日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第51号
ステンレス鋼製車両群
(東急5200系と7000系)
東急5200系は従来の鋼製車両に代わり、無塗装によるメンテナンスフリー化を目指し、1958(昭和33)年に日本で初めて外板にステンレス鋼を採用した車両である。保存車両のデハ5201号車は、計4両製造されたうちの第1号車両であり、ステンレス車両導入の試験的な役割を果たした。
東急7000系は東急車輛製造(現総合車両製作所)がアメリカのバッド社から構体製造技術を導入しながらも、独自技術によって国内仕様に適合化して製造した軽量で強く経済的な日本初のオールステンレス車両である。この車両には、ステンレス鋼の強度を生かした塑性加工技術やスポット溶接技術が採用され、さらに特殊成型加工機や治具によって、強度増加と加工のバラツキを抑制した品質管理が導入されている。
この技術により、外板だけではなく骨組にもステンレス鋼を用いた、オールステンレス車両を実現している。
保存車両は1965(昭和40)年製のデハ7052号車で、計134両が製造された7000系の原型最終稼働車である。1965(昭和40)年に東横線で使用されてから1999(平成11)年こどもの国線で現役を終えるまで、34年の長きにわたって使用された。
これらの車両は軽量化と車体の無塗装化を可能とし、現在の通勤車両を中心として広く普及しているステンレス車両の原型となった重要な遺産である。
また、保存車両の傍にある歴史記念館には、これらの車両の車体完成図などの貴重な資料も保存されている。さらに、車両に残る鋼製骨組の腐食や、高炭素ステンレス鋼溶接部の粒界腐食などは、社員への技術教育の実物教材として活用されている。
《写真提供:株式会社総合車両製作所》
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