スキャッタバンドとは,関連するパラメータを軸にして,過去に開発されたエンジンのテスト・CFDデータを組合せてトレンド化した点群のことを指す.例えば,複数エンジンの排気量と出力,燃費,EM、フリクションデータなどの傾向を示したものやCFDデータなどを組合せてグラフ化したものであり,これらを用いて主要諸元の位置づけ(相場)を知ることができる.新規開発エンジンの彼我比較の他、エンジンの基本諸元であるストローク/ボア比の選定や,代表的なエンジン運転条件における燃焼期間・乱流強度の目標設定に活用される.また,定常流場でのシリンダヘッドに埋設される吸気ポートの流量係数とタンブル比のトレンドデータにより,吸気ポート性能の位置づけ比較などが行われている.スキャッタバンド活用の利点は,開発初期において大規模なCAE解析を行う前に,主要諸元や目標とする物理パラメータなどの特性やその位置づけを把握できることにある.結果,開発初期の品質を高めることにより,開発手戻りを低減することができ,開発費用や期間を削減することができる.