだろう」と考えると、なんだか気が楽になった。

見てきたグランドキャニオンの光景はまさしく「壮大」という言葉がぴったりだった。大きすぎて、とても自分を、人間を小さく感じる。グランドキャニオンがあった場所は、大昔、海だったらしい。一面、砂しかない場所が昔は海だったなんて、とても信じられない。どうでもいいが、日本語能力がないため、見たときの感動を文章でうまくつづれないのが残念である。

9/4からの学会は、Design Automation Conference (DAC)、International Conference on Design Theory and Methodology (DTM) 、Design for Manufacturing and the Life Cycle Conference (DFMLC) を中心に、様々なセッションに参加。プレゼンテイターの英語が早口すぎて、付いていくので精一杯。人の発表が終わる度に「で、この研究の要点は何だろう?」と自問自答したが、まったくわからなかった。ただ、聞いていて面白そうな発表はいくつかあった。しかし、夜にそれを先生に話す度に、先生は「そんなの昔からあるのでは?」とおっしゃっていた。ちょっとがっかりである。

そんな風に学会発表を聞いたり、夜にカジノで負けたりしているうちに、僕の発表日である9/7がやってきた。
9/7の金曜日の朝、ホテルの部屋で最後の発表練習をした後、会場入り。僕の発表は10:30~12:00のセッションの最後であった。最初にチェアマンと挨拶、打ち合わせするも、英語が半分くらい聞き取れず、焦った。

僕が主に参加していたDAC、DFMLC、DTMのうち、 DAC、DFMLCは論文数が多かったため、複数の部屋で同時開催されていた(そのため、聞きたかった発表が同時に行われ、いくつか聞けないものがあったので、残念であった)。それに比べて、僕のセッションが属するDTMは、部屋が1箇所のみで開催されていたため、他のセッションより多くの人数が聴講していた。そして、それが僕の緊張をより高めた。

セッションが始まり、他の人の発表が始まった。このセッションに限っては、自分の発表のことばかりが頭をぐるぐる回って、まったく発表の内容が頭に入ってこなかった。で、気づいたら、僕の順番になっていた。チェアマンに紹介され、いよいよ発表開始。自分の第一声が思った以上に大きくて驚いた意外は特に何事もなく進行させることができた。ホテルの部屋で何度も練習したおかげだろう。

発表は、なんとか無難にまとめられた(と思う)が、その後の質問で大変苦労した。まず、英語が完全に聞き取れない。「Could you repeat your question?」と言う自分がちょっと情けない。また、2番目の人に「君の研究と良く似ている既存研究があるけど、既存それとどう違うの?」と突っ込まれた。しかし、僕はその既存研究を知らなかったので、かなり焦った。その場はおそらく支離滅裂なことを受け答えしたのだろう、何を言ったのか、まったく記憶にない。最後に「Am I answering your question?」と言ったら、苦笑いしながらOKしてくれたので、何とかその場を逃れることができた。

自分の発表が終わってから、既存研究について質問した人のところで、研究の内容について詳しく質問したところ、丁寧に教えてくれた。正確な論文名、著者名は覚えていなかったそうだが、論文タイトルの一部を教えてくれた。きっと、この既存研究が達成できなかったこと、自分の研究との違いを明確にすることが、今後の研究の方向性を定めるのに、役に立っていくことと思う。今回の学会の最大の収穫だった。


 2008年度年次大会 報告

 山崎光悦 (金沢大学)、野間口 大 (大阪大学)、伊藤宏幸 (ダイキン工業株式会社)

日本機械学会創立110周年記念 2007年度年次大会 (Mechanical Engineering Congress, 2007 Japan) における設計工学・システム部門の活動報告

9月10日(月):伊藤宏幸 (ダイキン工業株式会社)

 設計工学・システム部門は,2007年9月9日(日)~12日(水),関西大学にて開催された年次大会において,先端技術フォーラム×2(単独×1,合同×1),ワークショップ×1 (合同×1),基調講演×1,オーガナイズドセッション×5 (単独×2,横断×3),一般セッション×1を企画・実行した.また,部門代表として梅田靖先生(大阪大学)が実行委員を務められ,市民フォーラム「集え,理系を目指す女子中高生!企業や大学の第一線で輝く助成機械技術者・研究者たちからの声」<9/9(日)開催>の企画などに携わられた.以下に,第31室を中心とした様子を報告する.

 設計工学・システム部門から講演を予定している複数の人々が,前週(9月4日~9月7日)開催のASME IDETC/CIE 2007に参加し,帰国が9月9日夕方以降となることが予想されたため,関西地区以外の方々の便宜を考え,9月10日午後からの開催を予め実行委員会に申し出た.



13:15-14:00 J22 設計における情報共有・ナレッジマネジメント 発表3件
 没入型仮想共有環境,ねじの塑性域締結シミュレーション,物理量次元インデクシングを用いた故障木解析についての発表があり,熟練した設計者や作業者のノウハウの物理的背景表出化を起点とする新たな知識創造の諸方式について論じられた.

14:15-15:15 K13 基調講演「Design Thinkingについての試論」前部門長 藤田喜久雄先生(大阪大学)
 IDEOのCEO兼社長であるTimothy Brownの”Design Thinking”をキーワードとして,21世紀に入ってからのイノベーションに関する欧米の政府関係プロジェクトの概要とともに我が国のイノベーション25に言及しつつ,経済の広い範囲に影響を及ぼす「デザイン」の役割が俯瞰的に論じられた.より具体的な構図を示すために講演冒頭に紹介されたMihail C. Roco,William Sims Bainbridgeらによる”Converging Technologies”に関するレポートでは,個別に深化の進む専門知識が人間のパフォーマンス拡大に資することを求めており,その統合にあたっては,価値創造に繋ぐための認知科学の重要性が述べられている.これと親和性が高くメタ技術とも定義できる「デザイン」への期待は大きい.続いて,“Design Thinking”の視点からのイノベーションの全体像やInspiration, Ideation, Implementationの3つの局面が,プロセス全体におけるStorytellingやPrototypingの意義や作用とともに示され,B. Joseph Pine II, Andrew C. Boynton, Bart Victorによる”The Product-Process Change Matrix”上のスパイラル・フローにおけるドライビング・フォースの実践論的仕掛けとして機能することが浮き彫りとなった.講演の最後に,「プロダクトデザイン」の授業内容洗練化に向けた3年間の変遷を始めとする大阪大学における大学院教育の数々の施策とともに,「要」となる「複合システムデザインのためのX型人材育成」の骨子が紹介され,前半のマクロ動向に関する情報ならびに考察が教育の場に活かされている様子が明らかとなった.


15:30-17:00 S54 ものづくり設計力の課題と実践 発表5件
 2030年を視野に入れた製品開発に必要とされる設計技術変遷の展望,3次元CADを利用した検証を取り入れた概念設計の教育効果,UDを目的とした「はさみ」のデザインに応用されたコンプライアントメカニズムの最適設計,電機製品の構造最適設計を促進する要件と処理フロー,受注生産品の納入リードタイム短縮と在庫コスト低減のための部品共通化法についての発表があり,実用性や適用範囲などに関する活発な議論があった.なお,本セッションでは事前に届出のあった発表中止が1件あり,その時間を活用して,発表者の一人でもある小木曽望先生(大阪府立大学)から,別途,「旋回運動機能を有する人力飛行機」のデザインについて話題提供を頂き,操縦者の体型・体力に適応した設計や旋回からの引き起こし時の難しさについて討論した.

18:30-20:00 部門同好会 ( 生産加工・工作機械部門,生産システム部門と合同開催 )
 関西大学凛風館2Fダイニングホール・ディノアにて開催.写真中央は,乾杯の発声をされる当部門長の青山和浩先生(東京大学).



9月11日(火): 野間口大 (大阪大学)
9:15-11:00 G12 設計工学・システム 発表7件
 設計工学・システム部門の一般セッションであり,様々なシステムの開発例やその設計方法が論じられた.具体的には電子マネーにおける一定額自動決済システム,反復重点サンプリング法による構造信頼性解析法,自動車の通過時にのみ隆起する可動式ハンプ,バイパスオリフィス式油圧緩衝器およびMR緩衝器の性能評価のための力学モデルについての発表があった.

11:15-12:00 S59-1 ヒューマンインタフェース(1) 発表3件
13:00-14:00 S59-2 ヒューマンインタフェース(2) 発表4件
3次元描画を用いたロボット誘導インタフェース,MRI環境下で使用可能な身体的インタフェース,バイオロジカルモーションに着目したイメージジェネレータ,調和振動子群を用いた空間モデルによる形状創生,バーチャル空間を利用したグループウォーキング支援システム,うなずき反応を視触覚提示する音声駆動型プレゼンテーション支援システム,視線情報を付与した身体的バーチャルコミュニケーションシステムについての発表があった.

14:15-15:45 F08 先端技術ファーラム「ヒューマンインタフェースデザインのフロンティア」 企画・司会 渡辺富夫先生(岡山県立大学)
ヒューマンインタフェースの分野では,人とのかかわりを通じて場を共につくるための支援技術やその設計方法論についての研究が注目を集めている.本フォーラムでは下記の5名の先生方に,感性に基づくヒューマンインタフェース設計,身体的インタラクション・コミュニケーション技術,場の設計論など,最先端のヒューマンインタフェースデザインを解説いただいた.短い時間ではあったが,ヒューマンインタフェースデザインについての活発な議論が行われ,この分野の今後の展開を期待させるものであった.
1.「認知における部分と全体の関連性」
  松岡由幸先生(慶應義塾大学)
2.「表情工学でインタフェースをデザインする」
  萩原一郎先生(東京工業大学)
3.「感性インタフェースをデザインする」
  橋本周司先生(早稲田大学)
4.「身体的インタラクションをデザインする」
  渡辺富夫先生(岡山県立大学)
5.「共創の場をデザインする」
  三輪敬之先生(早稲田大学)

9/12(水) F09,J03-1,J03-2,J03-3: 山崎光悦 (金沢大学)

F09
大会3日目9月21日(水)に開催した先端技術フォーラム「最適化技術の展開と応用(続編)」は,昨年,熊本大学で開催された年次大会2006での先端技術フォーラム「最適化技術の展開と応用」が極めて好評であったことから,その続報として本記事の報告者山崎と西脇眞二先生(京大)とで企画したものです.フォーラムでは,企画者自らが大学側代表として最適技術全般の概要と最新の形状最適化法について解説しました.また企業の製造部門に所属する3名の講師からは,流体機械や家電製品での先端的な最適技術,品質工学の活用事例,電磁場での形態最適化の開発例が,またソフトベンダーに所属する講師からは商用最適化ソフトウエアの最新の動向がそれぞれ解説,紹介されました.朝早くからの企画にも拘わらず多くの来場者(ピーク時で約50名以上)があり,企業からの参加者も含め熱心な質疑も展開されました.最適化法や品質工学に引き続き高い関心が寄せられていることを実感したフォーラムでした.

J03-1,J03-2,J03-3:
最近,年次大会で恒例となっているジョイト・セッション「解析・設計の高度化・最適化」を本年も計算力学部門との共同企画で開催し,3日目午後の3つのセッションを担当し15件の公演発表があった.その内容を整理すると,新分野の解析法の提案や形態最適化を始めとする最適化法を新課題や新分野に広げるための基礎研究と,従来法では解決困難であった諸問題に適用するための応答曲面法などの手法開発に関する研究内容が主流であった.また企業の発表では,製品設計・開発へのCAEや最適化法の活用事例,設計システム開発の事例などが報告された.


 第17回設計工学・システム部門講演会開催案内

 

開催日 2007年10月31日(水)~11月2日(金)
会場 仙台市戦災復興記念館
宮城県仙台市青葉区大町2-12-1
詳細はD&S2007ホームページをご確認下さい.
https://www.jsme.or.jp/dsd/ds2007/



 EcoDesign2007国際シンポジウム 開催案内

 

「第5回 環境調和型設計とインバース・
マニュファクチャリングに関する国際会議」

~エネルギー危機時代における、社会システム、
ビジネス戦略、革新技術のエコデザインによる統合~

開催日 2007年12月10日(月)~12月13日(木)
会場 東京:日本科学未来館
http://www.miraikan.jst.go.jp/
詳細はEcoDesign2007ホームページをご確認下さい.
http://www.ecodenet.com/ed2007/Ja/index.htm

 


 

 書籍紹介:初歩から学ぶ設計手法 

 大富 浩一 (東芝)

 

 

初歩から学ぶ設計手法―多彩なツールにふり回されないための、戦略的設計開発の考え方 (大富 浩一 著) が、工業調査会より発売されました。

ISBN-10: 4769321872
ISBN-13: 978-4769321873

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 機械工学便覧デザイン編β1「設計工学」 

 

 

―本書の主要目次―
第1章 総 論 1・1 設計とは/1・2 設計の構成/1・3 設計工学の形成と展開/1・4 β1「設計工学」編の企画と編集/1・5 β1「設計工学」編の内容と使い方

第2章 設計情報の表現と伝達 2・1 製図/2・2 三次元形状処理/2・3 設計情報としての形状/2・4 視覚情報としての形状の処理/2・5 設計における情報管理

第3章 設計のための個別方法論 3・1 企画のための方法/3・2 機能と品質の設計/3・3 DfX/3・4 信頼性の設計/3・5 最適設計/3・6 ライフサイクル設計/3・7 シミュレーションと設計/3・8 ラピッドプロトタイピング/3・9 工業デザインのための方法/3・10 システマティックデザイン

第4章 設計の管理 4・1 コストの管理/4・2 設計開発プロジェクト計画と管理/4・3 設計プロセスのコンカレント化/4・4 製品系列の統合化と設計

第5章 設計者のために 5・1 設計学/5・2 設計教育の方法/5・3 将来の設計


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発行日:2007年10月5日

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