一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.215 博物館で機械工学の偉大さに触れる
2023年度財務理事 中川 泰忠〔(株)東芝〕

JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。


2023年度財務理事 中川 泰忠〔(株)東芝〕

No.215 博物館で機械工学の偉大さに触れる

 


企業で開発した製品や製造設備などは、時代が経過すると現物が残っていないことも多いと思います。一方いくつかの博物館では、実物で機械工学の素晴らしさを感じることができます。ここでは、そういった観点で印象に残った博物館をご紹介したいと思います。

上野の国立科学博物館は自然科学の印象が強いかもしれませんが、日本における機械工学の歴史にも触れることができます。たとえば幕末から明治初期に日本で製造されたボイラー、幕府がオランダから購入した堅削盤、イギリスから購入し帝國大学工科大学で研究に使われたオットー4サイクル内燃機関、最も古い国産工作機械である池貝鉄工所製第1号旋盤、日本最初の事業用火力発電所で使用されたエジソンダイナモ、豊田佐吉氏が最初の営業試験用に製作したG型自動織機、東京帝国大学航空研究所による機械式の九元連立方程式求解機などが展示されています。同博物館の企画展は混んでいることが多いと思いますが、上記が展示されている常設展は比較的空いているので、機械工学の歩みをじっくり堪能できるのではないでしょうか。また千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館では、先史・古代から現代まで6つの巨大な展示室で歴史学・考古学・民俗学について展示されており、膨大な展示品に圧倒されます。この第5展示室では、明治政府の近代化政策から、交通・運輸網の整備、近代製鉄の開始などについて知ることができます。さらに東京都江東区青海にある科学技術振興機構が運営する日本科学未来館では、ロボット開発の歩みや最先端のアンドロイドがわかりやすく展示されています。

以上ご紹介した国立の施設に加えて、企業なども素晴らしい博物館を運営しています。たとえば日本機械学会の本部がある飯田橋から近いトッパン小石川本社ビルには印刷博物館があります。エントランスでは壁全面を使った壮大な印刷の年表に圧倒され、印刷に関する機械も展示されており、どのような技術革新が行われてきたかよくわかると思います。また豊洲IHIビルにあるi-museでは、原油タンカー、LNGタンク、明石海峡大橋主塔、ターボファンエンジン、イプシロンロケットなどが模型で展示されています。スタイリッシュな大型デジタルモニター(モノリス)での説明も交えて、船、宇宙などへの機械工学の貢献が良くわかるのではないかと思います。さらに東京都北区王子にある紙の博物館は、渋沢栄一主導により設立された抄紙会社(後の王子製紙)跡地にあり、和紙文化や製紙産業の歴史に触れることができます。明治初期の紙の主な原料であった木綿等の破布から、パルプを作るための釜や現在広く使われる長網抄紙機の原型となった世界最初の抄紙機の模型が展示されています。隣接する渋沢栄一資料館を合わせて訪ねてみるのもお勧めします。

その他、鉄道系では各社が運営する博物館がありメディアにも多く取り上げられているのでここでは割愛しますが、私の勤務地の横浜には、船に関して展示している博物館がいくつかあります。みなとみらいにある横浜みなと博物館では、ガントリークレーンシミュレーターや横浜港港湾荷役模型が、中区にある日本郵船博物館は戦前の商船を見事に再現した模型などが展示されています。日本郵船博物館は残念ながら現在は休館中ですが、このような一時的な閉館もありますし、企業運営の博物館は平日のみ開館などあるので、事前にHPなどで確認したうえで訪問することをお勧めします。