No.159 機械学会と私
2017年度副会長 伊藤 天[(株)豊田自動織機 常務役員]
2017年度(第95期)副会長
伊藤 天[(株)豊田自動織機 常務役員]
機械学会の理事を拝命して早1年が過ぎました。昨年の初め、第94期会長に就任された岸本喜久雄先生から『理事就任依頼』のメールをいただいた時には大変困惑したことを憶えています。国内最大であり伝統と威厳のある機械学会に自分では役不足と感じたからです。しかし、迷った挙句に大変光栄であることを優先し、お受けすることにいたしました。
1年目は庶務理事として理事会、年次大会、総会などに参加させてもらいました。案の定受身の年になりました。努力はしていたつもりですが、学会にあまり貢献できていなかったと思っています。
振り返ってみますと機械学会に入会したのは1979年のことで、豊田自動織機製作所に入社した年になります。大半の会員の方々は学生時代に入会していると思いますが、自分は学生の時には学会発表もしたこともなく、機械工学科に在籍していたにもかかわらず機械学会には縁がありませんでした。入社後、当時の会社(製造業である豊田自動織機製作所)には『開発業務に携わる者は機械学会に入るべき』という風土があったことがあり半強制で入会させられました。その後は会員であることをあまり疑問も持たず継続し続けましたが、学会誌をパラパラと読み、時には仕事に関係するような講演会やセミナーに参加する程度の関わりの薄い30数年でした。
そんな私が機械学会活動に本格的に参画するようになったのは2013年からです。会社内で担当変更があった関係で東海支部幹事を拝命し、『支部の講習会やイベント』を担当させてもらいました。2014年には『会員部会の東海支部幹事』となり学会全体に触れる機会が更に多くなりました。その頃感じていたのが『大学の先生方には普通のことが、自分にとっては新しいこと』が多く、理解しづらい事が多々あったと記憶しています。今でも機械学会には120年の伝統をもつ日本最大の学会という偉大さからくる敷居の高さを感じています。しかし、今では遠い存在ではなく『このままではいけない、何とかしなければ』という危機感をヒシヒシと感じています。
さて、現在学会における大きな課題の一つが『会員の減少』です。なかでも『企業会員の減少』が問題だと認識しています。さらに、企業会員の40歳未満の若手が少ないという実態があります。これは昔の『半強制時代』から『個人の意思』を尊重する時代になっているのも一因だと思います。年配の企業会員の多くは自分の意思で入会していなかったのではないかと自己分析しています。会員数だけのことなら昔のような『半強制時代』に戻す必要がありますが、短絡的にそうすることは考えられません。
改めて、企業に勤める会員の立場で考えてみますと、自分がそうだったように、セミナーやイベントに参加する機会が少なく、機械学会は遠い存在になっていると思います。企業で研究に携わっていればまだ機会は多いと思いますが、実際当社では企業の研究者は極少数です。大半は泥臭く目の前の課題解決に時間も忘れて奮闘しており、余裕が少ないのが現実です。一方、企業の代表会員の方々をみても研究に携わっている方が多いように思います。自分自身は研究というより開発部門が長かったので、一般的な企業会員の気持ちが理解できます。ここ数年、機械学会では会員減少に対していろいろな施策がとられており、ものすごく努力していますが、気軽にイベントに参加ができない企業会員に向けた施策にはまだ手がついていないように感じます。従って、そのような人たちに新たに『企業からも入会』してもらえるような…というより入会したくなるような施策が打てないといけない。そうしないと企業会員減少の歯止めはかからないと危惧しています。
当社内では自動車関連の売り上げが約半分あることもあり、自動車技術会と比較することがあります。機械学会の会員数と反比例するかのように自動車技術会の会員は増加しております。また、イベントなどへの参加状況も歴然とした差があります。本部の事務局サイドではベンチマークしていると思いますが、今年度は会員の立場からも比較分析し、企業会員に向けた施策を見出したいと思います。
また、当社からも委員を出している『若手の会』の活動にも注目しています。彼らの活動を支えながら、成果を期待して見守りたいと思います。
最後になりますが、今期は企業や企業会員の視点からいろいろと提言させて頂き、機械学会に少しでも貢献できるように努力していきます。