第48回バイオサロン
2017年1月18日 | バイオエンジニアリング部門特別講演会主催No.16-170
【開催日時】
2017年1月18日(水)15:30~17:00
【題目】
細菌の持つ光受容膜タンパク質・ロドプシンとオプトジェネティクスへの応用
【講師】
名古屋工業大学 大学院工学研究科 生命・応用化学専攻
准教授 井上 圭一
【内容】
海洋など地球上の様々な環境中には、莫大な数の細菌や藻類などの微生物が棲息しているが、近年のゲノム研究の発展により、それらの多くがその細胞膜中に「微生物型ロドプシン」と呼ばれる光受容型膜タンパク質を持つことが明らかとなってきている。これら微生物型ロドプシンは、我々ヒトを含めた動物の網膜中に存在する「動物型ロドプシン」と極めてよく似た7回膜貫通型構造を持ち、さらに同じビタミンAの誘導体であるレチナールを発色団としてタンパク質内部に結合している。しかしその機能は視覚受容体である動物型のものとは大きく異なり、光のエネルギーを使ってイオンを細胞内外へ輸送する光駆動型イオンポンプや、電気化学勾配に沿って双方向にイオンを輸送する光ゲート式イオンチャネル、走光性センサーなど非常にバラエティに富んでいる。
その中で我々は近年東京湾に棲息する海洋性細菌から、光を使って細胞内から細胞外へNa+イオンを輸送する全く新しいタイプのロドプシン(KR2)を発見した。さらに分光学的な研究や、X線結晶構造解析により、このロドプシンのイオン輸送メカニズムは既存のロドプシンの物とは大きく異なり、それをもとにすることで、K+やCs+などを輸送可能な分子の構築にも成功した。またKR2を神経細胞に導入し、光を照射することで神経活動を非常に効率的に抑制できることが示された。これらの結果からKR2は今後生物の神経系を光で操作するオプトジェネティクスへの応用が期待される。またさらに最近では別の深海性の細菌から内向きにH+を輸送するロドプシン(PoXeR)が存在することを明らかにしており、講演ではこれら新規分子を含めた微生物型ロドプシンの基礎研究から最新トピックス、さらにはオプトジェネティクスへのその応用について幅広く紹介する。
【定員】
40名