社団法人日本機械学会

女性技術者のはたらく環境

Q 【山本】女性が長く働き続けるというのに必要な環境はどのようなものでしょうか。 

【太田】 数年前に比べると女性は働きやすい環境になっていると思います。結婚したら仕事をやめなければいけないという風潮はほとんどありません。しかしながら、結婚したものの子供ができたら仕事は続けていけるのだろうか、という不安を抱えている女性は少なくないと思います。また、育児休暇で仕事を休んでいる間に、技術力が現状レベルから低下するのではないか、育児休暇後に出社しても現状に全然ついていけなくなるのではないか、などの不安は誰にでもあるのではないでしょうか。 子供のために早く帰宅できるような勤務体制や、看護のための休暇制度の促進が必要ですね。さらに、男性の理解と支えが、女性に長く働きつづける環境を提供してくれると思います。

Q 職場で女性と男性の視点や発想の違いを感じることはありますか? 

【太田】 一般に、女性は繊細な感覚をお持ちの方が多いと思います。今まで男性が主体となって築いてきた社会の中に、新たな発想を提供する女性の活躍に、期待が高まりつつあります。 女性は、プレゼン資料の作り方やまとめ方、データ処理の仕方など、物事の視点が少し違うと感じるときがあります。男性でも資料をきれいにわかりやすくまとめている方はいらっしゃいますが、女性は配慮が行き届いていると感じるときがあります。もちろん、繊細なだけではなく、元気な方もいらっしゃいますし、私のような雑な方もいますし。

Q 行き詰まったときの打開方法とかストレス解消とか、どんなふうにされているのですか。

【太田】 私は思いつめてしまうと思考が停止してしまうので、頭を切り替えて何も考えないようにして帰宅します。同僚の方は、お酒を飲みに行くことが多く見られます。ストレスを発散させる場というだけでなく、自分以外の人間と話をすることが問題の解決につながるのではないでしょうか。自分だけで考え込んでしまうと、どうしても問題解決できなくてどんどん悪いサイクルに思考が落ち込んでいくのですが、上司や先輩に「今、こういうことで悩んでいて」ということを少し話しただけで、解決への糸口を提供してくれるので、そういうコミュニケーションは大事なのですね。自分一人で解決することは難しいと思いますよ。

【福山】 相談されるときは上司、同僚とか、そういう……。

【太田】 上司が多いです。後輩に言うと、その仕事を押しつけたくなりますので。(笑声)「この仕事、私にはできないから・・・、代わりにやってくれる?」と、言いそうになってしまいます。

【福山】 後輩にも恵まれていると。

【太田】 恵まれましたね。 (笑)

  女性は顔と名前を覚えられやすいので、悪いことをすると目立ってしまうのですが、良いことも多いです。他の部署の諸先輩方から「そういえば、あの仕事はどうなったの?」とか、廊下で会った少しの時間の間に声をかけてもらうなど、気にかけてくる方がたくさんいます。顔を覚えてもらうというのは女性の人数が少ないゆえの特権ですね。

【福山】学生の皆さんもそういう職場に行くと思いますが、特権だということですから是非生かしてください。


【山本】 太田さんから、先々に就職活動が待っている学生さんへ就職活動に対するアドバイスを最後にお願いします。


【太田】 私が就職活動をしていて感じたことは、学生の間に様々な企業を見ることが大事だということです。社会人になると、同業他社へは立入は禁止されることがよくあります。学生には親切に内部まで詳しく見せてくれるので、就職活動を上手に利用して学生のうちに見ておけるものは何でも見ておくことが大切です。 それから、ここにいる私達も含めて、先輩方の話を聞いてみることも良いのではないでしょうか。仕事の内容だけでなく、職場の雰囲気など喜んで話をしてくれます。そういった機会を大事にして、皆さんの視野を広げていただく1つのきっかけになれば嬉しいです。 企業へのアプローチとしては、ある程度の社会人としての協調性は必要ですが、自分の意見を明確に示すことが大事です。きちんと主張すれば心証も良く、企業もやりたいことを理解してくれますし、自分の意見をしっかり持っている人間だと見てくれます。自分が何をやりたいかということをきちんと持って、就職活動に取り組むことが大事です。

 


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