イブニングセミナー(第199回) 第4のゼロは究極のプラスチック成型技術
【開催日】
2016年9月28日(水)18.00~20.00
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【講演テーマおよび講師】
大量生産大量消費の20世紀は,塩化ビニルに代表される金属の代用品としての安物のプラスチックの時代でもあった.錆びないのは勿論のこと鉄より強いナイロンから始まったプラスチック繊維は,カーボン繊維に匹敵するアラミド繊維や光ファイバーなどの高付加価値の機能性プラスチックの時代へ移っていった.
プラスチックは,複雑な形状を,一瞬のうちに非常に正確に,作ることが出来るので,成型加工時間から見た場合,「加工費がゼロ」に近い,材料費は金属に比べて安くなくても,金属の加工費を1秒あたり1円とすれば,3時間の加工で10,000円かかる.金属に比べてそれ程安くない材料でも100円ショップ製品が可能な秘密がここにある.
21世紀の3Dプリンターは「加工機械がゼロ」のプラスチック製品製造機である.コンピュータと光硬化性樹脂を用いたラピッドプロトタイプの変形に,粉体と接着剤を用いたものがあったが,ノズルの先端から溶融樹脂を出せばCAD設計通りの形が作れる.
更なるゼロは,「廃材・廃棄物ゼロ」である.金属加工では金属くずが出るし,射出成型では溶融した樹脂のゲートから出るまでの部分の全てが廃棄物である.
1987年のユニット金型から,毎年プラスチック成型技術に新しい風を送り続けて,基本技術が70件を超えるようになると,通常の長さ数m,重量数トンの射出成形機が机の上に乗るようにまでなり,第4のゼロである「工場ゼロ」を実現した.
これにより,医療用のステントやピンチなどの部品も金属を全く使わない,MRI検査にも対応可能な全プラスチック化が可能となるなどの新しいプラスチック技術の道が実現する.
プラスチックの射出成形機をコンパクトにする技術だけに拘ってきた中小企業の開発者であり社長である講師に,人にできない夢を実現する苦しみと楽しみとを語っていただく.
講師 竹内 宏((株)新興セルビック 代表取締役)
<懇親会>
明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3 000円程度
次回予定:
第200回 2016年10月26日(水)18.00~20.00「日本文明と地形の謎」竹村公太郎