イブニングセミナー(第202回) 海洋石油ガス開発の技術者像
【開催日】
2016年12月21日(水)18.00~20.00
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【講演テーマおよび講師】
陸と海から採取された石油ガスが現代社会を動かしていることは良く知られていても,如何にして需要先に移送するかは興味深いことである.海に関わるようになって半世紀,そのうち海洋石油開発に約30年携わってきた講師に,浮体式海洋石油生産貯蔵設備(FPSO)の設計,調達,建造,据付(EPCI)並びにその操業と保守(O&M)についてコア技術は何か,O&Mはどんなことをしているのか等を語っていただく.
海洋石油生産と掘削は不離一体である.FPSOは比較的新しい設備で従来のジャケットに比べ,経済的に早期生産が可能である.その為には種々のブレークスルーと安全性の追求が不可避である.
石油の大まかな所在は人工衛星から探せるようになったとはいえ,実際の存在を確認するためには,海底まで手を伸ばさなければならない.5 inch程度の太い掘削パイプも数㎞先の海底まで延ばせば,あたかも糸のように細く,支え無しで海中の流れの中にあり,さらにリグが海上の1点に留まろうとし続けるには,いろいろの技術が必要である。さりとて各専門技術者が大挙して船に乗り込むわけにもいかず,スペシャリストでジェネラリストという万能技術者が必要とされる.
陸の孤島ならぬ海洋では,技術は共通でも,環境も言語も生活様式も考え方も異なる集団生活になる.技術者の仲間には,風で船がどちらに向いても,祈りのために常にジャイロコンパスが示すメッカの方向が大切な人々もいる.長期間の洋上勤務の間の休暇で陸に上がるには,実際に空を飛んでいかなければ,陸に着く前に休暇がなくなる.
まさに,様々な能力を要求される現代技術者の生きざまを,石油開発の凝縮版として語っていただく.Y.K.
講師 田中省三(伊藤忠石油開発(株)技術本部生産開発部技術アドバイザー)
<懇親会>
明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3,000円程度
次回予定:
第203回 2017年1月25日(水)「港区長(日本初技術士区長)を体験しての気づき」原田敬美