一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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RC300

1. 分科会名称 『電動化時代の小形軽量歯車装置の先進技術調査研究分科会
2. 主査名 藤井正浩(岡山大学)
3. 設置期間 2024年4月~2026年3月(2年間)
4. 活動目的・内容 歯車技術は,主要先進国では基幹機械技術として地道ながらも確固たる地位を築いている.一方,わが国では,いわゆる先端と呼ばれる技術分野にのみ目が行きがちで,工業の骨肉技術である基幹機械技術は重要視されていない.日本の多くの大学からは歯車研究を行う研究室が消滅し,また,研究を継続している大学でも新たな研究者を育成できない状況にあり,その状況は企業においても同様である.この点がReturn to basicを標語に歯車基盤技術の維持向上をはかっている欧米とは大きく異なっている.本研究分科会は,基幹機械技術において現在不足している領域を補強する的確な情報を提供し,共通課題解決のために活動とすると共に,技術者の連携の場を提供し,人材育成も含めた環境の醸成を図るものであり,活動を通して,日本の産業競争力強化に寄与するオールジャパンの技術者コミュニティを維持・発展させる.

現在,カーボンニュートラル社会の実現がグローバルに叫ばれ,原動機の電動化が強く求められている.これは歯車装置の存在理由にも大きな影響を及ぼし,対応を誤ると,日本の産業の世界における競争力低下は免れない.電動化というグローバルな荒波の中で,日本の産業力を維持向上していくためには,産学が連携して現状の問題を整理,共有し,その解決策をオールジャパンの形で見出していくことが重要である.

電動化においては,大減速比化,高回転速度化が重要な切り口となり,電動機をも含めた駆動ユニットをトータルとして現状を認識し,ブレークスルーする技術を洗い出して行くことが強く求められる.本分科会では,電動化への対応から大減速,高効率を中心に,高強度さらには低騒音の小形軽量歯車装置の設計・製造および評価技術の調査研究を行い,研究開発のターゲットを明確にして,そのための技術情報を参加会社に提供することで,日本の歯車産業の競争力強化のための基盤技術に資することを目的とする.

このため,①歯車装置の高回転速度化に関する調査研究,②小形軽量大減速歯車装置に関する調査研究,③最新技術情報の収集と分析,を実施する.また,年に4回の全体分科会(内1回は見学会を予定)を開催し,上記の情報展開をすると同時に最新の技術に関する話題提供と議論を行い,技術交流の場を提供して,若手,ベテランのいずれの歯車技術者も技術の世界で情報共有できる環境を構築し,オールジャパンの歯車技術者集団がグローバルに活躍できる基盤を提供する.

5. 期待される研究成果 ① 歯車装置の高回転速度化に関する調査研究

自動車用電動機は高回転化のトレンドがあり,高回転・高周速で運転する歯車装置への対処が必要になってきている.わが国には,高回転・高周速歯車装置に関して多くの実績や製品があり,そのほとんどはタービンなどの高回転数原動機の減速用や,低回転数電動機あるいは内燃機関の増速用として使用されている.すなわち,わが国には設計,製作,運転やメンテナンスに関しては重機械や航空機メーカを中心に世界トップレベルの技術蓄積がなされている.本研究分科会では,参加企業およびその他主要歯車メーカを対象に,現状実績の評価に必要な情報を収集し,現状の使用条件や運転状態を把握し,設計の高度化に向けた技術課題を明確化するとともに,より高度で付加価値の高い歯車装置開発を可能にする動的設計解析技術を調査し取りまとめる.

② 小形軽量大減速歯車装置に関する調査研究

高回転化が進む電動車の駆動装置に対しては小型で高減速比の歯車装置が必要となってきている.その機構の一つとして,小歯車(ピニオン)の歯数を極力小さくすることが考えられる.高効率,高強度,低騒音などの性能と併せて生産性を評価指標に現行のインボリュート歯形歯車の最小可能歯数を明確にすると共に究極の歯数1を実現する新たな歯形を提案し,その実現可能性を探る.もう一つの機構として,遊星歯車による機構もいくつか提案されており,一部実用化されているものもある.これらについても性能,生産性から得失を評価し整理する.近年,VDI(Verein Deutscher Ingenieure)等の国際会議において遊星歯車機構の効率,強度,NVに関する海外からの継続的な報告が見られる.これらについても精査し,日本の技術レベルを明確にして,研究開発の方向性を示していく.また,解析技術についてその一例を紹介する.

③ 最新技術情報の収集と分析

国際会議論文抄録集作成,先端・最新歯車研究論文調査,歯車関係学位論文調査,最新歯車加工・計測機器の調査を実施し,最新の歯車技術情報を提供する.

これらについて2年間の活動を通じて,カーボンニュートラル社会へ向けた日本の歯車産業競争力強化を目指して小形軽量歯車装置の先進技術を提供することを目指す.

6. 参加負担金 25万円(年間)×2年
7. 問合せ先 藤井正浩 岡山大学 (主査)
電話:  (086)251-8035,FAX(086)251-8266
e-mail: fujiim[at]okayama-u.ac.jp (※[at]を@に変換してください)