No.219 地球について想う
2024年度庶務理事 児玉 勇司〔横浜ゴム(株)〕
JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。
2024年度庶務理事 児玉 勇司〔横浜ゴム(株)〕
No.219 地球について想う
小学生の頃から、超自然科学・超心理学(いわゆるオカルト系)の話題に興味があり、今でもUFO、UMA、心霊現象、超能力、予言、超古代文明といった言葉を聞くだけで、ワクワクしてしまいます。昨今は、インターネットや動画でその手の様々な話題にふれることができ、つくづく良い時代になったと感じています。高校から現在に至るまで、機械工学に関わってきた人間としては、やや変わった趣向かもしれませんが、古くはニュートンから、最近ではジョセフソン素子のブライアン・ジョセフソンなど、著名な物理学者が超自然科学・超心理学に携わっていることから、物理学とオカルトは意外と親和性があるのかもしれない…と自分の趣味を正当化したりしています。
残念ながら、今までの人生においてUFOも見たこともなければ、不思議こともほとんど体験したことがない私ですが、長らく興味を引き付けてやまない話題があります。それは「地球空洞説」と呼ばれるものです。これはその文言通り、地球の内部には巨大な空間が広がっており、その空洞には海や陸地、太陽だけでなく、さらには動植物が存在している、といったかなり大胆な説です。イメージとしては、ジュール・ベルヌの有名なSF小説「地底旅行」の世界ですね。
SFとしては面白い説ですが、実際にそのような空間が地球の中に存在しうるのでしょうか? 誰も観測できていないので、証明はできませんが、ここで少し空想(妄想)をしてみようかと思います。
私の高校は工業高校であったため、機械科には鋳造の実習がありました。自分で鋳型となる砂型を製作し、炉で溶かしたアルミをその鋳型に流し込んで、冷えたら型を壊して鋳造品を確認する、といった実習です。せっかくなので、仲間よりやや大きめの1リットルくらいの型を作り、先生の指導のもと、無事、アルミを流し込むことができました。しかし、冷却後に型から取り出した鋳造品の表面に数ミリから1センチ程度の鋳巣と呼ばれる空洞ができてしまっており、鋳造の難しさを実感した実習でした。この体験から、手のひらサイズの鋳造品でも数ミリ程度の空洞が幾つもできてしまうのだから、生成過程は鋳造工程とは大きく異なるとはいえ、地球の中にもある程度の空洞が存在していても不思議ではないのかな…と勝手に妄想しています。
ところで、地球表面の70%が海になっており、他の惑星と比較し地球は水の惑星ともいわれますが、いったいどのくらいの水が地球にはあるのでしょうか?よく使われる東京ドーム何個分といった例えはもはや役には立たないので、ここでは地球を直径1mの球と仮定してみます。この直径1mの地球上にあるすべての水を一ヵ所に集めて水玉にしたとすると、その水玉の直径は約10.8cm。さらに我々の生活に必要な淡水量に限ると、水玉の直径は約2.1cm、その淡水の内、新鮮で飲むことができる水では、直径はわずか約4mmとなります(例えば、アメリカ地質調査所(USGS)の”All of Earth’s water in a single sphere!“の画像がイメージしやすいです)。ちなみに、地球上の大気層は直径1mの地球では表面の約1mmの範囲でしかなく(地上から10km程度を想定)、その空気を水と同様に一ヵ所にまとめると、その直径は約16cmになります。さらに一ヵ所にまとめる空気を日本列島上に限れば、直径は約7mmになります。
地球の内部へ話題を戻すと、直径1mの地球の中に、10mmくらいの空洞があって、そこに空気も水もあれば、かなりの数の生物が暮らすことができそうな気がします。鋳巣のアナロジーを無理やり適用すると、地球の中には大小様々な空洞が存在しており、その中に独自の生態系が進化しているかもしれない…とまあこんな感じで、私の超自然科学的妄想は続くのですが、きりがないのでこの辺で終わりにしましょう。
地球内部については宇宙よりも知られていないといわれていますが、実際、地下掘削の世界記録は約12kmであり、これも直径1mの地球に換算すると、地表から1mm程度しか実測できていないことになります。私たちは足元の母なる地球について、ほとんど理解できていないといえるのではないでしょうか。そういえば、地球内部はもとより、私自身、自分の体の内部もよく理解していないことに気づきました。今年はきちんと人間ドックを受けてみようかと思います。