イブニングセミナー(第196回)国際規格「ガイド50」子どもの安全の指針「子どもは小さな大人ではない」
趣 旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
実際の子どもは4頭身か5頭身でも,ドラえもんは2頭身,のび太は3頭身ぐらいが子どもらしい。さらに,身体的な特徴以上に,子どもの行動は大人と異なり専門家でも予想がつかないものが多い。しかしながら,実社会においては子どもについて深く考えることなく,「子どもは小さな大人」と大人の行動パターンを当て嵌めて単純に類推してしまう。
それに対してISO国際規格では,子どもとは何かについて論議し,その途中経過の意見をガイド50として公表しながらにまとめてきた。いままで日本では,子どもについて真剣に考えられることは少なく,公園の遊具で事故が起きれば,真の原因を追究するよりも犯人とされた遊具は撤去された。家庭内で事故が起きれば,母親の注意が足りなかったからと決めつけられてしまい,場合によっては子どもを亡くした被害者が犯人扱いされてしまう。
カーテンの紐のような大人が使って問題ないものでも,子どもは大人とは別な使い方をして事故になることがある。日常に使用する製品による事故を再び起こさないために,製品のメーカに改良を求めることも必要だが,大人の眼で見ていては実際に事故が起きるまで何が問題かに気が付かない場合が多い。子どもがボタン電池を飲み込むことで,体内の電解液(塩分を含む体液)で通電された皮膚が炎症を起こすことまで考えが及ばない。遊具のボルトが抜けていても大人は何もしないが,子どもは興味をもって小さな指を入れる。
遊具のようなものは,製造元が小規模な企業であったり,輸入製品であることも多く,関連工業会も小さく,技術的な対応が取れないこともある。そこに問題を解決できる技術者がいなければ,日本機械学会や日本術士会の技術者がボランティアで協力できる場でもある。
日頃から子どもと真っ直ぐに向き合っている講師に,ISO Guide 50がJISになるのを機会に,子どもとは何か,子どもの興味の対象,行動パターンに対する技術者としての考え方をうかがう。
講師 小田部 譲(日本技術士会/子どもの安全研究グループ幹事)
次回予定:2016年7月25日(水)18.00~20.00