日本機械学会連続講座「法と経済で読み解く技術のリスクと安全~社会はあなたの新技術を受け入れるか~」第3期・第1回 講演: 過失処罰で事故は少なくなるのか
【開催日】
2015年5月15日(金)17.30~19.30
【第3期・第1回 講師】
近藤 惠嗣(福田・近藤法律事務所 弁護士)
【第3期・第1回講演趣旨】
刑法には業務上の注意義務を怠って人を死傷させた者を業務上過失致死傷罪で処罰することが定められている.2006年に起きたエレベータによる死亡事故でも,製造元の課長等が起訴され,9月29日に判決の言渡が予定されている.過失処罰に関しては,事故抑止効果が不明であることや原因調査の障害になるという観点から反対意見も多い.しかし,事故の被害者の慰謝や軽率な行為の抑止のためには必要だという意見もある.今回の講義では,過失に関する刑法の基礎理論を整理して解説することにより,議論の共通基盤を提供する.
【本連続講座の開催主旨】
福島第一原子力発電所の事故は技術の安全性に対する人々の信頼を失わせた.しかし,技術なしに現代社会は成り立たない.また,介護ロボットのような新技術は私たちの生活の質を向上させることが期待される.一方で,技術にはリスクがつきまとう.介護ロボットの誤作動で被介護者が死傷することもあり得る.社会に利益をもたらすとともに,リスクを内包する技術はどのような条件の下で社会に受け入れられるのだろうか.リスクが現実化したとき,技術者の責任は問われるのだろうか.今,新技術の開発に従事する技術者の胸に去来するこのような疑問に,現在の法制度のみならず,法と経済学,正義論なども視野に入れて,体系的に答えようという野心的な試みからこの講座は生まれた.技術のリスクと安全に関心のあるすべての技術者に是非聴講していただきたい.