▲宮崎康次
(九州工業大学)
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昨年2000年9月から来年2002年の8月まで2年間の予定でカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学部機械航空工学科のGang
Chen教授のグループ(Nanoscale Heat Transfer and Themoelectrics Laboratory)に客員研究員として滞在しています.ここUCLAではMEMS(Micro-Electro-Mechanical-Systems)の研究が盛んで,多くの方がC.
M. Ho教授,C. J. Kim教授の名を耳にされたことがあるかと思います.
滞在していますここロサンゼルスは,温暖な気候で過ごしやすく,ほぼ1年間を通して25℃程度の晴れの日が続きます(雨季の1月〜2月にかけては毎日のように雨が降り,気温が10℃くらいまで下がりますが).そのため,定年後は西海岸ロサンゼルスで過ごす夢を持っているアメリカ人も多いと聞いています.気候だけでなく日本人にとってはリトル東京を始め,トーレンス,ガーデナといったロサンゼルス近郊には日本企業も多く進出しており,日本の食物,衣服,雑誌が簡単に手に入れられるため生活に困ることもありません.大学の近くにも小さな日本人街があり,週末は研究室の仲間やロサンゼルス近郊の日本人留学生とカラオケや飲みに出かけることもしばしばです.今回の留学が海外における初めての長期滞在になりますが,語学が不得意な著者にとっては非常に生活し易く,幸運にも留学のスタート地点としては格好の場所でした.
日本でもTシャツのロゴにUCLAが使われるなど,カリフォルニア大学ロサンゼルス校は一般にも広くその名が知られる大学ですが,意外とその歴史は新しく1919年にカリフォルニア大学の南カリフォルニア分校と定められたのが始めだそうです.現在の所在地Westwoodには1929年に移動,1944年に工学部が設立されました.その後も拡張に重なる拡張を続け,現在では11学部85学科35,000人以上の学生を抱える巨大総合大学となっています.研究面でも1965,
1987, 1997, 1998年とノーベル賞をとっており,学部の新しさに反して多くの業績をあげています(詳しくはhttp://www.ucla.edu/about.html).
私がお世話になっているGang Chen教授の研究室では,マイクロ・ナノ構造物内部における物質・熱・光輸送の現象を扱っています.近年の微細加工技術の目覚しい発達は,フォノン(格子振動のエネルギーを量子化して考え出されたエネルギー粒子)や電子の平均自由行程程度の構造物作製を可能としてきました.そのような超微細構造物内では,これまでの物性を用いては説明できない熱輸送現象が数多く計測されるようになってきました.教授はその理解のため,原子・電子の輸送およびそれらの相互作用といったミクロの立場から熱輸送現象の解明に取り組まれています.近頃はそのような物性変化のメカニズムが少しずつ明らかになってきたことから,デバイスの微細化を悩ましてきたこの物性変化を逆に有効利用しようとする視点に立って研究を進められています.
研究室は10人の学生(中国・インド・フランス・ルーマニアからの留学生)からなり一見小さいグループに思えますが,全員がドクターコースですから非常に強力なグループといえるかもしれません.それぞれの学生が個別のテーマと複数の学生で受け持つ共通のテーマを2つずつ持ち,週一回の個人ミーティングでは教授と,グループミーティングでは教授を含め他の学生と活発に議論を繰り返しています.またこちらアメリカの特徴であるのか,他分野の研究者との共同研究が活発です.機械,電気・電子,物理,物質,化学,バイオといった領域の中間を研究対象に狙うため,常に共同研究者は欠かせないようです.その結果,研究室間での学生の交流が活発で,学生が他学科の研究室に足を運んだり,その逆に他学科の学生がこの研究室を訪れたりという光景を毎日のように目にすることができます.それに加えマイクロ化センターなど共通設備を利用するため,異なる分野に所属する学生間の会話が自然と多くなり,広く知識を身に付ける,新しいアイデアを作り出すという点でも共同研究・共同設備は役に立っているようです.そのような恵まれた環境の中でできる限り私も力を磨くことができればと願う毎日です.
日中の大学構内は大学生が多く活気に溢れています.UCLA移設当時からの建物であるロイスホール(写真1)などは緑の芝に映えて美しく,学生に加え多くのロサンゼルス観光客も目にすることができます.アッカーマンユニオンではTシャツやトレーナー,帽子などUCLAグッズを手軽に購入できます.ロサンゼルス空港から車で20分程度と近く,ロサンゼルスにいらっしゃる機会がありましたら是非立ち寄っていただきたい大学と思います.
最後に今回のような長期滞在が可能であるのは,日本学術振興会(JSPS)海外特別研究員派遣制度による援助が2年間であることへの感謝は言うまでもありませんが,留学に対する職場の理解こそが最大の援助となっています.九州工業大学生命体工学研究科生体機能専攻および工学部機械知能工学科の先生方にはこの紙面の場をお借りして感謝いたします.
▲写真1 UCLA移設当時からの建物であるロイスホール
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▲写真2 パウエルライブラリー
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