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八戸高専八幡平道中記

八戸工業高等専門学校
機械工学科5年   東  淳一

 私たち八戸高専では、毎年、会員相互の親睦を深め、そのついでに工業施設の見学をし知識も深めてしまえという主旨のもと、キャンプを企画しています。この行事を始めたのが二年前、私が三年生の時です。それ以来、この行事にはずっと参加しているのですが、どうも天候には恵まれないというジンクスがあるようです。一昨年は竜飛崎のウインドパーク見学を予定していましたが、台風の接近によって急遽バンガローのある十和田湖に予定を変更。また、昨年は、小川原湖に一泊の予定で出発、晴天に恵まれたかに見えたのですが帰り仕度の最中に集中豪雨に見舞われ、最後でケチがついてしまいました。
 では今年はどんな事が起こったのでしょうか。場所は、今年こそ見学をしたいということで、地熱発電所のある八幡平に決定しました。案内を出したところ、集まった参加者は学生6人、OB2人、引率4人、そして、引率で我々の顧問である武尾先生の御子息の俊太郎君の13人です。果たしてこの13人どんな珍道中を見せてくれるのでしょうか。
 26日午前9時の集合時間、現地集合のOB2人を除く11人が集結、荷物の積み込みにはいりました。パパと一緒にご到着の俊太郎君、どうも人見知りのご様子であります。それもそのはず、まわりは今まで見たことのないごつい兄ちゃんがいっぱいなのです。少し恐がり加減の俊太郎君と何とか打ち解けようとごついお兄ちゃんがおどける姿はたいそう滑稽なものであったでしょう。そうこうしているうちに出発の記念撮影も終わり、いよいよ出発です。天候は快晴とは行かないまでもまずまずの天気。皆期待に胸を膨らませて旅路につきました。途中で夕飯の材料を買うため、一般道を通っての移動となりました。途中のスーパーでの買出し、夕飯は手間のかからない焼肉です。この買出しで各人の性格が浮き彫りとなりました。味を求めて、牛肉の中でも高い部位を選ぶ者、質より量とでも言いたげにラム肉を大量に持ってくる者、鳥の砂肝が食いたいだとか、タレは辛くなければいやだという奴、ほんとに人間いろんなのがいるものです。これらの希望が一通りかなってしまい、焼き肉と言うよりは闇肉と言った方がいいような奇々怪々な材料が買い込まれ、一路八幡平へ。頂上でOBと合流し、八幡昭一周の旅へ出た我々は、既に雲の中におり、まわりは真っ白で前後不覚の状態であります。ただでさえ寒いのに雨まで降ってきて、そりゃもうひどい状態です。展望台にあがったって沼なんか見えやしません。それでも、広い湿地帯や食虫植物など、始めてみる物に感動し、驚嘆し、それなりに山というものを味わえたのはよい経験でありました。
 その後このキャンプの最大の目的の一つである見学に入りました。山頂を降りて東北大学Γ計画実験場に着く頃には、雨は止み青空がのぞき始めていました。そして松川地熱発電所。辺りには硫黄の臭いが立ち込め、それが地下に息を潜める莫大なエネルギーの存在を感じさせます。巨大な冷却塔、吹き出す蒸気、見るものどれもこれもが、圧倒的な存在感を持って目に飛び込んできます。所々には、実際に蒸気を吹き出して風車を回してみせるといった見学者用の説明をするブースもあり、大変ためになりました。
 見学も終わり、後は会員の親睦を深めるための時間です。松川温泉キャンプ場に到着、露天風呂で汗を流し、テントの設営と夕飯の支度です。支度が終わってさ食べようかという頃には辺りは真っ暗になっており、まさに闇肉といった状況になっています。キャンプでしか食べることのできない料理です。そうこうしているうちに、気の早い連中が花火に火をつけ始め、騒ぎは最高潮となり、その後は騒ぎ疲れたのか一気に終息に向かいました。翌日の起床は皆眠そうな目をしながらも、すっきりした表情ですぐに朝食の準備にとりかかり、食事の後すぐに撤収にかかったのです。そのとき額に冷たいものが、ついに雨が降りだし急ぎの出発となってしまいました。途中県民の森にて、カップめんとすいかで昼食をとり温泉であったまってから帰路へとついたのです。帰りは激しい雨に襲われ、来るときは穏やかであった川の流れは濁流となり地獄の様相を呈しています。結局、今年も雨にたたられたこの行事でしたが、キャンプ中にこの雨に当たらなかったのが幸いでした。
 今年はまた雨に降られてしまったものの、やっと念願の見学もでき非常に充実したキャンプになりました。普段あまり接したことのない下級生の会員達の本性がかいま見えたり、普段は見えない先生方の自然体の姿を見ることができたりと楽しいこの行事、皆さんの学校でもやってみてはいかがでしょう。


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