設立趣旨

 法工学専門会議を代表して御挨拶申し上げます。本会における「法工学」関連の組織は「技術と社会」部門の研究会として発足し、機械工学便覧β9編「法工学」の編集に参画。その後2003年4月の部門設置を経て、「分野横断的・新領域研究活動組織に関する規定」により、2006年4月に「法工学専門会議」が設置されました。

 本専門会議の活動領域は「法と工学」の境界領域です。本会の他の諸部門と異なり、機械技術を専門とする技術者のみならず、技術鑑定・知的財産・イノべーション・工学倫理・リスク管理等の諸分野のみならず、法曹関係を専門とするメンバーも加わり、多面的な角度から「法と技術」係る諸課題の検討を行うことが特徴となっております。設立以来、交通事故等の責任割合の研究、知的財産の審判や交通事故等の裁判における技術鑑定のあり方の研究、業務上過失事案における「法と技術」のあり方の研究等を経て、最近では新技術・新商品が実用化された近未来での起こりうる事故を想定し、模擬裁判という手法を用いて、近未来の法廷論争を通して「新技術の社会受容性とリスク」を明らかにする活動を行ってまいりました。我々機械技術者が心血を注いで研究開発した「技術・商品」に対する「社会の受容性」に関して、従来、ややもすると余りに無関心であったのではないか?と憂慮しております。

 その意味で、法工学専門会議では、「法律は法律家に任せれば良い」では無く、互いの専門的知見の差異を踏まえ、機械技術者の専門学会の立場から、より社会に受け入れられる機械技術のあり方に対し、積極的に意見交換を行い、各方面に提言していきたいと考えております。 法工学専門会議は少数精鋭の専門家集団をモットーとして活動して参ります。今後とも皆様の温かいご支援・ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。

法工学専門会議 委員長 平井省三