No.183 一企業個人会員にとっての機械学会
2019年度庶務理事 末冨 隆雅[マツダ(株)統合制御システム開発本部首席研究員]
JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。
2019年度(第97期)庶務理事
末冨 隆雅[マツダ(株)統合制御システム開発本部首席研究員]
2018年度(第96期)より庶務理事として、総会、理事会の進行、表彰、技術者倫理、新部門制などを担当しています。機械学会において企業の若手個人会員が減少しているという現状があり、自分自身の企業出身者としての機械学会の30年間の活動を振り返りながら、企業の個人会員にとっての学会の活用を考えます。
日本機械学会の正員、学生員、会友、企業などの特別員を合わせた会員数は、1995年度頃がピークで4万4千から6千だったのが、2017年度末では3万5千に減少しています。大きく減少しているのは、企業所属の正員であり、企業単位でみても、1995年から2015年にかけて会員数が伸びている企業は少数であり、多くの企業は半分以下に個人会員が減少しています。年齢層でみると、企業所属の正員の年齢分布はバブル期前に大学を卒業した50歳代が台形状のピークになっている一方、20歳代から40歳代前半はその6割程度の構成となっています。学生員が卒業して社会人になった5年後まで継続して会員でいる割合は約2割で、就職後に学会から遠ざかっているという実態もデータとして表れています。
私自身は機械学会では交通・物流部門を主に、技術講習会、部門講演会(TRANSLOG)、研究会の企画などをしてきました。自動車関連の講習会では「とことんわかる自動車のモデリングと制御」は2001年に始めて以降、今でも毎年開催する恒例行事になっています。他の学会でもシンポジウムや国際会議などを企画しましたが、機械学会は制約が少なく、参加費や開催場所を企画者が決める裁量が大きく運営しやすかったと思います。部門講演会やシミュレータや生体計測の研究会では、自動車だけでなく鉄道、航空、船舶、昇降機、建設機械などの技術者と議論することもあり、こういう機会を通じて技術者としての思考の幅が広がると同時にネットワークを構築することができたと思います。
I型、T型、Π型人材といわれますが、一つの専門技術に深く精通したI型技術者も、専門技術を持ちながら関連する技術を幅広く全体俯瞰するT型も、複数の専門を有しかつ全体システム設計ができるΠ型技術者のどれもモノづくりには必要になっています。特に、複数の分野に跨り大規模、複雑化した機械システムでは、Π型人材がより重要になってきています。機械学会の部門は1987年から1991年に再編が行われて20部門制となり現在22部門となっていますが、会員は一つの部門に所属するのではなく、第1位から第5位まで最大5つの部門への登録が可能です。また、部門間交流を促進し、複数部門による講演会の合同開催なども検討しています。
私の会社の技術者で、研究会が開催する講演会で研究会の存在を知り、入会する段階になって研究会主査の先生より知らされるという事例がありました。部門登録していると講習会、講演会などの行事の案内がメール配信されます。部門登録をしていない個人会員が約15%いますが、情報を入手する機会を逃すことにもなるので関心がある複数の部門に登録しましょう。そして、関心があるものは若い技術者にも展開して参加させてみましょう。さらには、行事の企画にも参加したらもっと学会を活用できると思います。