RC277
1. 分科会名称 | 『流れの数値解析と実験計測の双方向連携に関する研究分科会』 |
2. 主査名 | 村井祐一 (北海道大学) |
3. 設置期間 | 2018年4月~2020年3月(2年間) |
4. 活動目的・内容 | 過去30年の流体工学は,数値解析と実験計測の2つの領域で先進的研究が進み,それらが両輪となって発展してきた.大学における基礎研究や産業界における技術開発でも,数値解析と実験計測の専門家を適切に配置したプロジェクトの運用が定着した.一方で,解析と計測の両方を跨がる研究者・技術者の数は減少し,能率面の観点から分業体制が定着した.流体工学が高度で複雑な対象に深化してきた背景に起因している.この傾向は,個人のみならず研究室・部署単位,企業単位でも加速している.解析と計測,産業と学問,という2種類の両極化は,さらに専門領域の細分化に拍車をかけ,その上で,領域別の世界競争が活発になっている.これらの反面で,総合力の向上の観点から,産学を繋げての,鳥瞰的に技術開発計画を策定する組織が不可欠である.本分科会はそのような産学連携体制づくりを企画・主導する役目を果たすグループとして設置するものである.
対象とする流れ現象は,乱流,混相流,反応流,非ニュートン流,分子流,高速流,および生体流れとする.これらは第5期科学技術基本計画に記された,エネルギー高度利用・安定生産,地球環境保全,ならびに医工連携生命科学分野で研究加速が望まれる項目で,いずれも産学連携を必要とする重点領域である.実験流体分野では従来の因果関係のパラメータ調査から脱却し,内部現象をいわば丸裸にするような究極の高次元複合計測の開発が望まれている.計算工学分野では大型計算機のさらなる有効利用(いわゆるポスト京)や,リアルタイム評価を可能とする実験データ融合予測(いわゆるハイブリッド予測)の充実が近視的課題となっている.両分野は双方向に連携を強化する必要に迫られており,当RCで招集された専門家集団による研究交流を企画する. |
5. 期待される研究成果 | (1)計算と実験の双方向連携について
・計算の専門家から,実験で取得したい被計測量の具体的なニーズの情報提供を得る. ・実験の専門家から,計算のほうで再現できるかを問う,未解明現象の情報提供を得る. ・両分野の相互討論から,学術と産業の両面に投影される課題設定を委員会で共有する. ・研究者委員による各項目別の世界の動向のレビューから,最新の見識を得る. ・研究者側委員による大学等でのラボツアーを実施し,基礎研究の取り込みを相互評価する. ・企業委員によるお世話を頂き,工場見学等を実施し,各部署での取り組みを学ぶ. ・企業委員による話題提供をお願いし,産学連携で取り組むべき開発項目を策定する. ・上記の全てから,我が国の先端技術開発で目指すべき方向を共有する. (2)各項目での研究企画内容について ・乱流の研究分野については,直接数値シミュレーション(DNS)やLESによる高解像度計算が大きく進展した.しかしそれを検定する実験計測手法の開発が追いついていない.この問題を解決するために,高解像度・高密度時空間データに関する双方向連携の方法を探る.研究者委員のうち,航空工学,水力機械の専門家が主導する. ・混相流の研究分野では,有効な実験計測技術が限定されることや,数理モデリングの外挿的な拡張の是非の議論がある.この問題を解決するために,実験と計算の双方から混相流の特質を代表する評価量を体系化する.研究者委員のうち,動力システム,化学工学の専門家が主導する. ・反応流の研究分野では,化学反応の素過程を記述する方程式群と,システム全体の性能予測の間に大きなスケール乖離がある.この問題を解決するために,実験と計算のオーバーラップ領域を調査し,開発研究のプラットフォームを構築する.研究者委員のうち,燃焼工学,熱工学の専門家が主導する. ・非ニュートン流では,物質によって細かく場合分けされたレオロジー構成方程式が煩雑化し,分子構造などのミクロ研究と,連続体としてマクロ表現する流体工学研究に二分されている.この領域境界を緩和し,産業技術開発に繋げる計算・実験の合理的融合方法を提案する.研究者委員のうち,化学工学,食品工学の専門家が主導する. ・分子流の研究分野では,MDやDSMCなどの計算手法が先端技術を支えている.その一方,実験による発見や検定において,実験的に高度な技術と設備が必要となっている.この問題を解決するために,実験設備の共有・開放など,産学連携で推進する計画を策定する.研究者委員のうち,マイクロ流体力学,宇宙工学の専門家が主導する. ・高速流の研究分野では,圧縮性に起因する衝撃,振動,抵抗,騒音を可能な限り低減させなければならない.しかしそのエネルギースペクトルを幅広くかつ正確に予測する手法は未解決である.この問題を解決するために,実験と計算の間でのデータ同化の高精度化を図る.研究者委員のうち,航空工学,流体機械の専門家が主導する. ・生体流れの研究分野では,予測医療,個別化医療に向けた取り組みが進められており,流体工学の分野で培われてきた技術の活用がはかられている.複雑な生体システムデータの精度保証評価や融合予測を高度に実現するための双方向連携方法を探る.研究者委員のうち,生体工学,医療工学の専門家が主導する. |
6. 参加負担金 | 20万円(年間)×2年 |
7. 問合せ先 | 村井祐一 北海道大学 教授 (主査)
TEL: 011-706-6372, FAX: 011-706-7889, e-mail: murai@eng.hokudai.ac.jp |