日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第75号
小型貫流式ボイラー「ZP型」
(株)三浦製作所(現三浦工業(株))製小型貫流ボイラー「ZP型」は、わが国のボイラー市場、さらには国民の生活様式を変えた象徴的装置である。1959(昭和34)年の労働安全衛生法などの法令改正で、運転圧力が10気圧以下かつ伝熱面積10m2以下の小型貫流ボイラーは無免許で使えるようになり、それを受ける形で開発された。このボイラーは、多数の水管と管寄せだけからなる蒸発部をもつ。水管がZ型状をしているので、名称に‘Z’が付いている。稼働時の圧力も低く、保有水量も少ないことから安全性が高く、蒸気も早く発生して作業性がよい。また、従来のボイラーに比べて設置面積が小さいこと、独自のZ型水管の缶体構造から稼働中や夜間の停止中の放熱が大幅に少なく省エネルギーであり、給水や燃焼が自動制御でなされるため、運転が楽でかつ値段も安い。そのため、従来はボイラー蒸気が利用できなかった多くの商店や中小企業にまで使用が広まった。さらに、大型ボイラーを使用していた事業所においても、小型貫流ボイラーを複数台設置し、必要に応じて起動するボイラー台数を増減させる方式が主流となり、発電事業等の大容量タイプを除いたボイラー市場の約70%が貫流ボイラーで占められるようになった。
現在では、本機に代表される多管式貫流ボイラーが主流となっており、ZP型は当時の国民生活の向上に貢献した。
《写真提供:三浦工業株式会社》
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