日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第98号

国産化黎明期の乗用エレベーター

 近代エレベーターはかご(乗用部分)に加えて、ガイドレール、非常停止装置、電動駆動の3つの要素を備えており、その基本形は米国で確立された。日本では、東松孝時(とうまつたかとき)が輸入品を研究し、1915(大正4)年に「押釦(おしぼたん)式全自動エレベーター」を開発したのが始まりである。その後、東松等が1919(大正8)年に旧日本エレベーター製造(株)を設立するが、これが刺激となり、国内に多数のエレベーター関連企業が誕生した。
 本機は、1925(大正14)年から1926(大正15)年に製造し、1927(昭和2)年に竣工した福井県の大和田銀行本店本館に設置された運転手が操作するタイプのもので、定員は8名〔最大積載量120貫(450kg)〕である。乗客がエレベーター内で非常止め装置のテストができることが特徴である。当時、エレベーターのロープ寿命を予測する方法がなく、突然のロープ切断による事故予防のため開発が行われた。直動ワンウェイクラッチの保持器を電磁石で動作させ、ガイドレールに噛み込ませる方法が特許となっている。装置一式は、大和田銀行本店本館が1978(昭和53)年に敦賀市に寄付され、翌年敦賀市立博物館(現)に改修されたとき、昇降路から取り外され、同館にて保存展示されている。
 本機は、外国技術の国産化過程を示すとともに高層建築物に必要不可欠な垂直交通機関における技術開発の発展過程を今に伝えている。

《写真提供:(左)日本機械学会・(右)敦賀市立博物館》

公開

敦賀市立博物館

開館時間:
10:00~17:00
入館料:
300円(高校生以下無料)
休館日:
月曜日(休日の場合を除く)、祝日の翌日、年末年始、その他展示替え・メンテナンス に伴う休館日
住所:
〒914-0062 
福井県敦賀市相生町7番8号
電話番号:
0770-25-7033
HPアドレス:
http://www.city.tsuruga.lg.jp/about_city/news_from_facility/gaibu_shisetsu/hakubutsukan/museum.html
交通機関:
JR北陸本線敦賀駅から徒歩25分、ぐるっと敦賀周遊バス「博物館通り」下車すぐ

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