自動車から排出される炭素質の微粒子(PM)の低減対策はディーゼル機関だけでなく，ガソリン機関でも今後問題となる．これは高効率機関の開発のために解決しなければならない問題であり，具体的には

(1) 燃焼場におけるPMの生成と酸化の反応機構が明らかでないため，根本的な低減対策が立てにくい状況にある．
(2) PMの生成や酸化のモデル，またそのモデルに対応するPMの化学的および物理的な特性値が不明であるため，燃焼モデル計算の精度が上がらない．
(3) PDF等のPM除去装置においても(1)や(2)と同種の問題が生じている．
(4) NOx対策の為のEGRクーラーやDPF内に堆積するPMの挙動が把握されていない．

など，PM特有の多くの未解決な技術課題がある．この種の問題について，今までは事例ごとに個別対策が立てられているだけであり，PMの特性評価を行った上での合理的な手法で研究や器機開発が行われてきたとは言い難い．そこでこの研究分科会では，PMの特性に関する情報交換を行い，PMに関する工学・技術情報を精査し，信頼性の高い特性値の汎用化に務める．第１期においては，情報交換については目的を達せられたが，モデルや特性値の汎用化に向けて，第２期も継続したい．

【活動の概要】

第２期では，さらなる情報の精査と蓄積を行い，モデルや特性値の汎用化を重点に行う．

（上期／第１年目）
基本的には第１期と同様である．本研究分科会では，研究者側委員に分科会としての特別な研究活動を要求しないが，研究者側委員の持っている情報の開示を要求する．また，企業側委員には企業として必要な情報について研究者側への要求を依頼する．年間3回の会合（１回は宿泊つき）を東京にて企画し，そこでは以下の討論を行う．

(1) 研究者側委員の既発表論文（審査付き）の解説，論文に掲載されたPM特性値についての評価や利用法
(2) 文献調査で得られたPMのモデルや特性値の評価
(3) エンジンシミュレーションに必要なPMのモデルとPMの特性値
(4) PDF等の開発に必要なPMの特性値

さらに，収集したモデルや特性値を基にモデル計算を行うことについても継続して検討する．

（下期／第２年目）
活動の形態は１年目と同じにするが，文献として公表されているPM特性値の数値整理を行い，PMの生成・酸化の反応機構や反応モデル，PMの化学的及び物理的な特性値の汎用化を行う．またPMのデータベースを共同執筆し，技術論文（レビューペーパ）として公開する．

上記項目に関する情報を精査し，信頼性の高い特性値データの使用を可能とすることは，PMに関する工学の向上とPMの排出量の少ない高効率内燃機関の開発に対して有力な情報提供になる．