日本機械学会関西支部 ステップアップ・セミナー2016 計算機の大規模化と数値計算法
(協賛)
日本ガスタービン学会,可視化情報学会,計測自動制御学会関西支部,精密工学会関西支部,システム制御情報学会,日本金属学会関西支部,日本計算工学会,日本材料学会関西支部,日本流体力学会,日本塑性加工学会関西支部,日本マリンエンジニアリング学会,化学工学会関西支部,日本化学会,日本伝熱学会,日本航空宇宙学会関西支部,溶接学会関西支部,日本船舶海洋工学会関西支部,日本冷凍空調学会,日本燃焼学会,日本鉄鋼協会関西支部,自動車技術会関西支部,ターボ機械協会,日本バーナ研究会,滋賀経済産業協会,京都工業会,奈良経済産業協会,兵庫工業会,大阪科学技術センター,日本技術士会近畿本部
【日時】
2016年11月8日(火) 9:00~17:00
【趣旨】
昨今の計算機の進歩・高性能化に伴い,今まで評価することのできなかった複数の要因が連成して生ずる複雑な現象についても計算機が利用されるようになってきています.とくに2011年に世界1位の性能を有する「京」コンピュータの登場により,“ものづくり”の分野では,従来,実施が困難だった大規模実験を高精度のシミュレーションで評価できるようになりました.このため,複雑な現象の解明に向けて大きな進展があり,新しいデバイスの構造面・機能面におけるアイディアの発掘など,我が国の産業イノベーションの創出につながっています.
現在,ポスト「京」の開発が始まっており,さらなる計算機の高性能化が計画されています.これらは,ライフサイエンス,防災,環境,エネルギー,ものづくり,基礎物理分野など,将来的には地球規模の様々な課題を解決できるツールとして活用され,新たなイノベーションの創出されることが期待されています.
本セミナーでは以上のような観点から,種々の技術分野におけるシミュレーションの可能性,スーパーコンピューターの活用によるイノベーション実現の事例を紹介します.技術マネジャー,中堅・若手技術者などの方々はもとより,学生や教員の皆様にも有益な内容となっていますので,多数ご参加くださいますようお願いします.
【キーワード】
数値解析,イノベーション,価値創造
【プログラム】
9:00~9:10 開会挨拶
日本機械学会関西支部 支部長 北村 隆行
9:10~10:20 マルチスケール・マルチフィジクスシミュレーションと実験系の融合
単一現象を扱ってきた数値解析は複数の物理・化学を同時に解くマルチフィジクス解析へ進展してきた.今,もの作りの現場ではモデルベースデザインへと変化している.また,数値解析と実験から大量のデータが出てくることから,今後はビッグデータ処理のために人工知能の利用が重要かと考えられるが,実験と計算機シミュレーションを如何に近づけ融合させるかが重要な課題である.そのような活動を紹介する.
京都大学 大学院工学研究科 教授
小寺 秀俊
10:30~11:40 京からポスト京へ 超並列流体解析が拓く次世代の空力シミュレーション
「ものづくり」の設計開発プロセスでCFDが活用され始めてから,既に20年近くが経とうとしている.この間,ハイエンドスパコンの性能は十年に一千倍という驚異的スピードで速度向上を達成し,かつては夢のようなシミュレーションが現実となっている.実験による性能評価から,実験を超えたシミュレーションへ.本講演では,スパコン「京」で開発した大規模流体シミュレーションシステムを用いて達成した次世代のCFDを,ゴルフボール,自動車空力,高層建物風圧予測を例として紹介する.さらにこれらの成果を受けて,ポスト京コンピュータで予定している次世代の空力シミュレーションについても述べる.
神戸大学 システム情報学研究科 教授
国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究機構 複雑現象統一的解法研究チーム チームリーダー
坪倉 誠
12:40~13:50 ポスト京級マシンを用いた設計のオープンイノベーション
最新のスーパーコンピューターの動向は,消費電力の制限のためにマルチコア・メニーコアを用いた超並列へと向かっている.このようなアーキテクチャでは,演算性能に比べてデータ転送性能が著しく低い(低B/F)ことが,プログラムの計算性能を引き出す上で大きな障壁となっている.本講演では,低B/F向けのアルゴリズムや,超並列環境で多数の演算ノードを有効に利用できる計算法を始め,スパコンを産業応用に適用し意思決定の道具とするためのアプローチなど,最先端のスパコンを設計活用する上で考慮すべき点について話題を提供する.九州大学 情報基盤研究開発センター 教授
国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究機構 可視化技術研究チーム チームリーダー
小野 謙二
14:00~15:10 短パルスレーザー照射によるナノスケールダイナミクスの数値計算
ミクロ空間を記述する量子力学の基本方程式であるシュレディンガーの波動方程式も古典的なニュートン方程式や流れの連続の方程式と対応関係にある.ただし,流体力学において一つの対象物を流体として扱うのに対し,量子力学では対象物は多数の電子の波動関数となり,しかもこれら波動関数は複素数であるという特徴を持っている.本講演では,電子の複雑な相互作用を近似する密度汎関数理論を電子のダイナミクスの記述に拡張した時間依存密度汎関数理論を利用した第一原理計算を用いて,高強度で短パルスレーザーを物質に照射した後のサブピコ秒のダイナミクスをシミュレーションする事例を紹介したい.このようなシミュレーションで,フェムト秒レーザーを用いた物質の加工原理の解明や加工方法を設計することを将来の目標としている.また,技術的な数値計算方法にも時間があれば触れたい.
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター
宮本 良之
15:20~16:30 理想化陽解法FEMによる実用構造物の溶接変形・残留応力解析
溶接構造物の製造時においては,工作精度の向上,最適施工条件の選定等を目的として,FEM熱弾塑性解析を用いた溶接変形予測が行われるようになってきた.この手法を活用することで,製造コストの削減や製造工程の短縮にも繋がると予想される.しかしながら,FEM熱弾塑性解析では,溶接熱源の移動を逐次解析する必要があり,膨大な計算時間がかかる点に問題を抱えている.そこで,大阪府立大学では,大規模問題を高速に解析することができる「理想化陽解法FEM」を開発した.本手法の開発により,市販FEMソフトでは解析不可能な大規模溶接変形・残留応力解析を可能にした.本講演では,「理想化陽解法FEM」の基本原理について紹介すると共に,自動車分野,重工分野,造船分野等の各産業分野における溶接組立問題に対する「理想化陽解法FEM」の適用事例について紹介すると共に,本手法の活用方法についても述べる.
大阪府立大学 大学院工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 海洋システム工学分野
柴原 正和
16:30~16:50 全体質疑
司会 関西支部第5専門部会 部会長 滝谷 俊夫
16:50~17:00 閉会挨拶
日本機械学会関西支部 副支部長 徳永 節男
【定員】
100名
【その他】
(1)申込み受付後,聴講券をお送りしますので必ずご持参ください.
(2)受講をキャンセルされる場合は2日前までにご連絡願います.2日前までにご連絡のない場合は聴講料をお支払いいただきます.
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