日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第61号
からくり人形 弓曳き童子
田中久重(通称からくり儀右衛門)作の弓曳き童子は、江戸時代のからくり(機巧)人形の最高傑作の一つと言われる。この人形は、輸入された機械式時計を参考に、日本文化を反映させた独自の技術で作られている。
台上に座った童子が、矢台から矢を抜き、弓につがえて的を目掛けて矢を射る。シンプルな機械要素を有機的に組合せ、滑らかに矢を射る動作と細かな首の動きで人間の表情を実現し、設計思想の中に、それを見る人々の心の動きまで練り込まれている。
この人形は江戸後期の日本の機械技術の高さを表すとともに、その職人技術と精神は日本の近代化の礎である。
近年、弓曳き童子は、人を楽しませる機械やロボットのルーツのひとつとして、科学・技術教育にも広く利用されている。
田中久重の弓曳き童子は他にも存在するが、彼の生誕地である福岡県久留米市に、稼動可能な状態で保存されているこの人形を認定する。
《写真提供:久留米市・株式会社東芝》
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