関西支部長から関西支部の活動のご紹介

第97期関西支部長　岡村一男（日本製鉄㈱）

日本機械学会関西支部は，「関西地方における機械に関する学術および技術の進歩発展をはかり，かつ工業の発展のために尽くす」ことを目的として1925年（大正14年）6月28日に設立され，滋賀，奈良，京都，大阪，和歌山，兵庫の６府県の会員によって活動を展開しています．その活動内容は前記６府県の機械工学に関連するすべての人々を対象にしており，これまでに多様な活動が諸先輩方のご努力によって創出され改良を重ねてきています．最近では，定時総会講演会・卒業研究発表講演会，秋季技術フォーラムおよび専門部会や懇話会による学術・技術交流事業，講習会・見学会・ステップアップセミナー・特別フォーラムなどの教育・啓発事業，学生を含めた大学・高専と企業との交流を促すMECHAVOCATION（メカボケーション）事業，関西学生会による「メカライフの世界展」やシニア会による「親と子の理科工作教室」，「機械の日」にちなんだイベント等による機械好き，理科好きな生徒・児童の育成を兼ねた社会交流事業などが主たる活動内容となっています．

しかし2020年１月から日本での拡散が始まった新型コロナウイルスへの感染拡大防止のために，人が集まる形式での事業開催は不可能となり，昨期はオンラインやweb上での動画配信など，事業運営として全く新たな方法を模索することになりました．以下に代表的な活動の実績についてご紹介しますが，コロナ禍においても過去に培われてきた活動を絶やさぬために，運営の上で様々な工夫を行いました．講習会やフォーラムでのオンライン会議運営の導入はもちろんのこと，MECHAVOCATIONや学生会活動における動画配信，定時総会講演会・卒研発表講演会への会議運営システムの導入とオンライン会議とのリンク，支部ホームページのスマートフォン対応なども行っています．

対面でなければ実施が困難な事業は今年度も中止・延期をせざるを得ませんが，昨年度は体制が整わず已む無く中止した事業についても，今期は可能な限りオンラインでの開催を行うと同時に，参加者の利便性が増すように更なる工夫を重ねて参ります．支部活動について関西支部会員の皆様方のご理解と，ご支援，ご協力を賜りたくお願い申し上げます．

関西学生会

関西学生会は関西地区の26の大学・高専の学生員で構成され，各校を代表する運営委員57名（内幹事14校35名）が中心となって活動しています．毎年11月開催の「メカライフの世界」展と3月開催の卒業研究発表講演会の二大イベントのほか，年2回の講演会，工場見学会，そしてメカボケーション協賛企業やシニア会との交流会なども行っています．定期的に開催する年8回の運営委員会で議論し，学生主体でこれらの企画・運営を行っています．

昨年度は，小中学生を対象とした，機械のしくみやモノづくりの楽しさを体験してもらうイベントである「メカライフの世界」展を，当初2020年11月14日（土）・15日（日）にバンドー神戸青少年科学館で開催する予定でしたが，新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオンデマンド動画配信のweb形式に変更して開催しました（動画配信期間：11月14日～30日）．従前のような対面開催は叶いませんでしたが，「自宅で子供たちに機械工学の面白さを感じていただけるような動画を作成・配信する」というコンセプトのもと，運営委員の学生が工夫を凝らして16種類の動画を用意しました．エコラン，四足歩行ロボット，パイプオルガンなどの展示動画では，製作・実験・デモの様子を動画にし，学生委員の丁寧な説明によって子供たちだけではなく，大人までもが興味を惹かれる内容になっていました．また，坂道歩行ロボット，風船ホバークラフト，ストロー紙飛行機，ペットボトル空気砲，折り紙プロペラなどの工作動画は，身の回りのモノを使って自宅で親子で楽しく工作しながら機械工学を学習できる内容でした．各動画にはBGMを付けたり，字幕を増やしてふりがなを振ったりするなど，子供たちでも親しめるよう様々な工夫が見られました．動画の視聴回数は，のべ1016回と盛況で，ご参加いただいた皆様には大いに楽しんでいただけたものと自負しております．今年度の役員校は右表の通りです．今年度も運営委員一丸となって，昨年に負けない企画を鋭意すすめています．関西学生会の活動については，関西支部HP内の関西学生会のページで紹介していますので，是非ご覧ください．（ https://jsmekansai.org/Student/index.html ）

関西学生会2021年度役員校

Web会議システム（Zoom）を用いた運営委員会の様子

関西学生会による「メカライフの世界」展（オンデマンド動画配信）

技術情報誌「MECHAVOCATION 2021」

MECHAVOCATIONは「機械技術者の天職」という意味の事業で，1993年度より展開し，関西に拠点を置く産業界と学界の交流の場を種々提供して参りました．

「MECHAVOCATION2021」はその核となる技術情報誌で，主として①関西支部賞受賞技術紹介，②協賛いただいた企業の紹介，③関西地域の大学・短大・高専の学校紹介から構成されており，日頃企業を知る機会の少ない学生にとって将来の進路選択の媒体として有用な手段となっています．毎年，関西地区の機械系学生約6,000名，全国160校の就職担当教職員および協賛企業に配布する一方，インターネット版を公開し，支部と学校，企業を結ぶ情報媒体として広く活用いただいています．機械工学を学ぶ学生や機械技術者に期待される役割が複雑化・多様化している現在，学生と企業との間を取りもつ社会貢献の役割を果たしています．

学生のための企業技術発表会on the Net

｢学生のための企業技術発表会｣は，技術情報誌MECHAVOCATION発刊に付随する行事で，MECHAVOCATION協賛企業が機械系の学生参加者に自社の独自技術を紹介するユニークな企画です．例年，近畿大学の会場をお借りし，参加者が一堂に会して対面形式で実施して参りましたが，14回目を迎えた今回は，新型コロナウイルス感染防止のため，「学生のための企業技術発表会on the Net」と題して，行事の全てを初めてweb上で開催致しました．これまでの企業技術発表会では，全参加学生に向けた各企業のショートプレゼンテーションと，各企業のブース説明会の2部構成で実施して参りましたが，今回は参加企業に作成頂いた技術紹介動画のオンデマンド視聴と，Zoomを使用した各企業のwebブース説明会の2部構成としました．オンデマンド動画視聴は，webブース説明会に先立って11月9日から開始し，webブース説明会は2020年11月28日，12月5日，12日（いずれも土曜日）の3日間で実施しました．例年とは大きく異なる実施形態となりましたが，協賛企業の中から99社の出展と，48校428名の学生の参加を得ることができ，学生参加者は，例年と同様，日頃学んでいる機械工学が実際に企業でどのように役立っているのかを学ぶことができました．残念ながら，直接顔を合わせてディスカッションすることや，毎年好評の懇親会を実施することは叶いませんでしたが，web開催の利点を強く実感する面も多々ありました．まず，移動のための時間と費用が不要となり気軽に参加できるようになったため，関西のみならず全国各地からの学生の参加を得ることができ，中には海外からの参加もありました．また，これまでのブース説明会では，参加人数に制約があり，参加できたとしても混雑のため説明を聞き取りにくいといった問題が生じることもありましたが，web開催によりこれらの問題が解消され，お目当てのブース説明会に希望者全員が参加でき，静粛な環境下で集中して説明を聞くことが可能となりました．まだまだ改善すべき点はありますが，web開催の今後の可能性を垣間見る機会ともなりました．2021年度も，web開催が決定しているため，今回の反省点等を改善してより良い企画となるように努めたいと考えております．

案内用ポスター

第96期定時総会・講演会・2020年度関西学生会学生員卒業研究発表講演会

 関西支部最大の行事である定時総会・講演会・関西学生会学生員卒業研究発表講演会が2021年3月16～18日に大阪大学基礎工学研究科（大阪府豊中市）が開催校となり開催されました．新型コロナウイルス感染拡大防止のため，Zoomを利用したオンライン（Web講演形式）で開催しました．第96期目の定時総会・講演会では419 名の参加のもと，基調講演4件のほか，研究討論セッション166件，メカボケーション学生研究発表セッション50件，および関西支部賞受賞記念講演4件を含む計216件の講演発表と，量子科学技術研究開発機構　理事長，大阪大学名誉教授　平野俊夫氏による「新型コロナウイルスは人類に何を語るか？」，京都大学名誉教授　北村隆行氏による「ナノの世界の機械工学」の特別講演がありました．定時総会では定例の議案審議の後，関西支部賞8件の表彰が行われました．メカボケーション学生研究発表セッションでは3名にベストポスター賞が贈呈されました．また，関西学生会卒研発表講演会では，今回489 名の参加者があり，京都大学オープンイノベーション機構 産学共同研究部門　特定教授　松山一雄氏による「マイクロ場流体混合から分散型ものづくりまで」の特別講演が行われたほか，学生員による272 件の講演発表が行われ，活発な講演会となりました．審査の結果，Best Presentation Awardsが27名の学生員に贈呈されました．

定時総会・講演会のウェブサイトの写真

シニア会活動のご紹介

関西支部シニア会は，会員相互の親睦交流および経験，技術，知恵を活かした社会貢献を通じて，シニアライフを充実させながら関西支部の発展に寄与することを目的として2006年4月に発足し，今期で第16期目を迎え，会員数は216名を数えるに至りました．本年度も活動の幅を広げるべく計画を立てておりましたが，新型コロナウイルスの感染拡大が続いており，諸活動の中止または延期を余儀なくされる状況になっております.

昨年度はコロナ禍の制約の中で，オンラインで総会や運営委員会を行うなど，できうる限りの活動を行いました．毎年数件ずつの実績を挙げている大学・高専等への「非常勤講師紹介」では3講座が決まり，個々の企業のニーズに応じた「企業内技術者教育」では1社に対し振動関係の教育を実施しました．会員の経験・学識などを幅広く披露してもらい技術や社会に関わる視野が広がることで好評の「情報交流サロン」はオンラインに切り換えて1回開催され，30名近い参加を得て自由かつ熱心な討議が行われました．

一方で社会貢献の一環である「親と子の理科工作教室」はこれまで12年間継続して来ましたが，残念ながら昨年度は本部通達を遵守し全ての教室を中止いたしました．学生がシニアの豊かな経験，知識を学ぶ貴重な機会となっている「シニア会と学生会との交流会」，技術開発型企業を訪問する「特徴ある技術を有する企業見学会」，先人の努力の跡を知る「機械・産業遺産ツアー」等も中止せざるを得ませんでした．

本年度は新型コロナの感染状況を見たうえで可能になれば下期から昨年度中止になった活動を再開するとともに，オンラインに切り換えた活動も対面に戻したいと考えます．「親と子の理科工作教室」で当初計画しておりました一般教室16会場及び大阪市特別授業4校の開催については，上期は見送り，下期はウイルスの感染状況が改善されれば実施したく準備しています．また本年度はシニア会の次の発展に向けてエネルギーを蓄え新たな企画を準備する機会ととらえ，自由に参加できる同好会などを準備いたします．

なお，シニア会についての詳細は，関西支部シニア会ホームページ https://jsmekansai.org/Senior/index.html をご覧ください．

組織と活動の概要

関西支部は，定時総会講演会のほか，産官学の研究者が集う8つの懇話会の企画による秋季技術交流フォーラムや，商議員・代表会員が専門分野ごとに所属する5つの専門部会の協力の下，講習会を活発に開催しています．また，学生員が主体的に運営している関西学生会や，豊富な経験・知識を活かして社会貢献等に取り組むシニア会が活発に活動すると同時に，幹事会を毎月開催し，年3回の商議員会と定時総会で意見交換しながら，支部の運営を進めています．

第97期 2021年度主要行事（予定）