公開研究会・講演会


堤 一郎(日本労働研究機構・研究所)


 2001年11月17日・18日の両日,大分市の大分工業高等専門学校を会場に,技術と社会部門企画「公開研究会・講演会・見学会」が開催された.17日(土)は研究会・講演会で夕刻からは懇親会,翌18日はバスをチャーターした見学会であった.

 午前中の公開研究会は,当部門の技術と社会連関研究会(主査:小西義昭,幹事:吉田喜一)と機械技術継承調査研究会(主査:川上顕治郎,幹事:高橋征生・堤 一郎)の二つが担当した.前者は2001年5月に終了した産業・機械工学連関研究会の活動を基に,その成果報告も兼ねた研究発表を主体とし,1)小西義昭(日機装):「産業・機械工学連関研究会報告から」,2)吉田喜一(都立航空工業高専):「ものつくりと技術教育の現状」が,一方後者は自然エネルギ利用技術を取り上げ,風車と水車の歴史や構造の変遷,地域性や文化との関わりにもふれながら,1)川上顕治郎(多摩美術大学):「自然エネルギー利用の例(水車と風車)」,2)佐藤建吉(千葉大学):「房総の揚水風車の復元とシステム解析」がテーマであった.いずれの会場も,フロアからは活発な質疑がなされた.


小西義昭氏   吉田喜一氏


川上顕治郎氏  佐藤建吉氏

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 昼食後,二件の特別講演がなされた.まず始めは平野喜三郎先生(大分工業高専)による「大分の石橋と教育」,続いて池森 寛先生(西日本工業大学)による「水車づくりの伝統技術を探る」である.平野先生は大分県内の石橋群を対象とした調査研究から,その構造や築造法を解説され,教育との関わりにも言及された.一方,池森先生は九州地方を対象とした水車の現地調査結果を背景に,水車大工の話も交えながら伝統的技術・技能の継承にもふれられた.会場は多くの参加者が興味深く講演を聞き,熱気のこもった特別講演会であった.


平野喜三郎氏   池森 寛氏

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 この後,オーガナイズドセッションに移った.一つは技術教育・工業教育(オーガナイザ:渡邉辰郎・梅津清二),もう一つは機械技術史・工学史(オーガナイザ:堤 一郎・緒方正則)で,講演発表は前者が12件,後者が3件であった.両セッションともに活発な質疑応答がなされた.この日予定された全ての行事が終了し,迎えのバスでJR日豊線高城駅近くの懇親会場に移動し,そこで参加者相互が講演会会場でなされた議論の続きや技術・社会・人・教育等について意見交換し,一層の懇親を深めた.


講演会の模様


懇親会場にて記念撮影


 翌18日(日)は天候に恵まれ,午前9時にJR大分駅前を出発,一路安心院町へと向かった.この町は「鏝絵」とよばれる文化財が多数存在することで知られる.鏝絵は土蔵や家屋の戸袋,壁などに漆喰で描かれたレリーフのことで,平らに塗られた漆喰の平面に職人が鏝を使い薄肉状に盛り上げた浮き彫りを施し彩色したもので,漆喰が生乾きの間に一気に仕上げなければならない高度技能が要求されるすばらしい作品である.同町教育委員会の〆野氏の案内により,町内に残る鏝絵を順に見学したが,いずれも当時の色彩を今に伝え職人の技量を肌で感じることができる傑作ばかりであった.三管領の一つ細川家の菩提寺である妙庵寺で昼食をいただいたが,ここにも見事な鏝絵が室内壁面に残っていた.続いてバスは数多くの石橋群が残る院内町に向かう.橋の上から豊後富士(由布岳)が見える富士見橋(1925年竣工),町内一の高さを誇る荒瀬橋(1913年竣工),町内で一番長い御沓橋(1925年竣工),石橋の貴婦人とよばれる鳥居橋(1916年竣工)の順に見学し,大正時代の石工がすばらしい技をもってつくりあげた見事な石橋群を堪能した.晴天に恵まれた見学会は無事に終了し別府駅前などで解散,帰路についた.

 二日間にわたる部門企画行事に対し,早朝から献身的に尽力された大分工業高専の後藤末弘先生,梅津清二先生を始め同校の先生方と職員の皆様に対し,この場を借りて厚くお礼を申し上げ今年度の行事報告としたい.

※見学会に関する報告は,こちらにもあります.

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日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.12