日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第92号
エアレス塗装機
この機械は、塗料そのものに高圧をかけ、スプレーガンから噴射する、エアレス方式の塗装機である。戦後米国で開発されたエアレス塗装は、従来のスプレー塗装に比べ多くの長所があった。旭大隈産業(現 旭サナック(株))の甘利祐三は、米国特許の実施権を得てエアレス塗装機の国産化を開始した。1959(昭和34)年に初号機の販売にこぎつけ、その後国内事情に合わせた塗料加熱装置の省略とコンパクト化などの改良を重ねながら、1962(昭和37)年にほぼ国産化を完了した。この塗装機の普及によって塗装環境は劇的に変化した。エアレス塗装機は現在、車両、造船、構造物、建築、道路舗装など幅広い分野で使われている。
機械遺産に認定する本機は、国産初のエアレス塗装機として日本楽器製造(現 ヤマハ(株))に納入され、ピアノの表面塗装に用いられた装置のうちの加熱式のスプレーガン(1959(昭和34)年製)と、小型化、低価格化に成功し、エアレス塗装機普及のもととなった「コンパクトエアレス」ポンプ(1962(昭和37)年製)のセットである。いずれも現存最古であり、旭サナック(株)のショールームで保存展示されている。
《写真提供:旭サナック株式会社》
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