目次へ戻る   前のページ   次のページ


学生会の諸君に期待する

日本機械学会東北支部長
    麻 生 和 夫

 私がまだ学生だった頃に、石油はあと30年で枯渇してしまうので、早急に代替エネルギーを開発しなければならいと叫ばれた。それから40年たった今日、石油の消費量が当時より急増しているにもかかわらず、石油の寿命はあと約30年と言われている。この矛盾は何に由来するのだろうか。それは、石油を探す技術が進歩して石油の確認できる埋蔵量が増加したこと、石油を採取する技術が進歩して採取できる石油の埋蔵量が増加したこと、さらに石油の回収・輸送技術の進歩により石油の生産コストを下げることができたことなどが挙げられる。この事実は、科学技術の進歩が人類の繁栄にいかに貢献するかを端的にものがたっている。そして、その科学技術の進歩の主役が、諸君がこれからなるであろう若い技術者である。何故ならば、技術史をひもとけば、これまでの偉大な発明・発見の殆どすべてが20代から30代前半の若い科学者によってなされていることがわかるからである。
 資源に乏しいわが国が、今後とも経済的に豊かな国として世界の主導的立場を維持するためには、技術立国として身を処するよりほかわない。それには、先進的な技術を保有し、また、つねに新しい先進技術を開発しなければならない。さらにそのためには、若い技術者のエネルギーと色々な分野の技術者との交流・共同作業が不可欠である。確かに、機械工学は産業技術分野の基幹分野ではあるが、その技術だけでは立ち行かない時代となっている。日本人は、どちらかと言うと、伝統的に鎖国的・保守的思想をもち、欧米の技術者ほど共同作業に長けていない。したがって、学生時代から、できるだけ多くの人、しかもできるだけ多くの分野の人との交流の輪を広げ、多様な知識と体験を会得するよう心がけた方が良い。その第1歩が日本機械学会の学生会で同じ志をもつ友人との交流であり、この会を通して、いろんな人のものの考え方を体験し、相互の親睦を深めるとともに他人との協調のあり方について学び、情報の交換をおこなって知識を広め、お互いに刺激を与えることによって今後の勉学に意欲を燃やして欲しい。しかしながら、残念なことに学生員の数が最近減少している。日本機械学会は、この学生会の重要性を認識し、現在、学生員の増強に力を入れており、一人でも多くの学生が学生員になることを望んでいる。また、諸君達の方でも、仲間に学小会の機能について理解を深めていただき、日本機械学会の学生員となるよう勧誘していただきたい。
 最後に、東北学生会の今後の益々の発展を切望するとともに、当学生会の会員よりわが国の明日を担う若い優秀な技術者が巣立って行くことを期待してやまない。なお、これまで述べてきた趣旨より、他学会の学生会との交流も盛んになることを心から望む次第である。

(秋田大学鉱山学部機械工学科教授 麻生和夫)



目次へ戻る   前のページ   次のページ