一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.213 ChatGPTに思う
2022年度企画理事 松本 健郎[名古屋大学 教授]

JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。


2022年度企画理事 松本 健郎[名古屋大学 教授]

No.213 ChatGPTに思う

 

 


ChatGPT、ご存知でしょうか? 今、爆発的広まりを見せている対話型人工知能で、サイトにアクセスし、ボックスに質問(何語で書いても自動判別するようです)を書くと、それらしい答えを返してくれるものです。2022年11月30日に公開され、僅か2ヶ月でアクティブユーザが1億人を突破、これでGoogleの時代が終わるとか、仕事のやりかたがガラリと変わるとか、学校のレポートの採点はどうするかとか、様々な議論が巻き起こっています。どのような質問に対しても自然に感じられる回答を生成するため、正しいことを言っているように見えるのですが、実際には、さに非ず。質問によってはとても楽しい回答を作ってくれます。

まず、「松本健郎って誰?」と聞くと、『松本健郎は、日本のプログラマーであり、Rubyプログラミング言語の共同創始者の一人です。松本氏は、1971年に長野県松本市で生まれ、名古屋工業大学を卒業後、名古屋のシステム開発企業に就職しました。その後、独立してフリーランスのプログラマーとなり、1993年にRubyの開発を始めました・・・』と来ました。私は1960年北海道札幌市生まれ。名工大に勤務していましたが、卒業はしていません。一方、Rubyの開発者はWikipediaによると、1965年大阪生まれ、筑波大学卒業の松本行弘さんだそうです。

そこで、「バイオメカニクスの松本健郎ですが?」と限定すると、『松本健郎氏は、バイオメカニクスという分野で研究をしている日本の研究者の一人です。・・・筑波大学の人間総合科学系教授として、運動生理学や運動解析の研究を行っています。・・・オリンピック日本代表チームの科学的サポートにも携わっており、2008年の北京オリンピックでは、陸上競技女子棒高跳びで金メダルを獲得した荻野千尋選手のトレーニングに関わった・・・』と返してきました。1文目は非の打ち所がありません。2文目は、筑波大学を調べてみましたら、生命環境科学研究科に松本教授とお名前が健郎という教授がいらっしゃるようですので、これから生成されたのかも知れません。3文目は全く謎です。というのも、2008年北京オリンピックの女子棒高跳びで金メダルを獲得したのはイシンバエワですし、荻野千尋とは映画『千と千尋の神隠し』の主人公なのですから!

次に「本当かなあ?違うような気がするんだけど」と聞くと『申し訳ありませんが、私が回答した内容に誤りがあった場合はご指摘いただければ幸いです。。。。』と素直に返してくれましたが、この創作力には感心することしきりでした。正しい情報の検索には、まだ、Googleを用いた人力検索の方が良いようです。

以上を調べたのは2023年3月7日頃だったのですが、1週間後に再び「松本健郎って誰?」と聞いたところ、『「松本健郎」という名前は一般的には特定の有名人や著名人を指すものではありませんが、もし何か特定の背景や分野に関する情報がある場合は、教えていただければお答えできるかもしれません。』と言われました。将に日進月歩のようです。

しかし、固有名詞に関する質問ではなく、一般的な質問にすると、素晴らしい答えを返してきます。例えば「100年後の機械工学はどうなる?」と聞くと、『100年後の機械工学の進歩については、正確な予測は難しいですが、以下にいくつかの可能性を挙げてみます。自律型機械の発展:自動運転車やドローンなどの自律型機械が進化し、人間の手を介さずに複雑な任務を遂行することができるようになる・・・人工知能の発展:人工知能の進化により、機械がより高度な判断や学習を行うことができるようになる・・・ナノテクノロジーの進歩:ナノテクノロジーの発展により、微小な部品や素材が作られ、小型化、高機能化が進む・・・環境への配慮:環境問題に対する取り組みが進み、機械工学においても環境に配慮した設計や技術の発展が進む・・・』など、ちょっと100年後にしてはインパクトがないですが、結構まともそうな回答です。まずChatGPTに話題の下調べをさせ、それから内容をブラッシュ・アップするという使い方が便利かも知れません。というわけで、理事の皆様、もう「き・か・い」の原稿で悩むことはありませんよ。適当な話題を考えて、ChatGPTに任せれば怖い物なし!(かな?)