精密な工作技術の進展により領域を縮小し続けている手仕上げ加工であるが,少量生産品・試作品の最終工程や,故障の起きた機械類の修理には欠かせない技術である.やすりがけは仕上げの技能検定や技能五輪の精密機器組立て職種でも重視されている.やすりの断面形状には平,角,三角,丸,半丸などがあり対象に適したものが選ばれる.目の荒さは荒目,中目,細目,油目の順に細かくなる.やすりの刃はやすりを押す時に切削できるようにつけられており,炭素工具鋼,切削工具鋼のうち最も炭素量の多いものを用いて硬く焼入れされている.効率よく切削できるように,平やすりであってもやすり面は全体に凸型となっている.軟らかい材料には切削方向に対し斜めに刃が刻まれた単目のやすりが,硬い材料には交差するように刃を刻んで点状の刃とした複目のやすりが,木材などにはおろし金のようなわさび目のやすりが用いられる.