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“つくえ”の進化

東北大学・大学院工学研究科・博士前期課程1年
                 竹田 陽一

 大学に限らず、高専においても卒業研究が開始される時期になると、所属する研究室に自分の“つくえ”という居場所が決められ、そこが勉強及ぴ研究計画を練る上での基地となる。特に、大学院においてはその生活の中心が自分の“つくえ”になり、実験をするにもアルバイトに行くときも、その原点は“つくえ”に始まる。
 以前先輩とこういう話をしたことがある。その人の“つくえ”を見ると研究室に対する愛着および研究への態度がよくわかるといった内容であった。
 いろいろな人の“つくえ”にはそれぞれ特徴があるが、以下の4つに大別できる。@なにもない机(一見整理されているようだが、生活感がみられない状態)、A研究、実験関係の資料のみおかれた机(研究だけをやりに来ている状態)、B研究関係のみならず趣味の品まで並んだ机(そこでの生活に慣れて、住み着いてきた状態)、Cなにがおかれているのか第3者からは全くわからない机(本人にしか分からないが、もしかしたら整理されているかもしれない状態)である。これらのおもしろい点が、研究室生活になじむにつれて@からBへと徐々に変化していくことである。ただし、Cだけはその個人の性格に起因する点もあると考えられる。確かに、研究室へ仲間入りした頃には置くものもなく、“つくえ”に対する愛着もなかった。しかし、時がたつにつれてそこは“自分の領域”であり“原点”となりつつある。従って、その変化過程を見れば、その人がどの程度研究室に対して愛着心を持っているか、どんな態度で研究に望んでいるかが一目瞭然であるという意見に異議はない。
 これまで学生の“つくえ”に対する考察であったが、それを先生の“つくえ”に拡張してみる。ある先生の“つくえ”は書類及ぴ資料がバーティカル(垂直)にならび、その卓上の空いたスペースは必然的に書類を書くのに最低限の広さしか持たない。一方、別の先生の部屋では、自分の“つくえ”だけではスペースが足りず、テーブルを買い足してその上にホリゾンタル(水平)に書類が並べられている。おそらく、その書類は仕事ごとに整理され、“例の書類”といえばすぐに探し出せるようになってはいるのだろうが…。この整理法も長年の職務から編み出した経験則なのであろうか。確かに、現在進行中の仕事関係の書類はすぐに手の届く机の脇に置いておくのが都合がよい。ある先生はコンピュータの“ゴミ箱”の発想に習って、自分の机の脇に“ゴミ箱”を作り、一度使用した書類はすべてそこに入れる。一月に一度程度そのゴミ箱を開け、ファイルに閉じて書架に入れるか、廃棄するかを検討するそうである。このように先生の“つくえ”には学生でのCを超越した次の段階であると考えられる。そして、これら“つくえ”の形態も様々だが、その“つくえ”を見ることでその先生の性格がうかがい知れるかも分からない。
 これら“つくえ”に見られる様々な形態は個人の性格にも依存するが、大学の研究室においてはおおよそ上述した一連の変化過程、すなわち@〜Cの過程を持つ。私の“つくえ”にも書類がバーティカルあるいはホリゾンタルに積み重なるようになった時、それは一人前の証拠となりうるのであろうか。ここではいくつかの“つくえ”の例を挙げてみたが、あなたの“つくえ”はいったいどのタイプだろうか。是非考察いただきたい。


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